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特許法61-70条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法61条(削除)

特許法62条(削除)

特許法63条(削除)

特許法64条(出願公開)

 特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第一項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。

 ・審査の遅延により出願された発明が長期間公開されないことにより、重複登録、重複投資を招いている弊害を防止するためである。
 ・出願から1年6月経過後であっても、特許掲載公報が発行されていれば公開されない。
 ・出願公開の請求が行われた場合は、出願が取り下げられても必ず公開される。
 ・優先権主張出願とそうでない出願とを平等に扱うために、第一国出願日から起算することとしたため、パリ優先の優先権証明書の提出期間が第一国出願から1年4月となり、それに出願公開の準備期間を考慮した結果、出願公開を出願日から1年6月とした。
 ・分割変更出願はもとの出願日から起算されるので、1年6月経過後に分割変更出願された場合、その後速やかに公開される。
 ・出願公開前に取下、放棄、却下、拒絶査定の確定がされた出願は出願公開されない。
 ・パリ優先の場合は第一国出願日から、国内優先の場合は先の出願日を基準とする。
 ・特許は出願から1年6月(又は設定の登録)、実用新案は設定の登録、意匠は設定の登録、商標は出願後速やかに、公報に掲載される。
 ・翻訳文が提出された外国語特許出願については、特許掲載公報の発行をしたものを除き、国内書面提出期間(翻訳文提出特例期間)の経過後(国内書面提出期間内に出願人から出願審査の請求があり国際公開がされているものについては、出願審査の請求の後)、遅滞なく、国内公表される。


第二項

 出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。ただし、第四号から第六号までに掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。

 ・国内公表においては、出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、特許出願の番号、国際出願日、発明者の氏名及び住所又は居所、明細書及び図面の中の説明及び請求の範囲及び要約の翻訳文、国内公表の番号及び年月日、必要な事項が公開される。

第一号

 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

第二号

 特許出願の番号及び年月日

第三号

 発明者の氏名及び住所又は居所

第四号

 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容

第五号

 願書に添付した要約書に記載した事項

 ・特許掲載公報の場合、公開公報において公開されていれば要約書に記載した事項は掲載されない。

第六号

 外国語書面出願にあつては、外国語書面及び外国語要約書面に記載した事項

 ・特許掲載公報の場合、外国語書面及び外国語要約書面は掲載されない。また、国内公表時には原文は掲載されない。

第七号

 出願公開の番号及び年月日

 ・特許掲載公報の場合は、代わりに特許番号及び設定の登録の年月日が掲載される。

第八号

 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

第三項

 特許庁長官は、願書に添付した要約書の記載が第三十六条第七項の規定に適合しないときその他必要があると認めるときは、前項第五号の要約書に記載した事項に代えて、自ら作成した事項を特許公報に掲載することができる。

 ・掲載しなければならないわけではない。

特許法64条の2(出願公開の請求)

第一項

 特許出願人は、次に掲げる場合を除き、特許庁長官に、その特許出願について出願公開の請求をすることができる。

 ・出願公開前に第三者が実施している場合に、早期に補償金請求権を発生させるためである。
 ・優先権主張の対象となる出願であっても、出願公開の請求により後の出願の公開前に先の出願が公開される場合がある。
 ・出願の事実を知っているのは出願人のみであるため、請求できるのも出願人のみである。


第一号

 その特許出願が出願公開されている場合

第二号

 その特許出願が第四十三条第一項又は第四十三条の二第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願であつて、第四十三条第二項(第四十三条の二第三項において準用する場合を含む。)に規定する書類及び第四十三条第五項(第四十三条の二第三項において準用する場合を含む。)に規定する書面が特許庁長官に提出されていないものである場合

 ・パリ優先の場合、優先権証明書提出後でなければ請求できない旨を規定している。出願人の優先権を主張する意思が確定する前に公開すると第三者に不利益を与える恐れがあるためである。

