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特許法91-95条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法91条

 前条第一項の規定による裁定の取消があつたときは、通常実施権は、その後消滅する。

 ・取消があった時とは、取消の処分が確定した時である。

特許法91条の2(裁定についての不服の理由の制限)

 第八十三条第二項の規定による裁定についての行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による異議申立てにおいては、その裁定で定める対価についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができない。

 ・裁定の処分において対価の額以外の不服があるときは、行服法に基づく異議申立てが可能である。そのため、決定を経た後でなければ処分取消しの訴えを提起できない。なお、対価の額については、裁定の謄本の送達があつた日から6月以内に訴えを提起してその増減を求めることができる。

特許法92条(自己の特許発明の実施をするための通常実施権の設定の裁定)

第一項

 特許権者又は専用実施権者は、その特許発明が第七十二条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその特許発明の実施をするための通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

 ・本条は、先願特許権者などと後願特許権者などの利害の調整を図り、裁定をその調整の上で順調にできるようにすること、発明が相互に有効に利用されること等を狙いとする。  ・商標権の裁定に関しては規定がない。商標法においては、商標権者の意思によらずに通常使用権を設定する裁定制度は出所混同の防止の観点から採用されていないからである。
 ・通常実施権者は協議を請求できない。


第二項

 前項の協議を求められた第七十二条の他人は、その協議を求めた特許権者又は専用実施権者に対し、これらの者がその協議により通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾を受けて実施をしようとする特許発明の範囲内において、通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

 ・先願特許権者等と後願特許権者等の利益の調和を図るためである。
 ・(特許法上は)前項の権利者が実施をしようとする範囲についてのみ協議を求めることができる。


第三項

 第一項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許権者又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。

 ・通常実施権者が、本項の裁定を請求できる場合はない。

第四項

 第二項の協議が成立せず、又は協議をすることができない場合において、前項の裁定の請求があつたときは、第七十二条の他人は、第七項において準用する第八十四条の規定によりその者が答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求することができる。

第五項

 特許庁長官は、第三項又は前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第七十二条の他人又は特許権者若しくは専用実施権者の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。

 ・極めて優れた特許発明に意匠を施し、意匠を実施するためと称して通常実施権の許諾の協議を求めた場合等である。
 ・どちらか一方の利益を不当に害する場合は裁定できない。


第六項

 特許庁長官は、前項に規定する場合のほか、第四項の場合において、第三項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。

第七項

 第八十四条条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から前条までの規定は、第三項又は第四項の裁定に準用する。

 ・裁定の維持が適当でなくなった時、通常実施権者が特許発明を適当に実施しない時は、特許庁長官は裁量で裁定を取り消せる。
 ・謄本送達により協議が成立したとみなされる。
 ・実体的判断と供に、対価についても審議会の意見を聞く。
 ・特許庁長官は、答弁書提出機会を付与し、審議会等の意見を聴き、裁定を文書をもつて且つ理由を附して行い、裁定の謄本を当事者等に送達しなければならない。通常実施権者は、裁定の請求について意見を述べることができる。また、本条では、対価の供託、支払い又は供託をしない場合の裁定の失効、不適当実施又は裁定事由の消滅による裁定の取消し、裁定取消後のその後消滅、異議申立てにおける対価についての不服の制限が準用されている。
 ・不適当実施に正当な理由がある場合は裁定できない旨の規定は不準用である。


特許法93条(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)

第一項

 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

 ・公共の利益のために「特に」必要であることが求められる。
 ・発電に関する発明で、発電原価が著しく減少する場合やガス漏れを著しく少なく出来る場合などである。
 ・政府のみならず、公共の利益のために特に必要があって、特許発明を実施しようとする者は誰でも協議を求めることができる。


第二項

 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。

 ・経済産業大臣が指定した答弁書提出期間は、経済産業大臣が延長できる。

第三項

 第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。

 ・謄本送達により協議が成立したとみなされる。
 ・経済産業大臣は、答弁書提出機会を付与し、工業所有権審議会等の意見を聴き、裁定を文書をもつて且つ理由を附して行い、裁定の謄本を当事者等に送達しなければならない。通常実施権者は、裁定の請求について意見を述べることができる。また、本条では、対価の供託、支払い又は供託をしない場合の裁定の失効、不適当実施又は裁定事由の消滅による裁定の取消し、裁定取消後のその後消滅、異議申立てにおける対価についての不服の制限が準用されている。
 ・不適当実施に正当な理由がある場合は、裁定できない旨の規定は不準用である。


特許法94条(通常実施権の移転等)

第一項

 通常実施権は、第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項 の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

 ・実施の事業と共に移転することを認めているのは、設備の荒廃を防止するためである。
 ・通常実施権移転のポイント:
 @許諾通常実施権、法定通常実施権は、実施の事業と供にする場合、承諾を得た場合、一般承継の場合に移転できる。
 A不実施又は公共の利益のための裁定通常実施権は、実施の事業とともにする場合のみ移転できる。
 B利用抵触関係における裁定通常実施権は、対応権利が実施の事業とともに移転した場合のみに付随して移転し、分離移転又は対応権利の消滅の場合は消滅する。
 Cクロスライセンスの裁定通常実施権は、対応権利が移転した場合のみに付随して移転し、対応権利が消滅した場合は消滅する。


第二項

 通常実施権者は、第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項 の裁定による通常実施権を除き、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。

 ・質権の実行により移転する場合は承諾を要しない。質権の設定の承諾に移転の承諾が包含されていると解されるからである。
 ・法定通常実施権においても、質権を設定できる。


第三項

 第八十三条第二項又は前条第二項の裁定による通常実施権は、実施の事業とともにする場合に限り、移転することができる。

 ・不実施又は公共の利益のための裁定通常実施権は、実施の事業とともにする場合のみ、移転できる。これ以外は、相続その他の一般承継の場合でも、移転できない。また、特許権者の承諾を得た場合でも移転できない。
 ・強制的に設定された通常実施権が自由に移転できるのは適当ではないからである。


第四項

 第九十二条第三項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項 の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。

 ・利用抵触関係における自己の特許発明、登録実用新案又は登録意匠を実施するための裁定通常実施権は、対応権利が実施の事業とともに移転した時は、付随して移転し、分離移転又は対応権利の消滅の場合は消滅する。これ以外は、相続その他の一般承継の場合でも、移転できない。また、特許権者の承諾を得た場合でも移転できない。
 ・TRIPSの規定により消滅してしまう。


第五項

 第九十二条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権に従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が消滅したときは消滅する。

 ・クロスライセンスの裁定通常実施権は、対応権利に付随して移転し、対応権利が消滅した場合は消滅する。これ以外は、相続その他の一般承継の場合でも、移転できない。
 ・事業と共にする場合又は一般承継の場合であっても、通常実施権単独では移転できない。しかし、事業と分離して移転することはできる。


第六項

 第七十三条第一項の規定は、通常実施権に準用する。

 ・通常実施権については、共有に係る際の実施に関して同意を要する旨の「契約での別段の定め」をすることができない。

特許法95条(質権)

 特許権、専用実施権又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。

 ・通常特許発明の実施は、相当の設備や技術を必要とするため、質権者が実施権能を有するよりも質権設定者が有する方が望ましいためである。
 ・質権の実行に際しては民事執行法193条が適用される。
 ・特許権の移転、及び、質権設定は請求項毎にはできない。
 ・特許権等は抵当権の目的とすることができない。抵当権にした場合は、実行方法の規定の仕方に困難な問題があり、条文に規定されていないからである。






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