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商標法46条-50条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

商標法46条(商標登録の無効の審判)

第一項

 商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品又は指定役務が二以上のものについては、指定商品又は指定役務ごとに請求することができる。

 ・指定商品又は役務の一部が他の商標権と抵触する場合等に商標登録全体を無効にするのは酷であるため、一部無効が認められる。
 ・商7条違反は、直接は拒絶、異議、無効理由とならず、商3条1項柱書に反するとして扱われる。
 ・商8条1項は拒絶理由ではないが、異議、無効理由となる。なお、商4条1項11号では、後願先登録商標を無効とすることができない。
 ・商6条1項,2項は拒絶理由であるが、異議、無効理由とはならない。
 ・出願により生じた権利を承継しない者による登録は、無効理由であるが、拒絶、異議理由ではない。なお、商標は選択物であるので、冒認出願・共同出願違反は存在しない。
 ・補正要件の違反は無効理由ではない。また、訂正要件違反はない。
 ・商5条の規定に反する場合でも、無効、異議、拒絶理由とはならない。
 ・更新登録を無効にはできない。後発無効となる。
 ・無効審判を請求する請求人適格は利害関係人に限られる。審判の準司法的性格や、立法の趣旨からみて、民事訴訟法と同じく「利益なければ訴権なし」の原則が適用されると解されるからである。


第一号

 その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条 の規定に違反してされたとき。

 ・本号は異議申立理由と同じである。

第二号

 その商標登録が条約に違反してされたとき。

第三号

 その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。

 ・審査段階では問題とならないため拒絶理由とはならない。
 ・無効理由に該当するか否かは、本条4号,5号を除き登録時に無効理由があったか否かによる。
 ・請求人適格は利害関係人に限られるので、商4条1項1〜3号,5号の場合は外国大使館や国際機関等、商4条1項7号(公序良俗)の場合は市民団体等、商4条1項16号の場合は同業者等が考えられる。


第四号

 商標登録がされた後において、その商標権者が第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条 の規定により商標権を享有することができない者になつたとき、又はその商標登録が条約に違反することとなつたとき。

 ・登録後の話であるので、当然拒絶理由とはならない。

第五号

 商標登録がされた後において、その登録商標が第四条第一項第一号から第三号まで、第五号、第七号又は第十六号に掲げる商標に該当するものとなつているとき。

 ・「なっているとき」であるので、過去に該当するだけでなく無効審判請求時にも継続して無効理由に該当することが必要となる。
 ・外国又は国際機関関係と、公序良俗、誤認防止が後発無効理由となる。
 ・商4条1項4号、6号、9号、17号は後発無効理由とならない。


第六号

 地域団体商標の商標登録がされた後において、その商標権者が組合等に該当しなくなつたとき、又はその登録商標が商標権者若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの若しくは第七条の二第一項各号に該当するものでなくなつているとき。

 ・商標法特有の規定である。

第二項

 前項の審判は、商標権の消滅後においても、請求することができる。

第三項

 審判長は、第一項の審判の請求があつたときは、その旨を当該商標権についての専用使用権者その他その商標登録に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。

商標法46条の2

第一項

 商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、商標権は、初めから存在しなかつたものとみなす。ただし、商標登録が前条第一項第四号から第六号までに該当する場合において、その商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その商標登録が同項第四号から第六号までに該当するに至つた時から存在しなかつたものとみなす。

 ・後発無効の場合であっても、商標自体に瑕疵があるのであるから国による損失補償の対象とはならないと解される。

第二項

 前項ただし書の場合において、商標登録が前条第一項第四号から第六号までに該当するに至つた時を特定できないときは、商標権は、その商標登録を無効にすべき旨の審判の請求の登録の日から存在しなかつたものとみなす。

 ・公序良俗に違反することになった場合や、品質の誤認を生ずるようになった場合等、どの時点から該当したかの特定が困難な場合である。
 ・登録の日とは。予告登録の日である。
 ・無効の効果を遡及させる時点について争うことでいたずらに審理が遅延することを防止するためである。
 ・商標法特有の規定である。