第三号

 その特許出願が外国語書面出願であつて第三十六条の二第二項に規定する外国語書面の翻訳文が特許庁長官に提出されていないものである場合

第二項

 出願公開の請求は、取り下げることができない。

 ・請求後、出願公開前に取下、放棄、却下、拒絶査定の確定がされた出願でも出願公開される。

特許法64条の3(出願公開の請求)

第一項

 出願公開の請求をしようとする特許出願人は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。

第一号

 請求人の氏名又は名称及び住所又は居所

第二号

 出願公開の請求に係る特許出願の表示

特許法65条(出願公開の効果等)

第一項

 特許出願人は、出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。

 ・補償金請求権の発生要件は、@出願公開、A警告、B特許権の設定登録、である。
 ・出願公開により第三者は特許出願の内容を実施可能となるため、自己の発明を第三者に実施されたことによる出願人の損失を補填するために補償金請求権が認められる。なお、出願公開は審査を経ていない特許出願について行われるものであり、特許掲載公報に比べて発行量も多いのでこれを全て読むことを第三者に義務づけることは適当ではないため、警告が要件となる。
 ・警告後であっても、補正により特許請求の範囲に係る発明が変更されていれば、原則として再警告しなければ権利行使できない。しかし、補正が減縮を目的とするものであって、補正の前後に渡って発明の技術的範囲に属する場合は、再度の警告は不要である。改めて警告をしなくとも、第三者に対して不意打ちを与えることにはならないからである。
 ・第三者が故意に発明を実施したとしても、その立証は出願人が行わなければならない。
 ・特許出願に係る発明であるので、公開時に外国語書面にのみ記載されている発明でも補正により特許請求の範囲に含まれれば補償金請求権の対象となる。
 ・先使用による通常実施権を有する者、職務発明による通常実施権を有する者、仮専用実施権者又は仮通常実施権者は抗弁権を有する。
 ・警告書面には少なくとも@公開番号、A公開日、B出願番号、C特許請求の範囲に記載されている発明が、当業者に理解できる程度に記載されていることが必要である。
 ・業界紙への掲載、不特定多数の者への警告は、警告に該当しない。また、自ら創作した者でも対象となる。
 ・日本語特許出願は国際公開が要件であり、外国語特許出願は国内公表が要件である(特184条の10)。なお、拡大先願については国内公表が要件ではない。
 ・商13条の2においては、悪意であっても警告が必要である。


第二項

 前項の規定による請求権は、特許権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。

 ・特許権が発生していない不安定な段階で請求権の行使を認めると、後に拒絶された場合の利害関係の調整が面倒だからである。

第三項

 特許出願人は、その仮専用実施権者又は仮通常実施権者が、その設定行為で定めた範囲内において当該特許出願に係る発明を実施した場合については、第一項に規定する補償金の支払を請求することができない。

 ・仮通常実施権は、登録していなくても補償金請求権に対抗できる。なお、特許出願中は、排他的権利が発生していないため、仮専用実施権者又は仮通常実施権者が、設定行為で定めた範囲内で特許出願に係る発明を業として実施しても、差止請求権又は損害賠償請求権の行使を受けることはない。

第四項

 第一項の規定による請求権の行使は、特許権の行使を妨げない。

 ・補償金を支払う第三者は、将来特許権を行使されることを回避するために、将来特許権を行使しないとする旨の、いわゆるパテントフライの特約を結ぶことが重要である。
 ・出願公開中にメーカーが補償金を支払って製造した機械を購入し、特許後に業として使用している者も特許権の行使を免れることはできない。


第五項

 出願公開後に特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第百十二条第六項の規定により特許権が初めから存在しなかつたものとみなされたとき(更に第百十二条の二第二項の規定により特許権が初めから存在していたものとみなされたときを除く。)、又は第百二十五条ただし書の場合を除き特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。

