不正競争防止法1-10条

 不正競争防止法の勉強を始める前に、まずは、不正競争防止法の概要(平成19年度版)(経済産業省HP)を見て、不正競争防止法の概要を勉強して下さい。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が暗記項目です。

不正競争防止法1条(目的)

 この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

不正競争防止法2条(定義)

第一項

 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

 不正競争行為の類型
 @周知な商品等表示の混同惹起
 A著名な商品等表示の冒用
 B商品形態の模倣※デッドコピー(19条1項5号で例外有り)
 C営業秘密の侵害(秘密管理性、非公知性、有用性が必要)
 D技術的制限手段を解除する製品等の販売
 Eドメインネームの不正取得
 F原産地、品質等の誤認惹起表示
 G信用毀損行為
 H代理人等の商標冒用行為
  @外国国旗、紋章等の不正使用
  A国際機関の標章の不正使用
  B外国公務員贈賄

 最高裁H17(受)575
 不正競争防止法は、営業の自由の保障の下で自由競争が行われる取引社会を前提に、経済活動を行う事業者間の競争が自由競争の範囲を逸脱して濫用的に行われ、あるいは、社会全体の公正な競争秩序を破壊するものである場合に、これを不正競争として防止しようとするものと解される。よって、社会通念上営利事業といえないものであるからといって、当然に同法の適用を免れるものではない。他方、そも そも取引社会における事業活動と評価することができないようなものについてまで、同法による規律が及ぶものではない。
 宗教法人の本来的な宗教活動に関しては、自由競争が行われる取引社会を前提とするものではなく、不正競争防止法のの適用の対象外である。また、収益事業であっても、教義の普及伝道のために行われる出版、講演等も同法の適用の対象外である。これに対し、宗教法人が行う駐車場業のように、取引社会における競争関係という観点からみた場合に他の主体が行う事業と変わりがないものについては、不正競争防止法の適用の対象となり得る。


第一号

 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

 ・周知な他人の商品等表示を使用等し、混同を生じさせる行為(周知表示混同惹起行為)を規定している。
 ・商品等表示は、商品又は営業の出所の表示であり、非類似の商品サービス等の表示も含まれ、登録の有無も問わない。また、商品の形態が出所表示機能を持つに至った場合は、商品の形態自体も商品表示となり得る。
 ・周知性の判断時点は差し止めに関しては口頭弁論終結時である。
 ・周知に過ぎないので、混同を生じさせることが要求されるが、第三者の行為による周知でも良い。なお、混同はおそれで足り、広義の混同も含まれる。また、混同に際して、競争関係は不要である。
 ・類似か否かは、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需用者が両表示の外観、呼称又は観念に基づく印象、記憶、連想などから両者を全体的に類似するものとして受け取るおそれがあるか否かを基準にして判断する。
 ・周知でなければ、不正競争の目的で使用しても不正競争にはあたらない。
 ・例えば、動く蟹看板と類似した看板を同業者が使用する行為が該当する。
 ・香りは形態にあたらないが商品等表示になるので、香りのサンプル販売は1号にあたる(H18枝20)。


第二号

 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

 ・自己の商品等表示として他人の著名な商品当表示を使用等する行為(著名表示冒用行為)を規定している。
 ・希釈化の防止を目的とする。
 ・全国的に著名であっても、著名でない県において使用される場合は不正競争を構成しない。
 ・著名であるので、混同は不要である。著名ブランドの商標をホテルや喫茶店の名称として使用する場合も不正競争に該当する。
 ・他人が営業に使用する表示として周知なものを、自己の商品に使用した場合、本号に規定する不正競争になり得る。


第三号

 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 ・他人の商品形態を模倣した商品を譲渡等する行為(商品形態模倣行為いわゆるデッドコピー)を規定している。但し、機能を確保するために不可欠な形態は除外されている。
 ・商品の形態とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。
 ・模倣するとは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。
 ・形態を模倣するのみ(製造のみ)は該当しない。試験研究までも不正競争とするのはやりすぎだからである。
 ・本号にはデータベースなどの商品は含まない。
 ・模倣とは、他人の商品にアクセスすることと、商品の実質的同一性が要求される。従って、自ら創作した場合は該当しない。
 ・形が同じで色違い、色が同じで形違いは該当しない。
 ・模倣は、両方の形態を比較し、物理的に同一である部分が商品の形態全体から見て重要な意味を有する部分か否かで判断される。
 ・投資資金回収の充分な期間が経過したと判断されるため、販売後3年経過で適用除外となる(19条1項5号イ)。また、販売は、業としての 最初の販売から起算し日本国内に限られ、一回のみでも販売に該当する。なお、3年経過後は1号又は民709条で保護される。
 ・譲受時に善意軽過失な者が譲渡等する行為は除かれる。
 ・通常の形態(同種の商品においてありふれた形態、製作上不可避な形態)のみである場合は除かれるが、特異な部分を含んだ模倣は該当する。
 ・貸し渡しであるので、引き渡しまでは求められない。
 ・「商品の形態」には、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感も含まれる(本条4項)。 内部構造が実質的に同一であっても、外観が実質的に同一でなければデッドコピーにはあたらない。但し、機能上不可欠な外観又はありふれた外観であっても、内部構造が実質的に同一であれば(機能上不可欠な内部構造又はありふれた内部構造を除く)、デッドコピーになりうる。


