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平成20年度弁理士試験論文式筆記試験問題[国際私法]

問題

 甲国人Aは仕事で半年間日本に滞在していたが、日本を離れるに当たって、甲国で購入して日本に持ち込んでいた健康器具を日本在住の日本人Xに安く譲り渡した。Xはそれを使用したところ、やけどを負ってしまった。そこでXは、この健康器具を製造販売した甲国法人Y(主たる事業所の所在地は甲国)に対して損害賠償を求めて、わが国の裁判所に訴えを提起した。
 Yは日本にも営業所を有しており、その営業所を通じて日本でも本件健康器具と類似の健康器具を販売しているが、日本市場向けについては日本の安全基準を満たすようにされており、同種の事故は起きていない。
 (1)本件訴えについて、わが国の裁判所は国際裁判管轄を有するか。
 (2)本件損害賠償請求に適用すべき準拠法は何か。



 (1)について
 国際裁判管轄について、日本には国際裁判管轄を直接規定する法規がなく、また、よるべき条約も一般に承認された明確な国際法上の原則も確立していない。
 よって、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により、条理にしたがって決定するのが相当である。ここで、条理に適う場合とは、日本国の民事訴訟法の国内の土地管轄に関する規定の裁判籍のいずれかが、日本内にあるときである。
 本問において、被告である甲国法人Yは、日本にも営業所を有している。そのため、民事訴訟法4 条により、わが国の裁判所は国際裁判管轄を有すると解する。

 (2)について
 法の通則法18条では、生産物責任の準拠法を、原則として被害者が生産物の引渡しを受けた地の法としている。生産物が引き渡された地は、生産者と被害差との接点となる地であり、その地の法を生産物責任の準拠法として考えてよいからである。
 しかし、その地における生産物の引渡しが通常予見することのできないものであったときは、生産業者等の主たる事業所の所在地の法が適用される。生産物が中古品として流通する等、生産者が予見し得ないような地で生産物が取得される場合もあり、生産者の予見可能性に配慮するためである。
 本問において、Yは日本に有する営業所を通じて日本でも本件健康器具と類似の健康器具を販売しているが、日本市場向けについては日本の安全基準を満たすようにされており、同種の事故は起きていない。従って、Yは、甲国で販売された健康器具の日本での引渡しを通常予見することができない。
 よって、本件損害賠償請求に適用すべき準拠法は、生産業者であるYの主たる事業所の所在地である甲国の法である。

以上


オリジナルレジュメ



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