 ・特許料の不納により失効した特許権が回復された場合、特許権が失効した後であっても請求権が発生する。
 ・特許権を放棄しても補償金請求権は消滅しない。


第六項

 第百一条、第百四条から第百五条の二まで、第百五条の四から第百五条の七まで及び第百六十八条第三項から第六項まで並びに民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条 及び第七百二十四条 (不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が特許権の設定の登録前に当該特許出願に係る発明の実施の事実及びその実施をした者を知つたときは、同条 中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「特許権の設定の登録の日」と読み替えるものとする。

 ・補償金請求権の行使に関し、実施とみなされる場合、生産方法の推定、書類の提出につき特許権侵害の場合の規定を準用している。また、共同不法行為及び不法行為に基づく債権の消滅事項の規定を準用している。
 ・特102条、特105条の3、特103条、特106条は不準用である。また、特100条も不準用である。
 ・生産方法を立証しなくとも補償金請求権を請求しうる。
 ・請求可能期間は知ったとき又は設定登録の日から3年である。なお、設定の登録の日は補償金請求権の消滅時効の起算の初日となる。
 ・商13条の2第5項では、特106条を準用しているが、特101条、特104条、特104条の2、特105条の7は不準用である。
 ・間接侵害に対しても、補償金を請求できる。


特許法66条(特許権の設定の登録)

第一項

 特許権は、設定の登録により発生する。

第二項

 第百七条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料の納付又はその納付の免除若しくは猶予があつたときは、特許権の設定の登録をする。

 ・軽減された場合は、納付されないと設定登録されない。

第三項

 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。ただし、第五号に掲げる事項については、その特許出願について出願公開がされているときは、この限りでない。

 ・外国語書面出願が登録された場合の外国語書面は掲載されない。
 ・旧5項に対応する公序良俗に関する規定はないが、実務上掲載されるか否かは不明。


第一号

 特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所

第二号

 特許出願の番号及び年月日

第三号

 発明者の氏名及び住所又は居所

第四号

 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容

 ・実用新案法でも全文掲載される。

第五号

 願書に添付した要約書に記載した事項

 ・出願公開されている時は、要約書記載事項は公開されない。

第六号

 特許番号及び設定の登録の年月日

第七号

 前各号に掲げるもののほか、必要な事項

第四項

 第六十四条第三項の規定は、前項の規定により同項第五号の要約書に記載した事項を特許公報に掲載する場合に準用する。

特許法67条(存続期間)

第一項

 特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。

 ・パリ優先の場合は日本への出願日、国内優先の場合は後の出願日から20年である。
 ・分割、変更出願の場合は、親出願の日から20年である。
 ・規定上は、満了ではなく、「終了」である。権利の存続期間の終期を意味する。なお、「満了」は、規定期間が事故なく終わることを意味する。


第二項

 特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。

 ・特許権が存続しても権利の専有による利益を享受できず、特許権が侵食されているという問題を解決するためである。
 ・一日でも延長登録される。
 ・薬事法の承認及び農薬取締法の登録が該当する。なお、対象となるのは医薬品、医薬部外品、農薬、動物用医薬品である。
 ・特許発明の実施についてとあるので、特許後の実施不能期間について延長が認められる。特許前の実施不能期間を特許後に延長可能とすると、延長制度が適用されない他の分野との公平性に欠くからである。
 ・1の処分に対応する特許権が複数ある場合は、延長登録は個別に認められる。また、1の特許権に対する処分が複数ある場合も、それぞれの処分につき延長登録が認められる。なお、薬事法の承認の場合、物(有効成分)、用途(効能・効果)、剤型、製法等を細かく特定して承認を受ける必要があり、物又は用途が異なれば延長登録が別個に認められる。物及び用途が同じであれば剤型、製法等が異なっても別個には認められない。
 ・実用新案法には延長登録制度はない。


特許法67条の2(存続期間の延長登録)

第一項

 特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

 ・延長登録出願は請求項毎に行うことはできず、延長登録無効審判も請求項毎に審判請求することはできない。よって、処分の対象となった請求項を記載する必要はない。
 ・複数の処分をまとめて受けても複数の処分に基づく1の延長登録出願は認められない(一処分一延長登録の原則)。


第一号

 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

第二号

 特許番号

第三号

 延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)

