特許法101-105条
初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
以下、
太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。
特許法101条(侵害とみなす行為)
第一項
次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
・侵害とみなされるので、特196条の罰則の適用がある。
第一号
特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
・物の使用は直接侵害となる。また、生産にのみ用いる物の使用は規定されていないが、使用の前提として生産譲渡に当たる。
・テレビの特許に対するテレビの組み立てセット等である。
・他の用途の存在は、差止請求に関しては口頭弁論終結時をもって、損害賠償請求に関しては侵害時をもって判断する。また、経済的又は実用的な用途であることを要する。そのようなものが無ければ、実施されることがないからである。
・特許後に他の用途が発見されたときは、発見後の行為は間接侵害の対象とはならない。
・特許発明に係る物のみを生産する装置の販売のために、特許発明に係る物を展示する行為は、「その物の生産にのみ用いる物の譲渡の申し出」に該当し、間接侵害となる。
・海外での侵害行為は日本法上の侵害行為ではないので、製造にのみ用いるものの輸出を間接侵害として認めると、侵害行為ではない海外での製造行為の予備的行為を侵害行為としてとらえることとなり適切ではない。このため、製造にのみ用いるものの輸出は、間接侵害として規定されていない。
第二号
特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
・課題の解決に不可欠なものとは、それを用いることにより初めて課題が解決されるような部品、道具、原料などのことである。例えば、消しゴムで消せるボールペンのインクに用いる顔料は該当するが、通常のものにも使用される軸やキャップは該当しない。なお、非侵害用途があっても間接侵害の対象に含まれる。
・日本国内において広く一般に流通しているものとは、日本国内において広く普及している一般的な製品のことをいう。例えば、ねじ、釘、電球、トランジスタ等である。すなわち、特注品ではなく一般に入手可能な状態にある規格品や普及品である。取引の安定性の観点から好ましくないからである。
・外国において広く普及していたとしても除外されない。特許権の及ぶ範囲は日本国内に限られるため、外国における普及は取引の安定性の確保という観点からは考慮する必要がないためである。
・主観的要件が必要なのは、供給した物が侵害に用いられるか否かは相手先に意図によって決定されるので、善意で供給した者にまで責任を負わせるのは酷だからである。
・専用品に関しては注意義務が課せられているので、特許権の存在の認識は要件とされていない。
・知りながらとは、実際に知っていたことを意味する。従って、過失により知らなかった場合は該当しない。供給する物が複数の用途を有する場合にまで、供給先でどのように使われるかについての注意義務を負わせるのは酷だからである。
・意匠法には対応する規定が存在しない。意匠法では類似意匠にも意匠権の効力が及び、部分意匠制度も存在するため、充分に権利保護が図られているためである。
・プログラムをパソコンにインストールすることは物の「生産」に該当する。特許が物の発明についてされている場合において、プログラムはその物の生産に用いる物に該当し、要件を満たせばプログラムの製造・販売が装置特許の「間接侵害」に当たる。
第三号
特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
・侵害物品が広く市場に流通してしまってからでは、侵害物品の個々の販売行為を未然に防止することは困難である。そこで、譲渡等の前段階である所持行為をみなし侵害行為とすることにより、侵害行為禁止の実効性を高めるとともに、模倣品の拡散を抑止する必要がある。
・使用行為については、所持の目的としないこととした。所持の行為態様と重複することが多く、行為後に侵害品が広く拡散してしまう危険性が低いためである。
第四号
特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
・特許が方法の発明についてされている場合において、プログラムはその方法の使用に用いる物に該当せず、プログラムの製造・販売は方法特許の「間接侵害」に当たらない。
第五号
特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
第六号
特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
特許法102条(損害の額の推定等)
第一項
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
・侵害者の譲渡数量 × 特許権者又は専用実施権者が販売する物の単位数量当たりの利益(但し、実施の能力に応じた額を超えない限度) − 販売できないと事情に相当する数量に応じた額 = 損害額損害の額とすることができる(推定ではない)。
つまり、権利者は侵害者の譲渡数量に自己の利益率を乗じた額を損害額とできる。
・従来困難であった逸失利益の請求を容易にするための規定である。
・特許権者が実施していなければ、逸失利益が無いので適用されない。
・本項の適用においては、侵害と損害の因果関係及び損害の発生の立証は不要である。
・譲渡とあるので、無償譲渡の場合も含まれる。
・物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。
・損害賠償請求訴訟で権利者が立証すべき要件は、@故意過失A権利侵害B損害の発生C侵害と損害の因果関係D損害額、である。
・損害賠償請求訴訟の流れは、侵害行為の立証→侵害の判断→故意過失の立証→損害額の立証→損害額の判断→判決、となる。