商標法47条

第一項

 商標登録が第三条、第四条第一項第八号若しくは第十一号から第十四号まで若しくは第八条第一項、第二項若しくは第五項の規定に違反してされたとき、商標登録が第四条第一項第十号若しくは第十七号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第四条第一項第十五号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第四十六条第一項第三号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から五年を経過した後は、請求することができない。

 ・過誤登録されたときでも、一定期間が経過したときは、その既存の法律状態を尊重し維持するために瑕疵が治癒したものとして、所定の理由の無効審判請求を認めない規定である。
 ・商4条1項10号は類似の商標に適用されるため、競争関係が存在する場合での問題として「不正競争の目的」で足りるが、商4条1項15号は非類似の商標にも適用されるので、競争関係が存在しない場合も含めるように「不正の目的」とした。
 ・商4条1項1号-7号、同9号、同16号、同18号、同19号は除斥理由に該当しない。
 ・商4条1項15号違反が除斥期間を尊守しているか否かは、審判請求書に当該商標登録が同号に違反する旨の記載があることをもって足りる。
 ・国による損失補償の対象とはならない。


第二項

 商標登録が第七条の二第一項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかつた場合に限る。)であつて、商標権の設定の登録の日から五年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第四十六条第一項の審判は、請求することができない。

 ・単に5年を経過したのみではなく、設定登録日から5年経過し、無効審判請求時に商標が周知となっている場合に制限される。

商標法48条(削除)


商標法49条(削除)


商標法50条(商標登録の取消しの審判)

第一項

 継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。

 ・一定期間使用をしない場合は、信用が発生しないか発生した信用も消滅すると考えられ、そのような登録商標に対して独占排他権を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、商標の選択の余地を狭めることとなるからである。
 ・過去の3年以上の不使用に対しては請求できず、請求時に使用していれば取消を免れる。なお、3年間に一度でも使用していれば取消しの対象とならない。また、外国での使用事実では不使用による取消しを免れない。
 ・類似範囲(禁止権の範囲)の使用では、取消を免れない。ただし、社会通念上同一の商標は使用と認められる。
 ・指定商標等が二以上の場合、一部の指定商品等についても請求できる。しかし、無効審判とは異なり審判の請求は個々の指定商品ごとに請求があると解されるものではないので一部のみの請求取下はできない。使用事実の立証責任が商標権者に転換されたことに伴い、商標権者の負担を軽減するためである。
 ・社会通念上同一と認識される商標を含むのは、その内容の過剰な防衛的出願を抑制しひいては早期権利付与を確保するためである。また、適宜の変更を加えて使用するのが通常である産業界の実情にも合致する。なお、社会通念とは、社会一般に通用する常識をいう。
 ・「何人も」とあるが、被請求人を害することを目的する審判請求の場合には、権利濫用として認められない可能性がある。
 ・同一の呼称及び観念を生ずるとは、商標の「呼び名」及び「意味・内容」のいずれもがおなじ商標を指す。なお、特定の観念が失われ別異な観念が生ずるときは、社会通念上同一とは認められない。
 ・審判請求登録日にまで遡及して消滅する。
 ・「登録商標」には、いわゆる色違い類似商標が含まれる。
 ・審判の請求が被請求人を害することを目的とする場合には権利濫用として請求が認められない場合がある。
 ・商標権が放棄された場合であっても、不使用取消審判は却下されない。
 ・平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を変更することにより、複数の意味を持つ語となった場合は同一の観念を生じさせるものには該当しない。つまり、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつても、取消される場合がある。
 ・前権利者の不使用期間について、商50条は商標権者等を主語として不使用の要件を定めており、現在の商標権者等を指すとして、譲渡人の不使用期間は算入されないとする見解もある。しかし、貯蔵商標の目的で使用意思のない商標を登録した者が、3年未満の期間毎に名義変更を行うことで、永久に不使用取消を免れ得るとすると立法趣旨に反する。そこで、本条は、特83条と同様に、登録商標の不使用要件を定めた規定であるとして、譲渡人の不使用期間も算入されると解する。但し、譲受後、準備完了次第使用する目的を有する場合等は、正当な理由があるとして、本条2項但書を弾力的に運用すべきである。
 ・社会通念上同一である商標の例:
 @書体、漢字の正字(旧字)と略字、ローマ字の大文字と小文字、平仮名と片仮名、平仮名及び片仮名とローマ字による書体の相互間の使用、A外観において同視される図形の使用、B称呼及び観念を同一とする場合の平仮名及び片仮名と漢字の相互間の使用(例えば、はつはると初春)、C登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用(例えば、太陽とSUNの2段併記の商標の一方を使用する場合)、D縦書きによる表示態様とこれに対応すると認められる左横書き又は右横書き(ローマ字にあっては、右横書きを除く)による表示態様の相互間の使用
 ・社会通念上同一の商標でない商標の例:
 @外来語等で相互に変更することにより、特定の観念が失われ別異な観念が生ずるとき(例えば、チョコとちょこ[猪口]、カム[機械装置の一種]とかむ[噛む])、A同一の称呼を生ずる場合があって、平仮名及び片仮名とローマ字のいずれかに別異の観念が含まれるとき(例えば、ピース(ぴーす[平和、小片] 、ホール(ほーる[公会堂、穴]、ライト(らいと[光、右、書く] )、B同一の称呼を生ずる場合があって、平仮名及び片仮名と漢字のいずれかに別異の観念が含まれるとき(例えば、ききょう(桔梗、帰郷)、さいてん(祭典、採点)、ようせい(妖精、養成、要請)、C漢字とローマ字で称呼が相違するとき(例えば、虹とrainbow、休日とholiday、音楽とmusic)、D一定の観念を生ずる文字と当該観念を表すものと認められる図形のとき(例えば、蛙の文字と蛙の図形)、Eともに一定の概念(例えば、パンダ)を生ずるものと認められるとしても、該図形の形態が顕著に異なるため社会通念上同一の商標と認められないとき