 ・実施できなかった期間より短くとも良い。

第四号

 前条第二項の政令で定める処分の内容

第二項

 前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない。

 ・資料及び願書の補正は、事件が特許庁に係属している限りできる(拒絶査定が確定するまで又は延長登録がされるまで)。なお、資料は訂正審判の対象ではないので、延長登録後の資料の補正はできない。

第三項

 特許権の存続期間の延長登録の出願は、前条第二項の政令で定める処分を受けた日から政令で定める期間内にしなければならない。ただし、同条第一項に規定する特許権の存続期間の満了後は、することができない。

 ・政令で定める期間は、現在は3月であるが、3月を経過した後であっても、不責事由があれば6月の間は追完できる。また、不責事由がある場合は、最大9月提出期間を延長できる。
 ・本号違反は却下処分となる。
 ・存続期間満了後は延長登録出願できない。従って、延長期間内に延長登録出願をすることは出来ない。一旦消滅した特許権を復活させることは法的安定性を著しく損なうからである。なお、満了後に出願された場合は却下処分となる。


第四項

 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない。

 ・本項違反は、延長拒絶査定の理由となり、延長無効理由となる。

第五項

 特許権の存続期間の延長登録の出願があつたときは、存続期間は、延長されたものとみなす。ただし、その出願について拒絶をすべき旨の査定が確定し、又は特許権の存続期間を延長した旨の登録があつたときは、この限りでない。

第六項

 特許権の存続期間の延長登録の出願があつたときは、第一項各号に掲げる事項並びにその出願の番号及び年月日を特許公報に掲載しなければならない。

 ・延長される可能性があることを、第三者に知らせるためである。
 ・延長の理由を記載した資料は掲載されない。


特許法67条の2の2

 特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、第六十七条第一項に規定する特許権の存続期間の満了前六月の前日までに同条第二項の政令で定める処分を受けることができないと見込まれるときは、次に掲げる事項を記載した書面をその日までに特許庁長官に提出しなければならない。

 ・H12/4/6満了の場合は、H11/10/6が期間の末日(6月前はH11/10/7)となる。つまり、満了日の暦上の6ヶ月前に手続きをすれば良い。11/9に満了する場合は、11/9が起算日であり(初日算入)、5/9が期間の末日、5/10が満了日前6月に該当する(暦上は翌日に当たるが逆に考える)。なお、この場合5/10(満了日前6月の日)は延長登録できない。
 ・延長期間は記載不要である。


第一号

 出願をしようとする者の氏名又は名称及び住所又は居所

第二号

 特許番号

第三号

 第六十七条第二項の政令で定める処分

第二項

 前項の規定により提出すべき書面を提出しないときは、第六十七条第一項に規定する特許権の存続期間の満了前六月以後に特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない。

 ・本項違反は、補正ができないので却下される。

第三項

 第一項に規定する書面が提出されたときは、同項各号に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。

 ・延長登録出願の公報掲載の場合は、延長登録出願の番号及び年月日も掲載される。

特許法67条の3

第一項

 審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が次の各号の一に該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。

 ・延長を求める期間が5年を越えている場合でも拒絶理由は通知されず、補正命令が出される。
 ・不服の場合は特121条の拒絶査定不服審判を請求できる。
 ・請求項が複数ある場合は、いずれか1の請求項でも延長登録要件に該当するものがあれば延長登録の査定を行い、拒絶の査定は全ての請求項が拒絶理由に該当する場合に限り行われる。
 ・拒絶理由は特125条の2第1項の無効理由と同じである。


第一号

 その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。

 ・特許権の範囲と処分を受けることによって禁止が解除された範囲に重複している部分がない場合は、必要であったとは認められないため拒絶査定となる。

第二号

 その特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは登録した通常実施権を有する者が第六十七条第二項の政令で定める処分を受けていないとき。