・差止請求訴訟の流れは、侵害行為の立証→侵害の判断→判決、となる。
・H16年改正のポイントは、@紛争の実効的解決、Aインカメラ審理に係る手続きの整備、B秘密保持命令、C公開停止、である。
第二項
特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
・損害額の立証よりも相手の利益額の立証の方が幾分容易だからである。
・本項の推定においては、侵害と損害の因果関係及び損害の発生の立証は不要である。
・特許権者が実施していなければ、逸失利益が無いので推定されない。
・侵害による利益とは、侵害がないと仮定した場合の財産総額と、現実の財産総額との差であるので、損失を免れた場合も含まれる。
・民法703,704条では、権利者の損失額を限度として不当利得が返還される。なお、損害賠償は知ったときから3年の短期消滅時効により消滅するが、不当利得返還請求権の消滅時効は行為から10年である。
第三項
特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
・本項の推定においては、損害の発生、侵害と損害の因果関係及び損害額の立証は不要である。
・特許権者が実施していない場合であっても、実施料相当額の損害は推定される。この場合、将来実施する予定がある等の特段の事情があれば、実施料相当額を超える損害の賠償を請求できる。
・実施料相当額を損害の額として賠償を受け、その訴訟が完結した場合は、その後にそれ以上の損害額を立証したとしても、その請求をすることはできない。
・平成10年改正により、受けるべき金銭の額から「通常」の文言が削除された。
第四項
前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
・軽過失が参酌されたとしても、実施料相当額以下に軽減することはできない。
・重大な過失とは、善管注意義務を甚だしく欠いた心理状態である。なお、参酌するか否かは裁判所の裁量である。
特許法103条(過失の推定)
他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。
・実用新案では不準用である。
・相手方の過失を立証することの困難性に鑑み、立証責任の転換を図ったものである。
特許法104条(生産方法の推定)
物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。
・パリ優先の場合は第一国出願日を基準に判断される。現実の出願日を基準とすると、第一国出願日後で現実の出願日前に生産された物に適用されず本条の趣旨に反するからである。
・相手側が推定を覆すには、自己の生産方法の開示だけでなく、その方法が特許発明の技術的範囲に属さないことまで主張立証しなければならない。
・公然知られた物であるには、実存する必要は無いが、当業者がその物を製造する手掛かりが得られる程度に示されている必要がある。
・出願前に公然知られていない物と同一の物であって外国で生産された物を輸入する行為であっても、侵害が成立する。物を生産する方法の発明については、その方法により生産された物を輸入する行為をも実施行為に当るからである。
特許法104条の2(具体的態様の明示義務)
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。
・侵害行為の立証の容易化の規定である。
・否認する場合は、理由つきの積極否認をしなければならない。
・権利者の主張する具体的態様とは、@社会通念上他と区別できる程度に、A特許発明の技術的範囲に属するか否か対比できる程度に具体的に特定された、態様をいう。
・相当の理由とは、例えば営業秘密が含まれている場合や、主張できる理由が何もない時が該当する。
・本条に違反しても制裁規定は存在しない。
特許法104条の3(特許権者等の権利行使の制限)
第一項
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。
・「明白な」無効理由が存在するとの要件は不要である。
・「相手方に対し」とあるので、訴訟当事者以外の第三者に対しては権利行使できる。
・特許に無効理由が存在することが明らかである場合には、その特許権に基づく差止め、損害賠償等の請求は、特段の事情がない限り権利の濫用に当たり許されない。
・特許請求の範囲に記載された発明特定事項の全てが特許出願時において公知であった場合、例えば、A,Bからなる発明が公知であった場合、A,Bからなる発明を実施している者は、公知技術の実施は特許権の侵害とはならないとする自由技術の抗弁をすることができる。他方、公知技術は特許発明の技術的範囲に属しないと解される。例えば、Aの下位概念であるaと、Bと、からなる発明が公知であった場合、A,Bからなる特許発明の技術的範囲に、a,Bからなる発明は含まれない。
第二項
前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
・却下は、職権で可能であり且つ決定である。
特許法105条(書類の提出等)
第一項
裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
・侵害行為、損害額の立証の容易化のための規定であり、申立は原告又は被告(侵害者)ができる。
・当事者が書類を提出しない場合は、民訴224条1項の規定により、裁判所は相手方の主張を真実と認めることができる。また、相手方の使用を妨げる目的をもって書類を減失等した場合も同様である。
・損害額を計算するための書類の他、侵害行為について立証するための書類もある。
第二項
裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。
・裁判所のみが書類を見ることにより行う手続き(いわゆるインカメラ手続き)の規定である。
第三項
裁判所は、前項の場合において、第一項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。
・文書提示を申立てた者に対しても書類を開示して意見を求めることができる。
