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特許法101-104条の4

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法101条(侵害とみなす行為)

第一項

 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

 ・侵害とみなされるので、特196条の罰則の適用がある。

第一号

 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

 ・物の使用は直接侵害となる。また、生産にのみ用いる物の使用は規定されていないが、使用の前提として生産譲渡に当たる。
 ・テレビの特許に対するテレビの組み立てセット等である。
 ・他の用途の存在は、差止請求に関しては口頭弁論終結時をもって、損害賠償請求に関しては侵害時をもって判断する。また、経済的又は実用的な用途であることを要する。そのようなものが無ければ、実施されることがないからである。
 ・特許後に他の用途が発見されたときは、発見後の行為は間接侵害の対象とはならない。
 ・特許発明に係る物のみを生産する装置の販売のために、特許発明に係る物を展示する行為は、「その物の生産にのみ用いる物の譲渡の申し出」に該当し、間接侵害となる。
 ・海外での侵害行為は日本法上の侵害行為ではないので、製造にのみ用いるものの輸出を間接侵害として認めると、侵害行為ではない海外での製造行為の予備的行為を侵害行為としてとらえることとなり適切ではない。このため、製造にのみ用いるものの輸出は、間接侵害として規定されていない。


第二号

 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

 ・課題の解決に不可欠なものとは、それを用いることにより初めて課題が解決されるような部品、道具、原料などのことである。例えば、消しゴムで消せるボールペンのインクに用いる顔料は該当するが、通常のものにも使用される軸やキャップは該当しない。なお、非侵害用途があっても間接侵害の対象に含まれる。
 ・日本国内において広く一般に流通しているものとは、日本国内において広く普及している一般的な製品のことをいう。例えば、ねじ、釘、電球、トランジスタ等である。すなわち、特注品ではなく一般に入手可能な状態にある規格品や普及品である。取引の安定性の観点から好ましくないからである。
 ・外国において広く普及していたとしても除外されない。特許権の及ぶ範囲は日本国内に限られるため、外国における普及は取引の安定性の確保という観点からは考慮する必要がないためである。
 ・主観的要件が必要なのは、供給した物が侵害に用いられるか否かは相手先に意図によって決定されるので、善意で供給した者にまで責任を負わせるのは酷だからである。
 ・専用品に関しては注意義務が課せられているので、特許権の存在の認識は要件とされていない。
 ・知りながらとは、実際に知っていたことを意味する。従って、過失により知らなかった場合は該当しない。供給する物が複数の用途を有する場合にまで、供給先でどのように使われるかについての注意義務を負わせるのは酷だからである。
 ・意匠法には対応する規定が存在しない。意匠法では類似意匠にも意匠権の効力が及び、部分意匠制度も存在するため、充分に権利保護が図られているためである。
 ・プログラムをパソコンにインストールすることは物の「生産」に該当する。特許が物の発明についてされている場合において、プログラムはその物の生産に用いる物に該当し、要件を満たせばプログラムの製造・販売が装置特許の「間接侵害」に当たる。


第三号

 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為

 ・侵害物品が広く市場に流通してしまってからでは、侵害物品の個々の販売行為を未然に防止することは困難である。そこで、譲渡等の前段階である所持行為をみなし侵害行為とすることにより、侵害行為禁止の実効性を高めるとともに、模倣品の拡散を抑止する必要がある。
 ・使用行為については、所持の目的としないこととした。所持の行為態様と重複することが多く、行為後に侵害品が広く拡散してしまう危険性が低いためである。


第四号

 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

 ・特許が方法の発明についてされている場合において、プログラムはその方法の使用に用いる物に該当せず、プログラムの製造・販売は方法特許の「間接侵害」に当たらない。

第五号

 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

第六号

 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為

特許法102条(損害の額の推定等)