 ・延長登録出願の処分を受けた者が登録をしていない通常実施権者であった場合は拒絶される。
 ・登録していない通常実施権者でも出願可能とすると、延長登録無効審判の通知を行うことが出来ず、処分を受けた者が知らないうちに審判で争われるという自体が発生してしまうからである。


第三号

 その延長を求める期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を超えているとき。

 ・薬事法の承認待ちによる実施不能期間は、承認が到達した日の前日に満了する。
 ・薬事法の承認待ちによる実施不能期間は、試験開始日又は設定登録日の遅いほうが初日となる。


第四号

 その出願をした者が当該特許権者でないとき。

 ・実施権者が処分を受けた場合であっても、延長登録出願できるのは特許権者のみである。

第五号

 その出願が第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていないとき。

 ・共同出願違反の規定である。

第二項

 審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき旨の査定をしなければならない。

第三項

 特許権の存続期間の延長登録をすべき旨の査定又は審決があつたときは、特許権の存続期間を延長した旨の登録をする。

 ・延長登録は特許庁長官が行う。
 ・特許料の納付は延長登録の条件ではない。


第四項

 前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。

 ・延長登録出願の公報掲載の場合は、延長登録出願の番号及び年月日も掲載される。

第一号

 特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所

 ・特67条の2では、出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、特67条の2の2では、出願をしようとする者の氏名又は名称及び住所又は居所である。

第二号

 特許番号

 ・特67条の2、特67条の2の2でも掲載される。

第三号

 特許権の存続期間の延長登録の出願の番号及び年月日

 ・特67条の2、特67条の2の2では掲載されない。

第四号

 延長登録の年月日

 ・特67条の2、特67条の2の2では掲載されない。

第五号

 延長の期間

 ・特67条の2では、延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)として掲載される。特67条の2の2では掲載されない。

第六号

 第六十七条第二項の政令で定める処分の内容

 ・特67条の2、特67条の2の2でも掲載される。

特許法67条の4

 第四十七条第一項、第四十八条、第五十条及び第五十二条の規定は、特許権の存続期間の延長登録の出願の審査について準用する。

 ・特48条の6は不順用である。また、拒絶理由が明確で限られているため、特54条も不準用である。

特許法68条(特許権の効力)

 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

 ・通常実施権の設定も制限される。
 ・専用実施権を設定した場合であっても、設定の範囲内に質権を設定できる。
 ・専用実施権を設定した場合であっても、特許権者は差し止め請求できる。実施料が専用実施権者の売り上げに比例する場合には、特許権者が実施料収入の確保をする必要があり、特許権の侵害を除去すべき現実的な利益があるからである。また、侵害を放置していると、専用実施権が消滅し特許権者が実施をしようとする際に、市場が荒らされ不利益を被る可能性があるためである。
 ・洗濯屋が洗濯機を使用する行為や、干拓の公共事業において浚渫(しゅんせつ)機を使用する行為は、「業として」に該当する。
 ・業としての実施に限られるのは、個人的家庭的な実施にまで特許権の効力を及ぼしめることは社会の実情から考えて行き過ぎだからである。
 ・特許権者が国内において特許製品を譲渡した場合、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を使用し、譲渡等する行為には及ばない。特許製品について譲渡等を行う都度、特許権者の承諾を要するとすると、市場における商品の自由な流通が阻害され、特許製品の円滑な流通が妨げられ、却って特許権者自身の利益を害し、特許法の目的に反するためである。また、特許権者は、譲渡代金を取得し、公開の代償を確保する機会は保障されており、流通過程において二重の利得を得ることを認める必要性はないからである。
 ・国外において特許製品を譲渡した場合は、譲受人に対しては、販売先又は使用地域からわが国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、転得者に対しては、特許製品にその旨を明確に表示した場合を除き、当該特許製品について特許権を行使することは許されない。現代社会における国際取引の状況に照らせば、譲受人又は転得者が業として当該特許製品をわが国に輸入し、譲渡することは当然に予想されるため、特許権者が留保を付さないまま国外において譲渡した場合には、譲受人又は転得者に対して、わが国において特許権の制限を受けずに当該特許製品を支配する権利を黙示的に授与したと解すべきであるためである。また、特許権者と同視し得る者(子会社又は関連会社等)により国外において譲渡された場合も同様である。
 ・国際消尽は否定される。特許権者が国外においても対応特許を有するとは限らず、有する場合であっても対応特許とわが国の特許権とが別個の権利であることに照らせば、わが国において特許権を行使したとしても直ちに二重の利得を得たものということはできないためである。
 ・国内消尽について、特許権の消尽により特許権の行使が制限される対象となるのは、あくまで特許権者等が我が国において譲渡した特許製品そのものに限られるものであるから、特許権者等が国内で譲渡した特許製品について加工や部材の交換がされ、それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは、特許権を行使することが許される。ここで、特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては、当該特許製品の属性、特許発明の内容、加工及び部材の交換の態様のほか、取引の実情等も総合考慮して判断される。そして、特許製品の属性としては、製品の機能、構造及び材質、用途、耐用期間、使用態様が考慮の対象となる。また、加工及び部材の交換の態様としては、加工等がされた際の当該特許製品の状態、加工の内容及び程度、交換された部材の耐用期間、当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となる。なお、国際消尽についても同一の基準に従って判断される。
 ・特許法では、公知技術が設定登録されることはなく、特許発明の技術的範囲には公知技術が含まれないことを前提としている。そのため、特許発明の技術的範囲は、少なくとも当該特許発明との関係での公知技術には及ばないというのが、特許法の趣旨と解される。また、公知技術の存在によって、無効理由があるのにこれを看過して登録された特許権に基づいて、当該公知技術の実施に効力が及ぶとするのは、ものの道理に合わないと解される。


