弁理士試験の短答試験及び論文試験の免除

短答試験の免除について

 弁理士試験の免除制度が平成20年度から大きく変わります。なお、制度改正自体は平成20年度からですが、実際にその恩恵を受けることができるのは平成21年度からになります。

 今までは、口述試験合格者のみが、次年度の短答及び論文試験を免除されていました(平成20年度で廃止)。しかし、平成20年度からは、短答試験合格者であれば、その後2年間短答試験が免除されることになります。例えば、平成20年度に短答試験に合格した人は 、平成21−22年度の短答試験が免除されます。但し、平成20年度の短答試験合格者から適用されますので、実際に免除を受けることができるのは、平成21年度からになります。

 また、工業所有権に関する大学院の修了者であって、工業所有権に関する所定の科目の単位を修得した者(平成20年1月以降の進学者)は、修了の日から二年間、工業所有権に関する法令、工業所有権に関する条約の試験科目が免除されます。詳しくは後述しますが、正確な情報は特許庁HPの「弁理士試験の短答式筆記試験一部科目免除について」で確認してください。

論文試験の免除について

 論文試験についても、今までは、口述試験合格者のみが、次年度の論文試験を免除されていました(平成20年度で廃止)。しかし、平成20年度からは、論文試験の必須科目(特実意商)全てについて合格点を獲得した人であれば、その後2年間論文試験が免除されることになります。例えば、平成20年度に論文試験の必須科目全てについて合格点を獲得した人は、平成21−22年度の必須科目の論文試験が免除されます。

 但し、必須科目の免除を受けるためには、特許及び実用新案、意匠、商標の全ての科目で、合格点を獲得する必要があります。つまり、一科目のみ合格点を獲得したとしても、その科目が免除されることはありません。

 なお、選択科目については、平成20年度からは、論文試験の選択科目の合格点を獲得した人であれば、その後の選択科目の論文試験が免除されます。例えば、平成20年度に論文試験の選択科目の合格点を獲得した人は、平成21年度以降は、選択科目の論文試験が免除されます。

選択科目の免除について

 前述のように、論文試験の選択科目の合格点を獲得した人であれば、その後の選択科目の論文試験が免除されます。また、一定の有資格者には論文式筆記試験の選択科目の受験の免除が認められます。

 選択科目の免除対象資格は、修士・博士の学位取得者(要事前審査)、技術士(特定部門)、一級建築士、電気主任技術者(第一種・第二種)、薬剤師、情報処理技術者(特定区分)、電気通信主任技術者、司法試験合格者、司法書士、行政書士です。詳しくは特許庁HPの「弁理士試験の科目免除について」をご参照下さい。

選択科目免除を受けるには

 有資格者の場合、試験願書提出時に工業所有権審議会が指定する証明書を添付することにより選択科目免除が認められます。なお、行政書士、司法書士は登録が必要です。

 また、修士・博士の学位取得者の場合、修士・博士というだけではなく、工業所有権審議会での審査によって免除科目の認定を受ける必要があります。そのため、試験前に選択科目免除資格認定申請が必要となります。なお、一度、認定通知を受ければ、翌年以降も免除資格を有することとなり、改めて認定をする必要はありません。

※「選択科目免除資格認定申請」とは?
 「選択科目免除資格認定申請」は、免除対象資格のうち、「『選択科目』に関する研究により修士、博士又は専門職の学位を有する方」に該当する場合に必要となります。これら者が備えている知識及び応用能力が、いずれの選択科目に該当し、当該選択科目を免除することが可能かどうかについて、提出された書類を基に工業所有権審議会が審査します。
 なお、申請は、通年できますが、免除を受けようとする年度の弁理士試験願書受付1ヶ月前までに申請書を提出する必要があります。また、大学院未修でも手続できますが、申請する際に、大学院修了証明書に代えて大学院修了見込み証明書の添付が必要になります。
 ちなみに、不認定通知を受けた場合であっても、再度申請することができます。


免除狙いについて

短答試験の免除

 工業所有権科目の単位修了者当に対する免除制度について、所定の単位を取得し大学院を修了した場合、最大で短答試験の50問が、最長で2年間免除されます。つまり、著作権及び不正競争防止法の10問について、6〜7問正解することで短答試験に合格できます。ここで、注意が必要なのは、この免除を受けるには大学院を修了する必要がある点です(但し、大学院在学中の者であっても、受験を希望する年度の前年度3月末までに大学院を修了する見込みの者は免除を受けられます。)。また、詳細は上述の特許庁HPで確認して欲しいのですが、事前に免除資格認定の申請を行い審査を通る必要があることにも注意が必要です。

 この制度を利用して免除を狙うとすると、狙い目なのが1年制の社会人大学院です。その専攻で、修士・博士に基づく科目免除(論文試験選択科目の免除)を狙うことができると共に、短答試験の一部免除も狙うことができるからです。例えば、平成20年1月以降に1年制の社会人大学院に入学し、工業所有権科目の所定の単位を取得して1年後に修了すれば、上記の短答式試験の一部免除者に該当して短答試験一部(最大で50問)が免除されます。さらに、所定の修士論文を提出して修了すれば、修士・博士に基づく科目免除も受けることができ、たった一年で、ほとんどの科目免除を達成できます。ちなみに、ある1年制社会人大学院の入学資格は、「大卒又は卒業見込みであり、2年以上の企業又は官公庁等における在職経験を有する見込みの者」で、入学試験料、入学金、授業料込みで約240万です。

 私自身が短答論文試験を通して免除無しで合格しているので、個人的には弁理士試験を骨抜きにする制度だと感じるのですが、制度が成立した以上は皆様に有効にご活用頂きたいと思います。でも、爆発的に弁理士が増えるなら(合格率が15%を超える等)、弁理士資格自体が低価値化してしまいますから、そうなったら弁理士は目指すに足る資格ではなくなると思います。

行政書士について

 選択科目免除を狙って行政書士等の取得を目指す方もいらっしゃいますが、個人的にはお勧めしませんし、上述の修士・博士に基づく科目免除を狙った方が有利です。特に、行政書士の場合、登録手数料:2万5千円、入会金:20万円、本会会費3ヶ月分:1万8千円、政治連盟会費3ヶ月分:3千円、計:24万6千円のほか、登録免除税として3万円が必要となります(東京行政書士会の場合) 。金銭的負担と勉強の労力を考えるならば、選択科目の勉強をした方が良いと思います。


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