第一項

 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

 ・侵害者の譲渡数量 × 特許権者又は専用実施権者が販売する物の単位数量当たりの利益(但し、実施の能力に応じた額を超えない限度) − 販売できないと事情に相当する数量に応じた額 = 損害額損害の額とすることができる(推定ではない)。
 つまり、権利者は侵害者の譲渡数量に自己の利益率を乗じた額を損害額とできる。
 ・従来困難であった逸失利益の請求を容易にするための規定である。
 ・特許権者が実施していなければ、逸失利益が無いので適用されない。
 ・本項の適用においては、侵害と損害の因果関係及び損害の発生の立証は不要である。
 ・譲渡とあるので、無償譲渡の場合も含まれる。
 ・物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。
 ・損害賠償請求訴訟で権利者が立証すべき要件は、@故意過失A権利侵害B損害の発生C侵害と損害の因果関係D損害額、である。
 ・損害賠償請求訴訟の流れは、侵害行為の立証→侵害の判断→故意過失の立証→損害額の立証→損害額の判断→判決、となる。
 ・差止請求訴訟の流れは、侵害行為の立証→侵害の判断→判決、となる。
 ・H16年改正のポイントは、@紛争の実効的解決、Aインカメラ審理に係る手続きの整備、B秘密保持命令、C公開停止、である。


第二項

 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。

 ・損害額の立証よりも相手の利益額の立証の方が幾分容易だからである。
 ・本項の推定においては、侵害と損害の因果関係及び損害の発生の立証は不要である。
 ・特許権者が実施していなければ、逸失利益が無いので推定されない。
 ・侵害による利益とは、侵害がないと仮定した場合の財産総額と、現実の財産総額との差であるので、損失を免れた場合も含まれる。
 ・民法703,704条では、権利者の損失額を限度として不当利得が返還される。なお、損害賠償は知ったときから3年の短期消滅時効により消滅するが、不当利得返還請求権の消滅時効は行為から10年である。


第三項

 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

 ・本項の推定においては、損害の発生、侵害と損害の因果関係及び損害額の立証は不要である。
 ・特許権者が実施していない場合であっても、実施料相当額の損害は推定される。この場合、将来実施する予定がある等の特段の事情があれば、実施料相当額を超える損害の賠償を請求できる。
 ・実施料相当額を損害の額として賠償を受け、その訴訟が完結した場合は、その後にそれ以上の損害額を立証したとしても、その請求をすることはできない。
 ・平成10年改正により、受けるべき金銭の額から「通常」の文言が削除された。


第四項

 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

 ・軽過失が参酌されたとしても、実施料相当額以下に軽減することはできない。
 ・重大な過失とは、善管注意義務を甚だしく欠いた心理状態である。なお、参酌するか否かは裁判所の裁量である。


特許法103条(過失の推定)

 他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。

 ・実用新案では不準用である。
 ・相手方の過失を立証することの困難性に鑑み、立証責任の転換を図ったものである。


特許法104条(生産方法の推定)

 物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。

 ・パリ優先の場合は第一国出願日を基準に判断される。現実の出願日を基準とすると、第一国出願日後で現実の出願日前に生産された物に適用されず本条の趣旨に反するからである。
 ・相手側が推定を覆すには、自己の生産方法の開示だけでなく、その方法が特許発明の技術的範囲に属さないことまで主張立証しなければならない。
 ・公然知られた物であるには、実存する必要は無いが、当業者がその物を製造する手掛かりが得られる程度に示されている必要がある。
 ・出願前に公然知られていない物と同一の物であって外国で生産された物を輸入する行為であっても、侵害が成立する。物を生産する方法の発明については、その方法により生産された物を輸入する行為をも実施行為に当るからである。


特許法104条の2(具体的態様の明示義務)

 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

 ・侵害行為の立証の容易化の規定である。
 ・否認する場合は、理由つきの積極否認をしなければならない。
 ・権利者の主張する具体的態様とは、@社会通念上他と区別できる程度に、A特許発明の技術的範囲に属するか否か対比できる程度に具体的に特定された、態様をいう。
 ・相当の理由とは、例えば営業秘密が含まれている場合や、主張できる理由が何もない時が該当する。
 ・本条に違反しても制裁規定は存在しない。


特許法104条の3(特許権者等の権利行使の制限)

