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平成15年度弁理士試験論文式筆記試験問題[国際私法]

問題

 甲国人Aが、乙国で自動車を運転中に反対車線に誤って進入し、乙国人Bが運転する自動車と衝突した。この事故により、Aは死亡し、Bは大けがをした。
 そこで、Bは日本在住のAの子A’を被告とする損害賠償請求の訴えを日本の裁判所に提起した。



 (1)本件自動車事故による損害賠償についての準拠法は何か。Bが、Aは公道で自動車レースのような極めて無謀な運転をしていたとして天文学的な金額の懲罰的損害賠償を請求している場合に生ずる問題にも触れること。

 損害賠償請求といった不法行為の準拠法は、原則として加害行為の結果発生地法による(通則法17条)。多くの場合、不法行為は加害行為地と結果発生地とが一致し、行為者が自己の行為の結果について予測する判断基準としてふさわしいからである。また、結果発生地の社会の公益に大きく間係するからである。
 本問においては、結果発生地は乙国である。よって、本件自動車事故による損害賠償についての準拠法は乙国法であると解する。なお、仮に乙国における結果の発生が通常予見することのできないものであったとしても、加害行為地が乙国であるので準拠法は乙国法であると解する。
 但し、不法行為について外国法によるべき場合において、被害者は日本法により認められる損害賠償でなければ請求することができない(通則法22条2項)。不法行為の成立について日本法の干渉を全面的に認めるのが通則法の趣旨だからである。よって、本問において、Bが天文学的な金額の懲罰的損害賠償を請求した場合、そのような請求は認められないと解する。

以上

 (2)Aの相続人とその相続分の準拠法は何か。

 相続は被相続人の本国法が準拠法となると解する(通則法36条)。相続は身分又は財産の承継であるので、相続関係を一体として本国法の管轄に服させるのが妥当だからである。
 本問の場合、題意より被相続人であるAの本国法は甲国法となる。よって、Aの相続人とその相続分の準拠法は、甲国法であると解する。

以上

 (3)A’が、損害賠償債務の相続の問題は不法行為の問題でもあり、かつ、相続の問題でもあるので、不法行為の準拠法と相続の準拠法がともにその債務の相続を認めない限り、相続しないと主張したとする。この主張の当否について論ぜよ。

 加害者の相続人に対する損害賠償請求は、相続人が加害者の損害賠償債務を相続していることが前提となる。ここで、損害賠償債務の相続について不法行為の準拠法と相続の準拠法の両者において認められる必要があるかが問題となる。
 この点、損害賠償債務の相続性の問題は不法行為の効力の問題であり、不法行為の準拠法によるべきである。よって、損害賠償債務の相続性の問題は、不法行為の準拠法上認められれば良いと解する。
 よって、本問のA’の主張は失当である。従って、不法行為の準拠法である乙国法が損害賠償債務の相続を認めれば、A’は損害賠償債務を相続すると解する。

以上


オリジナルレジュメ



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