第四号

 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「不正取得行為」という。)又は不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。以下同じ。)

 ・窃盗等による営業秘密の不正取得行為、及び、不正取得行為により取得した営業秘密を使用、開示する行為を規定している。
 ・秘密管理性(アクセス制限やアクセスした者に秘密であることが分かる様な管理)、非公知性(刊行物に書かれていない、当該管理者以外の元では本情報を得られない)、有用性(正当な事業活動には当たらないので公害、脱税の情報は該当しない)が要求される。
 ・窃取の目的が公害の証拠を得るためであっても、結果として営業秘密を入手した場合は本号に該当する。
 ・守秘義務のある者に知られても、非公知性は失われない。
 ・差し止めにおける非公知性の判断時は、口頭弁論終結時である。損害賠償の場合は、不正行為時である。
 ・例えば、従業員が機密文書を窃取し、産業スパイに開示する行為。


第五号

 その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

 ・不正取得行為の介在について悪意/重過失の者が営業秘密を入手、使用、開示する行為を規定している。
 ・例えば、産業スパイが機密文書を受け取る行為。


第六号

 その取得した後にその営業秘密について不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

 ・善意/無過失で営業秘密を入手した後、不正取得行為の介在について悪意/重過失で使用、開示する行為を規定している。
 ・例えば、善意で営業秘密を取得した後に、報道された産業スパイ事件を知りながら、使用する行為。


第七号

 営業秘密を保有する事業者(以下「保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

 ・正当に営業秘密を示された者が、図利加害目的で使用、開示する行為を規定。図利加害目的が必要なので、重過失は不要。
 ・公害防止目的は、図利加害目的とはならない。
 ・競業の目的とは、競争関係にある事業を行う目的をいう。
 ・例えば、従業者が顧客名をを持ち出し、通信販売業を営む行為。


第八号

 その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

 ・不正開示行為の介在を知って使用、開示する行為を規定。また、不正開示行為には、@不正の利益を得る目的や損害を与える目的で開示する行為、A守秘義務に反して開示する行為が含まれる旨を規定。
 ・例えば、守秘義務者が無断で製造ノウハウを持ち出したことを知りながら、機密漏洩行為をさせて使用する行為。


第九号

 その取得した後にその営業秘密について不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

 ・例えば、保有者からの警告後に営業秘密を使用する行為。

第十号

 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

 ・技術的制限手段の妨害機器又は妨害プログラムを譲渡等する行為(技術的制限手段妨害機器提供行為)を規定している。なお、次号に該当する場合は括弧書きで除外されている。
 ・コピーガードキャンセラーの販売等が該当する。
 ・対象が著作物である必要はない。
 ・営利目的に限られない。
 ・営業上であるので、プライバシーの保護や防衛上の目的で使われる暗号には適用されない。
 ・「のみ」と制限されているのは、他の機能をも保護するのは行き過ぎだからである。
 ・視聴用の信号を検知しない装置(無反応装置)は、あらゆる信号を検知しない様にする必要があるので技術的に困難であり、不正競争の対象とはならない。
 ・装置とはチップなどであり、機器とはチップなどを含む物をいう。
 ・製造のみでは該当しない。
 ・特定の者(他人の顧客等)に譲渡する場合も不正競争となる。


第十一号

 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

 ・特定者以外への視聴等を制限する技術的制限手段の妨害機器又は妨害プログラムを譲渡等する行為(技術的制限手段妨害機器提供行為)を規定している。
 ・衛星放送の無許諾受信デコーダーの販売等が該当する。
 ・著作権法で規定するコピー制限とは異なるので、本号違反は著作権の侵害とはならない。
 ・製造のみでは該当しない。
 ・無償で提供する行為も該当する。
 ・特定の者(元々視聴等が許可されている者等)に譲渡する場合は不正競争とならない。