第一項

 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。

 ・「明白な」無効理由が存在するとの要件は不要である。
 ・「相手方に対し」とあるので、訴訟当事者以外の第三者に対しては権利行使できる。
 ・特許に無効理由が存在することが明らかである場合には、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り権利の濫用に当たり許されない。
 ・特許請求の範囲に記載された発明特定事項の全てが特許出願時において公知であった場合、例えば、A,Bからなる発明が公知であった場合、A,Bからなる発明を実施している者は、公知技術の実施は特許権の侵害とはならないとする自由技術の抗弁をすることができる。他方、公知技術は特許発明の技術的範囲に属しないと解される。例えば、Aの下位概念であるaと、Bと、からなる発明が公知であった場合、A,Bからなる特許発明の技術的範囲に、a,Bからなる発明は含まれない。
 ・H23改正により、延長登録の有効性についても無効の抗弁が主張できるようになった。衝平の理念及び紛争解決の実効性・訴訟経済のためには必要だからである。


第二項

 前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。

 ・却下は、職権で可能であり且つ決定である。

第三項

 第百二十三条第二項ただし書の規定は、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者以外の者が第一項の規定による攻撃又は防御の方法を提出することを妨げない。

 ・冒認等を理由とする無効の抗弁の主張権者は真の権利者に限定されない。冒認者等の権利行使が、真の権利者から技術供与を受けて発明を実施している者にも及ぶ可能性があるため、そのような者にも冒認等を理由とする無効の抗弁の主張が認められる。

特許法104条の4(主張の制限)

第一項

 特許権若しくは専用実施権の侵害又は第六十五条第一項若しくは第百八十四条の十第一項に規定する補償金の支払の請求に係る訴訟の終局判決が確定した後に、次に掲げる審決が確定したときは、当該訴訟の当事者であつた者は、当該終局判決に対する再審の訴え(当該訴訟を本案とする仮差押命令事件の債権者に対する損害賠償の請求を目的とする訴え並びに当該訴訟を本案とする仮処分命令事件の債権者に対する損害賠償及び不当利得返還の請求を目的とする訴えを含む。)において、当該審決が確定したことを主張することができない。

 ・侵害訴訟において、当事者は特許の有効性及びその範囲について主張立証する機会と権能を有しているといえる(特104条の3)。そのため、判決確定後に、判決と異なる内容の審決が確定したことを理由として、確定判決が覆されることは紛争の蒸し返しであり妥当ではないからである。
 ・仮差押命令の発令後に、本案訴訟で損害賠償請求を認容する判決が確定し、その後に特許の無効審決が確定した場合に、認容審決は覆されない一方で、債権者(特許権者)は仮差押命令に基づき差し押さえたことに対して損害賠償請求をされるのは、妥当ではない。そのため、仮差押命令事件の債権者に対する損害賠償請求を目的とする訴えにおいても主張が制限される。
 ・仮処分命令の発令後に、本案訴訟で差止請求を認容する判決が確定し、その後に特許の無効審決が確定した場合に、認容審決は覆されない一方で、債権者(特許権者)は仮処分命令を執行したことに対して損害賠償請求又は不当利得返還請求をされるのは、妥当ではない。そのため、仮差処分令事件の債権者に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求を目的とする訴えにおいても主張が制限される。
 ・実30条、意41条で準用されている。


第一号

 当該特許を無効にすべき旨の審決

第二号

 当該特許権の存続期間の延長登録を無効にすべき旨の審決

 ・H23改正により、当事者は、侵害訴訟において延長登録の有効性についても主張立証する機会と権能が与えられることになったからである。

第三号

 当該特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすべき旨の審決であつて政令で定めるもの

 ・訂正認容審決の場合は内容が多種多様であり、攻撃防御を尽くす機会と権能が与えられていないものも存在するため、すべてについて主張の制限の対象とすることは適切ではないからである。
 ・主張が制限される訂正認容審決には、確定した終局判決が特許権者の勝訴の判決である場合に、訴訟で立証された事実以外の事実を根拠として特許が無効にされないようにするための審決、確定した終局判決が特許権者、専用実施権者又は補償金の支払の請求をした者の敗訴の判決である場合に、訴訟で立証された事実を根拠として特許が無効にされないようにするための審決、がある。
 ・主張が制限されない訂正認容審決とは、特許権者が無効理由と関係なく訂正した場合、訴訟で立証された無効理由とは異なる無効理由に基づき第三者が請求した無効審判において、無効理由を解消するために訂正した場合(ただし、訴訟で立証された無効理由も解消している場合は除く)、がある。





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