特許法68条の2(存続期間が延長された場合の特許権の効力)

 特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。

 ・存続期間の延長制度の趣旨から、処分を受けることによって禁止が解除された範囲と、特許発明の範囲との重複部分のみに延長された特許権の効力が及ぶ。
 ・医薬品の場合、有効成分・効能・効果が同一であれば、剤型、用法、用量、製法等が異なる医薬品にも延長後の特許権の効果が及ぶ。


特許法69条(特許権の効力が及ばない範囲)

第一項

 特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。

 ・試験又は研究は技術の進歩を目的とするものであり、このような実施にまで効力をおよぼしめることは却って技術の進歩を阻害するからである。
 ・試験結果物に関しては、物を生産する発明の場合の試験結果物にのみ特許権の効力が及ぶ。つまり、靴下製造方法の特許発明の試験によって生産された靴下の販売には特許権の効力が及ぶが、靴下製造機の特許発明の試験によって生産された靴下の販売には特許権の効力が及ばない。
 ・特許性調査、機能調査、改良・発展を目的とする試験には、特許権の効力が及ばないが、経済性調査のための試験・研究には特許権の効力が及ぶ。
 ・特許権の存続期間満了後に特許発明に係る医薬品を製造販売する目的で、特許権の存続期間中に薬事法の製造承認申請に必要な試験を行う行為は、本項の試験又は研究のためにする特許発明の実施に該当し、特許権の効力が及ばない。仮にこの試験が試験に当たらないとすると、存続期間が満了した後も相当期間、第三者が当該発明を自由に利用し得ない結果となり、存続期間を相当期間延長するのと同様の結果となるため、特許権者に付与すべき利益として特許法が想定する所を越えてしまうからである。
 ・第三者が、存続期間中に薬事法の製造承認申請のための試験に必要な範囲を超えて、存続期間満了後に譲渡する医薬品を生産等することは、特許権を侵害するものとして許されないと解する。


第二項

 特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。

第一号

 単に日本国内を通過するに過ぎない船舶若しくは航空機又はこれらに使用する機械、器具、装置その他の物

 ・国際交通の便宜のためである。

第二号

 特許出願の時から日本国内にある物

 ・当該物を秘密に所持していて(公知に該当しない)、その所持が実施又は実施の準備に該当しない(先使用とならない)場合に意義がある。出願時に存在する物にまで特許権の効力を及ぼしめるのは酷だからである。