・当事者、法人の代表者、当事者の代理人、使用人、その他の従業者、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。
第四項
前三項の規定は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。
特許法105条の2(損害計算のための鑑定)
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。
・損害額の立証の容易化のための規定である。
・補償金請求権に基づく訴訟にも適用される。
・職権により鑑定を命じることはできない。なお、申出を受けて鑑定を命じるか否かは裁判所の裁量である。また、説明義務違反の制裁規定は設けられていない。
・鑑定人とは、経理会計の専門知識を有する中立的立場の公認会計士や大学の教授などであり、裁判所が選任する。また、必要な書類とは販売数量、販売単価、利益率等であり、裁判所が決定する。
・必要な事項とは、資料の管理状況や資料の内容を理解するために必要な事項などであり、補助的な資料を提示することも包含する。
・当事者は説明義務を有するが、説明義務違反に対する制裁規定は設けられていない。
特許法105条の3(相当な損害額の認定)
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、損害が生じたことが認められる場合において、損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性質上極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
・損害額の立証の容易化のための規定である。特102条を適用する場合であっても、販売数量などの間接事実の立証が困難である場合は、本条を適用し証明の軽減を図ることが可能である。
・立証が困難な場合とは、侵害により値下げを余儀なくされた場合、製品に対する発明の寄与度の算定が困難な場合、侵害地域全ての立証がコスト上困難な場合などである。
・「事実の性質上」極めて困難である場合に適用があり、「損害の性質上」極めて困難とはいえない場合であっても、損害額を認定できる。
・特102条に基づき損害額を算定する場合であっても、間接事実の立証が極めて困難であるときに本条を適用できる。
特許法105条の4(秘密保持命令)
第一項
裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密(不正競争防止法 (平成五年法律第四十七号)第二条第六項 に規定する営業秘密をいう。以下同じ。)について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。ただし、その申立ての時までに当事者等、訴訟代理人又は補佐人が第一号に規定する準備書面の閲読又は同号に規定する証拠の取調べ若しくは開示以外の方法により当該営業秘密を取得し、又は保有していた場合は、この限りでない。
・特許訴訟における立証の容易化と営業秘密の保護との調和を図るためである。すなわち、証拠の偏在に対処するため文書提出命令により立証の容易化を図る一方で、営業秘密について刑事罰を伴う秘密保持義務を課すことで、営業秘密の保護を図ることが目的である。
・営業秘密とは、不正競争防止法2条6項に規定する営業秘密のことをいい、秘密管理性、有用性、非公知性が必要である。
・@準備書面又は証拠に営業秘密が含まれており、A営業秘密が開示されることで事業活動に支障を生ずる恐れがあり、Bこれを防止するために営業秘密の使用又は開示を制限する必要があり、C当事者が当該営業秘密を取得又は保有していない場合に、D秘密保持命令の申立により、決定で秘密保持命令を出すことができる。
第一号
既に提出され若しくは提出されるべき準備書面に当事者の保有する営業秘密が記載され、又は既に取り調べられ若しくは取り調べられるべき証拠(第百五条第三項の規定により開示された書類又は第百五条の七第四項の規定により開示された書面を含む。)の内容に当事者の保有する営業秘密が含まれること。
第二号
前号の営業秘密が当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は当該営業秘密が開示されることにより、当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に支障を生ずるおそれがあり、これを防止するため当該営業秘密の使用又は開示を制限する必要があること。
第二項
前項の規定による命令(以下「秘密保持命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
・口頭による秘密保持命令の申し立てはできない。
第一号
秘密保持命令を受けるべき者
第二号
秘密保持命令の対象となるべき営業秘密を特定するに足りる事実
第三号
前項各号に掲げる事由に該当する事実
第三項
秘密保持命令が発せられた場合には、その決定書を秘密保持命令を受けた者に送達しなければならない。
第四項
秘密保持命令は、秘密保持命令を受けた者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずる。
第五項
秘密保持命令の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
・申立却下裁判に対しては、申立人は即時抗告することができる。他方、申立認容裁判に対する即時抗告は認められず、特105条の5によってのみこれを争うことができる。審理の迅速化を図るため、秘密保持命令の効力を早期に安定させる必要があるからである。なお、特105条の5第3項の規定により、秘密保持命令取消の申立についての裁判に対しても即時抗告することができる。
特許法105条の5(秘密保持命令の取消し)
第一項
秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあつては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至つたことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。
