ARIKA事件(平成21(行ヒ)217)の概説

事件の概要

 本事件は、不使用取消審判の請求の予告登録前3年以内に、商標権者が登録商標に係る指定役務について商標を使用していたか否か関し、「商品の販売に関する情報の提供」という役務の意義が争われた事件です。

 本事件において、商標権者は、自社のウェブサイトにおいて、自社が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて、登録商標「ARIKA」を表示して、そのゲームソフト(及びその楽曲を収録した音楽CD)の発売日、価格等を表示しており、これが「商品の販売に関する情報の提供」という指定役務に該当するか否かが争点でした。※詳細は判例検索システムで判決文を検索して下さい。


[前提] 別表第35類

 一 広告
(一) 雑誌による広告の代理 新聞による広告の代理 テレビジョンによる広告の代理 ラジオによる広告の代理
(二) 車両の内外における広告の代理
(三) 屋外広告物による広告 アドバルーンによる広告 看板による広告 はり紙による広告
(四) 街頭及び店頭における広告物の配布 商品の実演による広告 郵便による広告物の配布
(五) 広告文の作成 ショーウインドーの装飾
(六) 広告宣伝物の制作 広告の企画
二 トレーディングスタンプの発行
三 経営の診断又は経営に関する助言 市場調査 商品の販売に関する情報の提供 ホテルの事業の管理
四 財務書類の作成又は監査若しくは証明
五 職業のあっせん 医師のあっせん 科学技術者のあっせん 家政婦のあっせん 看護婦のあっせん クリーニング技術者のあっせん 歯科医師のあっせん 助産婦のあっせん 調理師のあっせん 通訳のあっせん 配ぜん人のあっせん 美容師のあっせん マネキンのあっせん モデルのあっせん 薬剤師のあっせん 理容師のあっせん
六 求人情報の提供
七 競売の運営
八 輸出入に関する事務の代理又は代行
九 新聞の予約購読の取次ぎ
十 書類の複製 速記 電子計算機、タイプライター、テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作 筆耕 文書又は磁気テープのファイリング


本事件の要点

 最高裁は、「商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である」と判断しました。

 そのうえで、別表第35類に、「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしていること、「商品の販売に関する情報の提供」は、省令別表第35類中の同区分に属する役務を1から11までに分類して定めているうちの3において、「経営の診断及び指導」、「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ、類似商品・役務審査基準においても、これらと同一の類似群に属するとされていること」を挙げて、 「省令別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは、商業等に従事する企業に対して、その管理、運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当であ る」と認定しました。

 そして、「商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは、「商品の販売に関する情報の提供」には当たらない」として、商標権者が登録商標の使用をしていたということはできないと判示した。その結果、商標を取り消す旨の審決に違法はないとされました。

私見

 本判決は、限定的な射程ですので弁理士試験への影響は少ないと思いますが、「商品又は役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈する」という結論は、覚えていて損はないと思います。

オリジナルレジュメ

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