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商標法26条-30条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

商標法26条(商標権の効力が及ばない範囲)

第一項

 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。

 ・本条の立法趣旨は以下の3つである。
 @過誤登録された場合には、無効審判手続きによるまでもなく他人に商標権の効力を及ぼすべきではないため(除斥期間経過後)。
 A登録商標自体は不登録理由に該当しないが、不登録理由に該当する類似部分に禁止権の効力が及ぶ場合に、当該禁止権の効力を制限するため(例えば、登録商標アスカレーターの効力は普通名称であるエスカレーターに及ばない)。
 B後発的に不登録理由に該当するものとなった場合に、一般人の使用を保証するため(例えば、登録商標と同一名称の都市ができた場合)。
 ・商標全体の構成でなく商標の一部の構成となっている場合にも、その部分に商標権の効力は及ばない。識別力のあるマーク(特にハウスマーク)に識別力のない文字等を結合させた商標は登録可能であるので、当該商標中の識別力のない部分については商標権の効力が及ばないことを確認的に規定するためである。
 ・本項の効力は普通に用いられる方法にのみ制限される。普通に用いられる方法とは、外観上の構成態様だけでなく、使用方法も普通である必要がある。審査段階で商3条1項の要件を判断する場合は、外観上の構成態様が普通に用いられる方法か否かのみを判断する。つまり、商3条は登録要件であり、審査官は商標にどのような方法で商標が使用されるかわからない。一方、商26条は、権利が発生した後において、ある具体的行為に対して商標権の効力が及ぶか否かを間題とする。当然、商標的な使い方であるか否かが間題となる。
 ・本条で定める他、使用権又は使用する権利が存在する場合、商標登録出願前の他人の特許権等に抵触する場合も、商標権の効力が制限される。


第一号

 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標

 ・不正競争目的で使用する場合は除かれる)。
 ・芸名などは著名なものに限られる。選択の自由度が高いためである。
 ・商4条1項8号に対応している。
 ・普通に用いられる方法とは、外観上の構成態様だけでなく、使用方法も商標的な使用方法であることを要する。よって、商標的でない使用方法であれば、商標権の効力が及ばない。


第二号

 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。次号において同じ。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標

 ・「形状」には立体的形状も含まれる。
 ・指定商品「梱包容器」について「巨峰」の登録商標がある場合に、梱包容器に巨峰と付す行為は梱包容器の普通名称の使用ではないので、本号には該当しない。また、商品の包装に内容物の普通名称を付すに過ぎず、包装用容器の出所を表示するものではないので、商標権の侵害とはならない。一方、指定商品「葡萄」について「巨峰」の登録商標がある場合に、葡萄梱包用資材に巨峰と付す場合は、商品「葡萄」の包装に内容物の普通名称を付すに過ぎないので、本号に該当し侵害とはならない。
 ・例えば、普通名称「エスカレーター」に類似する「アスカレーター」が登録された場合や、登録商標と同一名称の都市ができた場合などである。
 ・商品等の出所表示機能及び自他商品等識別機能を発揮しない態様で使用されている標章に対しては、商標権の禁止権の効力は及ばない(侵害とはならない)。
 ・商3条1項1号,3号に対応している。


第三号

 当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する商標

 ・「形状」には立体的形状も含まれる。
 ・役務の提供の場所は、必ずしも当該役務が当該商標の表示する場所において現実に提供されていることを要せず、需要者によって、当該指定役務が当該商標の表示する場所において提供されているであると一般に認識されることをもって足りる。
 ・商3条1項1号,3号に対応している。


第四号

 当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について慣用されている商標

 ・慣用商標は常に普通に用いられている状態にあるため、特に断りがない。
 ・商3条1項2号に対応している。


第五号

 商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標

 ・不可欠な立体的形状を含むものには、効力が及ぶ。但し、形状部分には効力が及ばない。
 ・商4条1項18号に対応している。


第二項

 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。

 ・「不正競争の目的で」とは、「他人の信用を利用して不当な利益を得る目的で」という意味である。

商標法27条(登録商標等の範囲)

第一項

 登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。

 ・登録商標の範囲は、願書に記載した商標のみに基づいて定められる。
 ・標準文字のみからなる商標の場合は、願書に直接記載した商標ではなく、標準文字で現したものに基づいて定められる。