・取消の要件は、@発令時における要件を欠く場合、又は、A発令後に要件が欠けた場合、である。
・秘密保持命令の申立てをした者も、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。
第二項
秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があつた場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。
第三項
秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
・秘密保持命令の申立却下及び秘密保持命令の取消の申立については、即時抗告できる。
第四項
秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。
第五項
裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。
特許法105条の6(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)
第一項
秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法第九十二条第一項 の決定があつた場合において、当事者から同項 に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行つた者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項 の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第三項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があつた旨を通知しなければならない。
・秘密保持命令が発せられた訴訟について、閲覧制限の決定があった場合に、秘密保持命令を受けていない当事者から閲覧の申請がなされると、閲覧請求があった旨が閲覧制限の申立をした当事者に通知される。
・例えば、特許権者が侵害品の製造者と販売者の両方を被告として訴えを提起するなど、特許侵害訴訟においては当事者が複数となることがある。この場合、一部の被告に対してのみ秘密保持命令が発せられたとすると、例え訴訟記録の閲覧を制限する決定が民訴92条1項に基づいて別途なされていたとしても、訴訟当事者にはこの制限の効力が及ばないため、秘密保持命令を受けていない訴訟当事者は、訴訟記録の閲覧などをすることができる。そして、この結果、秘密保持命令によって守られているはずの情報が漏洩してしまう事態が生じうる。このような不都合を回避するのが本条の趣旨である。
・全ての秘密保持命令が取消された訴訟は除かれる。
第二項
前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があつた日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行つた者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあつては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行つた者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。
・閲覧請求の日から2週間、又は、請求人に対する秘密保持命令の申し立てが確定するまで秘密記載部分の閲覧を禁止している。なお、閲覧制限の申立をした当事者の全ての同意があるときは適用されない。
第三項
前二項の規定は、第一項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項 の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。
・申立をした当事者は、秘密記載部分の閲覧等の請求をした者を除く。
特許法105条の7(当事者尋問等の公開停止)
第一項
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であつて当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによつては当該事項を判断の基礎とすべき特許権又は専用実施権の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
・裁判の公開停止の決定に対する新たな不服申立手続きは設けられていないが、民訴281条,312条2項5号を理由に控訴又は上告が認められると解される。
・実用新案法では本条を準用しており、不競法6条の7に同様の規定がある。しかし、意匠、商標、著作権法には対応する規定がない。
・@事業活動に著しい支障が明らかであるため、A十分な陳述ができず、且つ、B他の証拠では適正な裁判をできない場合に、C裁判官の全員一致により非公開にできる。なお、Dあらかじめ当事者等の意見聴取と、E退廷前の理由説明が必要である。
第二項
裁判所は、前項の決定をするに当たつては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。
第三項
裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。
第四項
裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。
第五項
裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない
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