第十二号

 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

 ・図利加害目的で他人の特定商品等表示と同一類似のドメイン名を取得する行為(ドメイン名の不正取得行為)を規定している。
 ・類似は、重要部の比較で判断する。
 ・保有、取得などに図利加害目的がなくても該当する。
 ・不正の利益を得る目的でとは、公序良俗に反する態様で、自己の利益を不当に図る目的がある場合と解する。また、他人に損害を加える目的とは、他人に対して財産上の損害、信用の失墜等の有形無形の損害を加える目的のある場合と解する。
 ・インターネットで使用するメールアドレスに、有名な芸名を用いても不正競争とはならない。メールアドレスは、「ユーザー名@ドメイン名」という構造をしており、「ドメイン名」には該当しないからである。
 ・例えば、他人の氏名、商標、商号と同一類似のドメイン名を取得する行為、他人と同一類似の文字列のホームページへのアクセスを求める行為をいう。


第十三号

 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

 ・商品役務や広告等に原産地等を誤認させる表示をする行為(誤認惹起行為)を規定している。
 ・注文書、見積書、送り状、計算書、領収書などが該当する。
 ・外国国旗は原産地誤認表示となる。
 ・例えば、法上の「みりん」ではない調味料に「本みりん」と表示する行為、紳士服に「イングランド」と押捺する行為、マレーシア産カモ肉に「国産フランスカモ肉」と表示する行為等。


第十四号

 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

 ・信用毀損行為を規定している。例えば、明らかな非侵害者の特許権侵害について、その非侵害者の取引先に告知する行為。他社の浄水器の交換窓口である旨の虚偽事実を流布して自社製品を販売する行為。
 ・本号で不正競争に該当するためには、「競争関係」の存在が必要である。したがって、競争関係にあるときに限り、本号に規定する不正競争となる。
 ・虚偽の事実であると信じて流布した情報が真実であった場合は、本号に該当しない。
 ・特許権者等の権利者が、非侵害が明らかであるにも関わらず、競業者の取引先に権利侵害に関する告知をした場合、本号に該当し得る(サンゴ化石粉体事件)。


第十五号

 パリ条約(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第四条第一項第二号 に規定するパリ条約をいう。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法 条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為

 ・パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標権に相当する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく無断で、同一類似商品を譲渡等する行為(代理人等の商標冒用行為)を規定している。

第二項

 この法律において「商標」とは、商標法第二条第一項 に規定する商標をいう。

 商標法第2条1項(定義等)
 この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
 一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
 二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)


第三項

 この法律において「標章」とは、商標法第二条第一項 に規定する標章をいう。

 商標法第2条1項(定義等)
 この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。


第四項

 この法律において「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。

 ・H17年法改正により、内部形状、光沢及び質感が加わった。

第五項

 この法律において「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。

 ・H17年法改正により、実質的に同一が明示された。

第六項

 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

 ・営業秘密が、秘密として管理されており(秘密管理性)、有用な営業上又は技術上の情報であり(有用性)、公然と知られていないこと(非公知性)を要する旨を規定している。
 ・秘密管理性は、情報にアクセスできる者を制限すること(アクセス制限)、情報にアクセスした者にそれが秘密であることを認識できること(客観的認識可能性)を要する。
 ・有用性とは、事業活動に利用されていたり、利用されることで経費節約や経営効率の改善等に役立つものであることをいうが、現実に利用されていなくともよい。
 ・非公知性には、保有者の管理下以外では一般に入手できないことを要する。但し、第三者が同じ情報を保有していても、該第三者が秘密管理していれば非公知に該当する。
 ・守秘義務のある者に知られても、非公知性は失われない。
 ・例えば、施錠した保管庫に保管した情報、パスワードでアクセス権を管理した情報、「マル秘、機密情報、取扱い注意、複製不可」等の表示がある情報、は秘密管理性が認められる。一方、無施錠で保管した情報、閲覧権者の制限が不十分な情報、は秘密管理性が認められない。
 ・例えば、設計図、製法、製造ノウハウ、顧客名簿、仕入先リスト、販売マニュアル、失敗実験データ等は有用性が認められる一方、公害、脱税、詐欺等の反社会的活動の情報は有用性が認められない。


第七項

 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

 ・技術的制限手段の定義(電磁的方法により影像等の視聴、プログラムの実行又は記録を制限する手段であり、且つ、特定信号に反応する又は特定変換を要する影像等を記録、送信する方式の視聴等機器によるもの)を規定している。

第八項

 この法律において「プログラム」とは、電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。

第九項

 この法律において「ドメイン名」とは、インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組合せに対応する文字、番号、記号その他の符号又はこれらの結合をいう。

第十項

 この法律にいう「物」には、プログラムを含むものとする。

不正競争防止法3条(差止請求権)

