よろしければ、ご意見、ご質問等をこちらへお寄せ下さい
独学の弁理士講座掲示板

メールはこちら



当サイトは
 リンクフリーです。

All Rights Reserved.




商標法31条-32条の2

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

商標法31条(通常使用権)

第一項

 商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権については、この限りでない。

 ・商4条2項に該当する場合は、専用使用権及び通常使用権を設定できない。
 ・団体商標に係る商標権については、通常使用権の許諾をすることができる。
 ・地域団体商標について通常使用権の許諾は可能であるが、専用使用権の設定はできない。通常使用権は使用する権利を専有するものではなく、専用使用権が設定された場合のように制度趣旨が没却されるものではないからである。また、生産を行う事業者の団体が販売を団体構成員以外の者に扱わせる等の必要性が想定されるからである。
 ・商標法に裁定通常実施権に対応する規定はない。出所の混同を防止するという観点から、商標権者の意思によらず通常使用権を設定するという裁定制度は、採用し得ないからである。


第二項

 通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有する。

第三項

 通常使用権は、商標権者(専用使用権についての通常使用権にあつては、商標権者及び専用使用権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

 ・実施の事業とともにする場合であっても、承諾を得ずに移転できない。既存設備の荒廃の防止ということが考えられないからである。

第四項

 通常使用権は、その登録をしたときは、その商標権若しくは専用使用権又はその商標権についての専用使用権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる。

第五項

 通常使用権の移転、変更、消滅又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。

第六項

 特許法第七十三条第一項 (共有)、第九十四条第二項(質権の設定)及び第九十七条第三項(放棄)の規定は、通常使用権に準用する。

商標法31条の2(団体構成員等の権利)

第一項

 団体商標に係る商標権を有する第七条第一項に規定する法人の構成員(以下「団体構成員」という。)又は地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。ただし、その商標権(団体商標に係る商標権に限る。)について専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

 ・「当該法人又は当該組合等の定めるところにより」とあるので、例えば、特定の品質基準等に合致する商品役務のみに表示を認めるような団体商標について、その使用をする権利を認めないことができる。
 ・構成員以外の使用を排除すること、つまり禁止権を行使することまでもを認めたわけではない。
 ・構成員であっても、専用使用権が設定された場合は使用できなくなる。なお、地域団体商標に係る商標権については、専用使用権の設定が認められないため除かれている。
 ・団体商標にかかる商標権であっても、専用使用権、通常使用権を設定できる。


第二項

 前項本文の権利は、移転することができない。

 ・一般承継の場合であっても移転できない。団体構成員の商標の使用をする権利は、構成員の身分と切り離すことができないからである。

第三項

 団体構成員又は地域団体構成員は、第二十四条の四、第二十九条、第五十条、第五十二条の二、第五十三条及び第七十三条の規定の適用については、通常使用権者とみなす。

 ・共有や質権設定の規定等は準用されていない。団体構成員たる地位と不可分に連動する点において、通常使用権とは異なるからである。

第四項

 団体商標又は地域団体商標に係る登録商標についての第三十三条第一項第三号の規定の適用については、同号中「又はその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者」とあるのは、「若しくはその商標権若しくは専用使用権についての第三十一条第四項の効力を有する通常使用権を有する者又はその商標の使用をする権利を有する団体構成員若しくは地域団体構成員」とする。

 ・団体商標又は地域団体商標の構成員の使用であっても、中用権が発生する。

商標法32条(先使用による商標の使用をする権利)

第一項

 他人の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた結果、その商標登録出願の際(第九条の四の規定により、又は第十七条の二第一項若しくは第五十五条の二第三項(第六十条の二第二項において準用する場合を含む。)において準用する意匠法第十七条の三第一項 の規定により、その商標登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの商標登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。

 ・未登録周知商標の保護規定であり、未登録周知商標の存在にも関らず過誤登録され、除斥期間を経過した場合にとくに意味がある。
 ・継続してとは、他人の出願の際から継続していること意味する。なお、継続使用を要件とするのは、長く使用を中断すれば保護すべき信用が減少あるいは消滅するためである。
 ・事業の承継時期は登録前でも良い。
 ・使用の業務と共にする場合に限り移転が認められ、商標権者の承諾があっても移転できない。
 ・出願時に周知である必要がある。広く認めすぎると登録主義に反することになるからである。なお、判断時は出願時であり、査定時や登録時ではない。
 ・商標の使用をする権利であり、禁止権の範囲でも使用できる点で通常使用権とは異なる。
 ・法定の使用をする権利(商31条の通常使用権ではない)のポイント:
 @先使用権:出願時に周知である必要があり、業務を承継した場合に限り移転が認められる。
 A地域団体商標に対する先使用権:周知は不要であり、業務を承継した場合に限り移転が認められる。
 B商標登録無効の際の中用権:無効審判の予告登録前に周知である必要があり、業務を承継した場合に限り移転が認められる。
 C先願抵触特許権等の期間満了後の使用権:周知は不要であり、業務を承継した場合でも移転は認められないが、実施権者にも使用権が認められる。なお、継続して実施している場合に限られない。但し、使用が不正競争の目的でされない場合に限られる。
 D再審回復後の後用権:再審の請求の登録の際に周知である必要があり、業務を承継した場合に限り移転が認められる。なお、善意に使用している必要がある。
 ・日本国内とあるので、外国における周知では認められない。但し、外国で製造している者の国内における販売代理店によって周知となっている場合、該製造者には先使用権が認められる。また、その販売代理店は、先使用権の対象となる商標権の出願の前後に関らず、製造者の先使用権を援用することができる。なお、製造販売に限らず宣伝広告により周知となっている場合も同様である。


第二項

 当該商標権者又は専用使用権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。

商標法32条の2

第一項

 他人の地域団体商標の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でなくその商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた者は、継続してその商品又は役務についてその商標の使用をする場合は、その商品又は役務についてその商標の使用をする権利を有する。当該業務を承継した者についても、同様とする。

 ・商32条では周知性が要求されるが、本条では周知性は要求されない。団体に属さない事業者の商標が周知性を獲得していないからといって先使用権を認めないとすると、当該事業者が現に当該商標を使用して業務を行っている場合に、当該商標を使用して事業活動を行うことができないこととなり、権利者と第三者の利益の衡平を失すると考えられるためである。
 ・商標の使用をする権利であり、禁止権の範囲でも使用できる点で通常使用権とは異なる。
 ・使用の業務と共にする場合に限り移転が認められ、商標権者の承諾があっても移転できない。


第二項

 当該商標権者は、前項の規定により商標の使用をする権利を有する者に対し、その者の業務に係る商品又は役務と自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。

 ・地域団体商標は専用使用権を設定できないので、専用使用権者については規定されていない。


オリジナルレジュメ

 参考書・基本書  試験対策・勉強法  改正・判例解説  短答試験  過去問  論文試験  選択科目  選択科目の免除  口述試験  転職  リンク  メールはこちら





 「独学の弁理士講座」TOPへ戻る inserted by FC2 system