特許法181-184条の2
初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
以下、
太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。
特許法181条(審決又は決定の取消し)
第一項
裁判所は、第百七十八条第一項の訴えの提起があつた場合において、当該請求を理由があると認めるときは、当該審決又は決定を取り消さなければならない。
・裁判所は特許を無効にすべきことを特許庁に命ずることはできない。行政権の行使となり三権分立の原則に反するからである。
・全ての取消訴訟が対象となり、判決により取り消される。
・無効審決が確定した場合、特許権が消滅するので請求棄却となる。
・特定の引用例から容易に発明できないとの理由により審決取消が確定した場合、再度の審判手続には判決の拘束力が及ぶ。そのため審判官は、同一の引用例から容易に発明できたと認定判断することは許されない。従って、再度の審決取消訴訟において、取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を誤りである(同一の引例から容易に発明できた)として、これを裏付けるための新たな立証をし、更には裁判所がこれを採用して、取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決を違法とすることは許されない。
・裁判所は、訴えの提起後の訂正審判請求により特許無効審判においてさらに審理させることが相当であると認めるときは、当該審決を取り消すことができる。なお、無効審決取消訴訟提起後に、特許請求の範囲を減縮する訂正の認容審決が確定した場合、裁判所は当該無効審決を取り消さなければならない。
第二項
審判官は、前項の規定による審決又は決定の取消しの判決が確定したときは、さらに審理を行い、審決又は決定をしなければならない。この場合において、審決の取消しの判決が、第百三十四条の二第一項の訂正の請求がされた一群の請求項のうち一部の請求項について確定したときは、審判官は、審理を行うに際し、当該一群の請求項のうちその他の請求項についての審決を取り消さなければならない。
・差戻審理においては、先の審決を下した審判官が審理できる。
・本項後段は、一部の請求項についての審決の取消が確定した場合に、一体的に取り扱わなくてはならない他の請求項についての審決も取り消すことにより、一群の請求項に対して一体的に審理できるようにし、訂正の許否判断および審決の確定が一体的になされるようにするためである。
特許法182条(裁判の正本等の送付)
裁判所は、第百七十九条ただし書に規定する訴えについて次の各号に掲げる場合には、遅滞なく、それぞれ当該各号に定める書類を特許庁長官に送付しなければならない。
・無効審判以外の訴訟にあっては、特許庁長官が被告であるためわざわざ通知する必要はない。
・「遅滞なく」なので、長官からの求めがなくとも通知しなければならない。
第一号
裁判により訴訟手続が完結した場合 各審級の裁判の正本
・正本とは、法律上原本のもつ効力を発揮する写しのことである。
第二号
裁判によらないで訴訟手続が完結した場合 訴訟手続が完結した訴えに係る請求項を特定するために必要な書類
特許法182条の2(合議体の構成)
第一項
第百七十八条第一項の訴えに係る事件については、五人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。
・決定であり、判決ではない。
特許法183条(対価の額についての訴え)
第一項
第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項又は第九十三条第二項の裁定を受けた者は、その裁定で定める対価の額について不服があるときは、訴えを提起してその額の増減を求めることができる。
・裁定自体に不服があるときは行服法の異議申し立てをし、行訴法の提訴を行う。
・対価の額に対する訴えは被告の財産所在地の裁判所に対して行うので、特許管理人のない在外者の場合は常に東京地裁となる。
・東京高裁の専属管轄ではない。
第二項
前項の訴えは、裁定の謄本の送達があつた日から六月を経過した後は、提起することができない。
特許法184条(被告適格)
第一項
前条第一項の訴えにおいては、次に掲げる者を被告としなければならない。
第一号
第八十三条第二項、第九十二条第四項又は第九十三条第二項の裁定については、通常実施権者又は特許権者若しくは専用実施権者
・裁定通常実施権の対価の額に対する訴えは相手方を被告としなければならない。
・対価の額に対する訴えは、相手の所在地により管轄裁判所が異なるので、東京地裁の専属管轄ではない。
第二号
第九十二条第三項の裁定については、通常実施権者又は第七十二条の他人
・自己の特許発明の実施をするための通常実施権の設定の裁定における対価の額の訴えは、通常実施権者又は抵触権利者を被告とする。
特許法184条の2(不服申立てと訴訟との関係)
この法律又はこの法律に基づく命令の規定による処分(第百九十五条の四に規定する処分を除く。)の取消しの訴えは、当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ、提起することができない。
・行政庁の処分の例:
@手続の却下には、代理人の改任等の命令後の手続の却下、補正命令後の手続の却下、補正不可能な不適法な手続の却下、審判長による補正命令後の方式に違反した場合の決定による却下、審判長による補正不可能な不適法な手続の却下等がある。
A裁定には、不実施の場合の通常実施権の設定の裁定、自己の特許発明の実施をするための通常実施権の設定の裁定、公共の利益のための通常実施権の設定の裁定等がある。
B裁定の取消には、特90条がある。
C証明などの請求の却下には、特186条等がある。
・異議申立期間は、処分を知った日の翌日から60日以内である。但し、天災その他やむをえない理由があるときは、その理由がなくなった日の翌日から1週間以内となる。なお、審査請求期間は、異議申立請求期間と同じく60日以内である。
・処分庁は、異議申立を審理した結果、不適法である場合は決定で異議申立を却下し、理由がないときは棄却し、理由があるときは処分の一部若しくは全部の取消又は変更をする。
・審査請求を審理した結果、不適法である場合は裁決で審査請求を却下し、理由がないときは棄却し、理由があるときは処分の一部又は全部を取消す。
・特許庁長官による出願却下処分については、行政不服審査法による異議申立ができ、認められない場合は行政事件訴訟法による取消訴訟ができる。
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