第一項

 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

 ・信用を害する行為も該当する。
 ・差し止めの対象は、組成物、看板、営業秘密が化体した媒体などである。
 ・差し止めの判断時は口頭弁論終結時。
 ・不正の目的は不要。
 ・利益を害される恐れがある者には、使用権者、使用許諾者が含まれる。


第二項

 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

 ・予防に必要な行為とは、担保の提供などである。

不正競争防止法4条(損害賠償)

 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

 ・損害賠償の判断時は不正行為時。

不正競争防止法5条(損害の額の推定等)

第一項

 第二条第一項第一号から第九号まで又は第十五号に掲げる不正競争(同項第四号から第九号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密(秘密として管理されている生産方法その他の事業活動に有用な技術上の情報であって公然と知られていないものをいう。)に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。

 ・2条1号(混同惹起)、同2号(著名表示冒用)、同3号(デットコピー)、技術上の営業秘密に関して同4〜9号(営業秘密関係)、同15号(代理人等の商標冒用行為)は、譲渡数量に単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を損害額として推定できる旨を規定している。
 ・外国の商標権者の日本における代理人による商標の使用による不正競争に対する損害賠償請求については、侵害行為を組成した物の譲渡数量を基準とする損害額が認められる。 2条1項15号は、本項の損害額の算定の対象とされているためである。したがって、所定の要件を満たす場合には、侵害行為を組成した物の譲渡数量を基準とする損害額が認められる。


第二項

 不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。

 ・侵害者の利益を損害額として推定できる旨を規定している。
 ・全ての不正競争に適用される。


第三項

 第二条第一項第一号から第九号まで、第十二号又は第十五号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

 ・2条1号(混同惹起)、同2号(著名表示冒用)、同3号(デットコピー)、同4〜9号(営業秘密関係)、同12号(ドメイン名)、同15号(代理人等の商標冒用行為)は、使用料相当額を損害額と推定できる旨を規定している。  ・不正をしても通常の使用料を支払うのみで足りるとすると、不正のし得になってしまうので「通常」の限定は削除された。

第一号

 第二条第一項第一号又は第二号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品等表示の使用

第二号

 第二条第一項第三号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品の形態の使用

第三号

 第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争 当該侵害に係る営業秘密の使用

 ・技術上の秘密には限られない。

第四号

 第二条第一項第十二号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用

第五号

 第二条第一項第十五号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商標の使用

第四項

 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、その営業上の利益を侵害した者に故意又は重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。

不正競争防止法6条(具体的態様の明示義務)


 不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあると主張する者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。

 ・具体的態様の明示義務を規定している。但し、相当の理由があれば明示を免れる。

不正競争防止法7条(書類の提出等)

第一項

 裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。

 ・裁判所が、侵害の立証又は損害の計算のために書類提出命令できる旨を規定している。但し、正当な理由があれば提出を免れる。

第二項

 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。

 ・いわゆるインカメラ手続きについて規定している。

第三項

 裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあっては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。

 ・正当な理由の存在について意見聴取が必要であると認定されれば、当事者に書類が開示される場合がある旨を規定している。

第四項

 前三項の規定は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。

 ・7条1項(書類提出命令)、同2項(インカメラ手続)、同3項(書類の開示)について、侵害行為の検証に準用する旨を規定している。

不正競争防止法8条(損害計算のための鑑定)

 不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。

 ・特105条の2と同様に、強行規定である。

不正競争防止法9条(相当な損害額の認定)

 不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

不正競争防止法10条(秘密保持命令)

第一項

 裁判所は、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があった場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。

 ・準備書面又は証拠に営業秘密が含まれ(10条1項1号)、訴訟外で使用され又は開示されることで当事者の事業活動に支障を来たし且つ営業秘密の使用開示の制限を必要とする場合(同2号)、訴訟外目的使用又は非守秘義務者への開示に対して、秘密保持命令できる旨を規定している。
 ・但し、申立ての時までに当事者が、訴訟外で既に当該営業秘密を取得又は保有していた場合は除かれる。


第一号

 既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第七条第三項の規定により開示された書類又は第十三条第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。

第二号

 前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。

第二項

 前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

 ・口頭により秘密保持命令の申し立てはできない。

第一号

 秘密保持命令を受けるべき者

第二号

 秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実

第三号

 前項各号に掲げる事由に該当する事実

第三項

 秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。

第四項

 秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。

第五項

 秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

 ・秘密保持命令の申立認容判決に対する即時抗告は認められない。審理の迅速化を図るため、秘密保持命令の効力を早期に安定させる必要があるからである。なお、秘密保持命令取消の申立についての裁判に対しては即時抗告することができる。




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