第二項

 前項の審判の請求があつた場合においては、その審判の請求の登録前三年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標 の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。ただし、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。

 ・商標権者が登録商標の使用を証明することを要する。使用の証明の方が容易だからである。尚、使用事実の立証は、請求にかかる指定商品等のいずれかについてすればよい。不使用についての正当な理由についても同様である。
 ・正当な理由とは、天災地変によって工場等が損壊したような場合、時限立法により使用が禁止された場合等(青本)、商標権者の責めに帰すことができないやむを得ない事情があり、不使用を理由に取消すことが社会通念上酷であるような場合をいう。
 ・商標権者、専用使用権者、通常使用権者、団体構成員のいずれか一人でも使用していれば取消しを免れる。いずれかの者が使用していれば、業務上の信用が化体するからである。但し、いわゆる先使用権者等のみの使用をもって、取消しを免れることはできない。なお、通常使用権者は未登録でも良い。
 ・取消審判において使用事実を立証しなかった場合でも、取消審決取消訴訟において使用事実を立証することは許される。商標権者が審決時に使用事実を証明することが取消を免れるための要件ではないからである。審判では商標権者の不使用を立証命題としているので、審判段階で未提出の使用事実を立証する証拠を審決取消訴訟で提出することは、なんら制限がない。
 ・不使用取消審判においては被請求人に挙証責任があり、いずれかの指定商品役務の使用を証明すれば良いため、指定商品役務の範囲の減縮は請求の要旨を変更するものであり許されない。それを明確にするため、取消審判では特155条3項を準用していない。従って、取消審判においては指定商品毎に請求を取り下げることはできない。


第三項

 第一項の審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をした場合であつて、その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知つた後であることを請求人が証明したときは、その登録商標の使用は第一項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする。ただし、その登録商標の使用をしたことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。

 ・いわゆる「駆け込み使用」が使用と認められない旨を規定している。
 ・正当な理由には、審判請求がされることを知る前から具体的な使用計画や準備(商標を商品に付する契約を第三者と締結している場合、商標を付した商品の広告を作成していたり、その作成を第三者に依頼していた場合、商標を商品に付して使用する意思決定(例えば取締役会の決議等)が明確になされている場合等)があり、これに基づいて使用をしたものである場合や、審判請求がされることを知る前(譲渡交渉等の前)から継続して使用している場合等が考えられる。
 ・「審判の請求がされることを知つた」とは、譲渡交渉やライセンス交渉の際に、「交渉不成立のときは不使用取消審判の請求をする」旨の意思表示を示された場合等をいう。



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