第三項

 二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為及び医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。

 ・調剤を指示する医師等が、都度その混合方法が特許権と抵触するか否かを判断することは困難であり、医師等の調剤行為は国民の健康を回復せしめるという特殊な社会的任務に係るものであるため、調剤行為にまで特許権の効力をおよぼしめるのは適当ではないからである。
 ・人の病気に用いる物に限られる。また、医薬部外品も医薬に含まれる。
 ・実用新案法では医薬が保護対象とはならないので、不準用である。


特許法70条(次回追加予定)

第一項

 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

 ・@置換部分が特許発明の本質的な部分ではなく、A置換しても特許発明の目的を達成でき、同一の作用効果を奏するものであり、B当業者が製造時に置換した対象製品等を容易に創造でき、C対象製品等が出願時の公知技術と同一又は容易に創造できたものではなく、D対象製品等が出願手続において意識的に除外されたものでない、ときには均等の範囲内と判断される。(ボールスプライン軸受事件)。
 特許出願の際に、将来のあらゆる侵害態様を予想して特許請求の範囲を記載することは極めて困難であり、構成の一部を特許出願後に明らかとなった物質又は技術と置換することにより、権利行使を容易に免れることができるとすれば、発明意欲を減殺し、特許法の目的に反するばかりでなく、社会正義にも反し、衝平の理念にもとる結果となるためである。他方、公知技術又は容易に創造できた技術については、特許を受けることができなかったはずのものであるから、特許発明の技術的範囲に属するものということができない。また、特許出願手続きにおいて出願人が意識的に除外したものについて、これと反する主張をすることは禁反言の法理に照らし許されない。
 ・特許請求の範囲基準の原則とは、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に記載された発明のみを基準として判断すべきであって、明細書又は図面にのみ記載された発明を判断の基準としてはならないことをいう。特許請求の範囲の保護範囲的機能及び特70条1項の反対解釈として導き出されるものである。よって、特許請求の範囲の一の請求項に複数の発明特定事項を記載している場合であっても、各発明特定事項毎に技術的範囲を定めてはならない。
 ・詳細な説明参酌の原則とは、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たっては、明細書の記載及び図面を考慮することをいう。特許請求の範囲は発明特定事項の全てを簡潔に示すものであるから、その記載のみによっては特許請求の範囲の意義を明確に理解することが困難であるからである。
 ・出願経過参酌の原則とは、特許請求の範囲を明確に理解するために、出願から特許に至るまでの経過を通じて出願人が示した意図又は特許庁の見解を参酌することをいう。判断に公正且つ慎重を期するためである。よって、例えば、拒絶理由に対応して明細書を限定した場合は、出願書類禁反言の原則により、限定前の明細書により解される可能性のある技術的範囲の主張はできない。
 ・公知事実参酌の原則とは、特許請求の範囲の意義を明確にするために、出願時の公知事実を参酌することをいう。つまり、公知技術は特許発明の技術的範囲に属しない。特許発明は、出願時の技術水準を越える技術的思想だからこそ特許権を付与されるからである。
 ・意識的除外論とは、出願人が特許請求の範囲から意識的に除外した事項は技術的範囲に属しないことをいう。また、意識的限定論とは、出願人が意識的に特許請求の範囲を限定した場合は、その事項のみが技術的範囲に属することをいう。出願人自ら特許を請求しないことを明らかにした範囲にまで技術的範囲を及ぼす必要はなく、意識的除外事項を特許後に技術的範囲とすることは信義則又は禁反言の原則に反するからである。


第二項

 前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。

 ・明細書の記載とは、発明の詳細な説明と図面の簡単な説明のことを指す。
 ・特許発明の技術的範囲は、発明の詳細な説明に記載された実施例に限定して解釈されない。また、詳細な説明に記載されているが、特許請求の範囲に記載されていない事項は、特許請求の範囲に記載されていないと解釈される。


第三項

 前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。




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