第二項

 指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならない。

 ・指定商品又は指定役務の範囲は、願書の記載のみに基づいて定められる。

商標法28条

第一項

 商標権の効力については、特許庁に対し、判定を求めることができる。

 ・商標権の効力の範囲について、疑義のある場合のすべてについて判定を求めることができる。 なお、疑義のある場合とは、例えば、登録商標と同一又は類似の商標の範囲や、登録商標が品質・内容表示等に該当するか否かについて疑義がある場合をいう。
 ・先使用権の有無についても判定を求めることができる。また、商26条、商29条、商33条、商60条等についても判定を求めることができる。単に商標の類否や商品等の類否判断に限定すると、紛争解決に判定の実効性が上がらないからである。
 ・特許法上の判定は特許権の範囲ではなく特許発明の技術的範囲であり、意匠上の判定は登録意匠とその類似範囲である。


第二項

 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。

第三項

 特許法第七十一条第三項 及び第四項 の規定は、第一項の判定に準用する。

商標法28条の2

第一項

 特許庁長官は、裁判所から商標権の効力について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。

第二項

 特許法第七十一条の二第二項 の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。

商標法29条(他人の特許権等との関係)

第一項

 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは意匠権又はその商標登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。

 ・商品の形状に特許権等が設定されている場合に商品自体の形状を立体商標として使用する行為は、抵触に該当する。
 ・禁止権の範囲が他の商標権の禁止権の範囲と相互に抵触する場合は、双方の権利の発生の時間的先後関係を問わず、両方とも使用できない。
 ・禁止権の範囲が抵触する場合、他の権利者が商標権者に使用権の設定許諾を求めることはできない(使用しても権利行使されない旨の契約を結ぶことはできる)。
 ・禁止権の範囲とその他の権利が抵触する場合、他の権利の出願日が先の場合は商標権者の使用が制限され、逆の場合は双方とも使用が制限される。
 ・先願商標権の専用権の範囲が抵触する場合は、後願にかかる特許、実用新案又は意匠権者は実施をすることができない。著作権については著作権法に調整規定がない。なお、同日の場合は互いに専用権の範囲を使用できる。
 ・商標に利用関係はない。
 ・「その使用の態様により」とは、登録商標の使用する物品によって、又は、登録商標の物品への用い方によって、という意味である。
 ・意匠は、物品の美的外観であり、物品と一体不可分である。これに対して、商標は、物品について用いられるが単なる識別マークである。
 ・矢羽根印のグリップを有する万年筆についての先願意匠権、万年筆を指定商品とする矢羽根印のマークに商標権がある場合、商標権者が万年筆の包装や広告に矢羽根印を用いてもその使用の態様であれば問題ない。商標権者が、万年筆のクリップに用いるという使用の態様の場合は、抵触関係が生じ、その態様による使用はできない。
 ・「指定商品又は指定役務のうち抵触する部分」とは、指定商標等がいくつかあって、そのうち抵触する指定商品等という意味と、指定商標等の福が広く、そのうちの一部について抵触する場合の二つの態様がある。
 ・同一重複登録の場合は・無効・取消等がない限り両者が使用できる。ダブルパテントの場合に、後願特許権者の実施が制限されると類推適用されるのとは異なる。


商標法30条(専用使用権)

第一項

 商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができる。ただし、第四条第二項に規定する商標登録出願に係る商標権及び地域団体商標に係る商標権については、この限りでない。

 ・禁止権の範囲には、専用使用権及び通常使用権を設定できない。
 ・地域団体商標には専用使用権を設定できない。但し、通常使用権の許諾は可能である。地域における商品の生産者等の使用を確保しようとした趣旨が没却されてしまうおそれがあるためである。また、商標権の全部について専用使用権を設定した場合には、譲渡を認めたのと同じ効果を生じることとなり、譲渡を認めた場合と同様に主体要件を設けた趣旨を没却するという問題があるためである。
 ・商標法では、専用使用権を設定するに際して、制限がある場合がある。
 ・特許法等では「実施」と表現するのに対し、商標法では「使用」と表現する。
 ・商4条2項に該当する場合は、専用使用権及び通常使用権を設定できない。
 ・団体商標に係る商標権については、専用使用権の設定をすることができる。


第二項

 専用使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。

第三項

 専用使用権は、商標権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

 ・特77条3項の規定と相違し、実施の事業とともにする場合が規定されていないのは、既存設備の荒廃の防止ということが考えられないからである。つまり、商標権者の承諾を得た場合に限り譲渡でき、実施の事業とともにする場合であっても譲渡できない。

第四項

 特許法第七十七条第四項 及び第五項 (質権の設定等)、第九十七条第二項(放棄)並びに第九十八条第一項第二号及び第二項(登録の効果)の規定は、専用使用権に準用する。

 ・実施の事業とともに移転する場合であっても、専用使用権を承諾なしに移転することはできない。


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