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特許法76-80条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法76条(相続人がない場合の特許権の消滅)

 特許権は、民法第九百五十八条 の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、消滅する。

 ・相続人が不明である場合に、捜索を行い、それでも相続を主張する者がない場合に消滅する。よって、相続人が明らかであれば主張する者がいなくとも消滅しない。
 ・専用実施権者が死亡し、相続人が不存在であって、当該専用実施権の帰属について当事者間に別段の定がなかった場合であっても、専用実施権は消滅しない。
 ・相続債権者、受遺者、遺言により遺贈を受ける者として指定された者がいるときは、消滅しない。


特許法77条(専用実施権)

第一項

 特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。

 ・専用実施権は物権的な性格を有し、同一期間・地域・内容について複数設定できない。
 ・専用実施権は用益物権である。
 ・特許権者の差止請求権が制限されると解すべき根拠が法律の条文の文言にないので、専用実施権が設定されている場合であっても特許権者は差し止め請求できる。
 ・専用実施権が設定されている場合、特許権者は通常実施権を許諾できない。
 ・専用実施権は遺言などの単独行為によっても発生する。
 ・専用実施権の設定契約後、登録までは独占的通常実施権の設定契約があるものと解される。
 ・登録申請は、専用実施権の設定を受ける者及び特許権者が申請しなければならない。但し、特許権者の承諾書を付ければ登録権利者だけで申請できる。


第二項

 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する。

第三項

 専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

 ・事業と供に移転する場合が認められているのは、事業を移転しても実施権を移転し得ないならば、その事業設備は稼働し得なくなり、国家経済上の損失となるからである。
 ・専用実施権者は、専用実施権の一部を移転できる。また、通常実施権者も一部を移転できる。
 ・質権実行による専用実施権の移転は、特許権者の承諾が不要である。


第四項

 専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。

第五項

 第七十三条の規定は、専用実施権に準用する。

 ・専用実施権者の相続人がいない場合であっても、専用実施権は当然には消滅しない。但し、相続人である権利を主張する者がないときは、専用実施権の主体が消滅するので、専用実施権も消滅すると解される。

特許法78条(通常実施権)

第一項

 特許権者は、その特許権について他人に通常実施権を許諾することができる。

 ・通常実施権は債権的な性格を有する。
 ・他人の権利と抵触する範囲であっても、通常実施権を設定できる。
 ・専用実施権を設定している場合、特許権者は、その範囲では通常実施権を設定できない。
 ・独占的通常実施権の場合、固有の権利として損害賠償を請求できる。独占的通常実施権者は市場及び利益を独占できる地位、期待を得ているのであり、そのためにそれに見合う実施料を特許権者に支払っている。よって、無権限の第三者が当該特許発明を実施することは、独占的通常実施権者の地位を害しその期待利益を奪うからである。但し、実施料相当額の損害を賠償する推定は適用されない。
 ・独占的通常実施権の場合でも、差止請求権を行使することはできない。また、特許権者の有する侵害者に対する妨害排除請求権を代位行使することによって、特許権者の実施権者に対する債務の履行が確保される関係にはないので、債権者代位による保全も許されないと解する。但し、特約により、特許権者が権限なき第三者の実施を排除する義務を負う旨を明示している場合には、代位行使が認められると解する。
 ・特許権者から許諾による通常実施権の設定を受けても、その設定登録をする旨の特約がない限り、通常実施権者は、特許権者に対してその設定登録手続きを請求することはできない。
 ・正当権利者と下請け(請負)契約を締結した契約者が、@正当権利者との間に工賃を支払って製作する契約が存在し、A製作について原料の購入、製品の販売、品質についての正当権利者の指揮監督があり、B製品を正当権利者に全部引き渡し、他へ売り渡していない場合は、当該契約者は正当権利者の一機関とされ、その実施は特許権の侵害に該当しない。


第二項

 通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を有する。

 ・法定通常実施権には、先使用権、移転の登録前の実施による通常実施権、中用権、後用権、満了意匠権に基づく通常実施権、職務発明に基づく通常実施権がある。

特許法79条(先使用による通常実施権)

第一項

 特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。

 ・先使用者がその後になされた出願に基づく特許権の存在により実施を継続できなくなることは、公平の観念に反するからである。また、実施を継続できなくなると資本・労力を投下したなされた事業設備の荒廃をきたし、産業政策上好ましくないためである。
 ・出願の際に実施等をしていれば、実施者が後から発明した者である場合でも該当しうる。
 ・実施の準備とは、即時実施の意図を有し、且つ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明されていることをいう。例えば、機械購入のための資金の借り入れ申し込みは、実施の準備に当たらない。一方、事業に必要な機械を発注して完成している場合、雇用契約も結んで相当宣伝活動をしている場合は実施の準備に当たる。
 ・苛性ソーダの製造の実施をしていた場合に、当該設備を製鉄事業に使用する場合にまで通常実施権を有するものではない(業務拡大は不可)。但し、苛性ソーダ製造業の製造規模の拡大は許される(事業拡大は可)。
 ・「特許出願の際」であるので、時刻も問題となる。また、外国での実施は該当しない。但し、先に発明したか否かは問われず、特許出願の際に実施又はその準備をしていれば先使用権が発生する。  ・実26条で準用されている。
 ・事業又はその準備を中止したとしても、先使用権は消滅しない。但し、廃止した場合は先使用権の放棄と考えられるので消滅する。
 ・許諾通常実施権、法定通常実施権は、実施の事業と共にする場合、承諾を得た場合、一般承継の場合に移転できる。
 ・特許権について発生する。
 ・知らないでとは、特許出願に係る発明のルートと先使用に係る発明のルートとが異なることを要件とする。しかし、特許出願に係る発明のルートが違法で先使用に係る発明のルートが適法である場合は、ルートを同じくしているとはいえ、ルートは正当であるから先使用権が発生すると解する(出願発明自体が冒認され、その事実をしらない発明者や、その発明者から知得した者や、特許を受ける権利を譲渡した発明者等がした先使用)。
 ・実施又は準備をしていた実施形式に具現化された発明と同一性を失わない範囲であるため、同一性を失わない範囲で変更した実施形式にも及ぶと解する。形式の変更を一切認めないとするのは制度趣旨に反するからである。
 ・特許に係る発明が訂正された場合、その範囲で先使用権の客体が変動する。


特許法79条の2(特許権の移転の登録前の実施による通常実施権)

第一項


 第七十四条第一項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録の際現にその特許権、その特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有していた者であつて、その特許権の移転の登録前に、特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。

 ・特許が無効にされる場合には、譲受人又は実施権者は、発明の実施を継続できる。そのため、冒認等を理由に特許権が移転される場合に、真の権利者から権利行使され、発明の実施が継続できなくなることは妥当ではない。また、特許権が冒認等に係るものであることを第三者が公開情報から把握することは困難であるから、実施のために一定の投資をした者を保護する必要があるためである。

第二項


 当該特許権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。

特許法80条(無効審判の請求登録前の実施による通常実施権)

第一項

 次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許無効審判の請求の登録前に、特許が第百二十三条第一項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権を有する。

 ・事業設備の荒廃を防止するために設けられた規定である。そのため、対価が必要とされる。
 ・実用新案権は無審査なので中用権が認められない。
 ・無効理由を知らないことが必要である。
 ・許諾通常実施権、法定通常実施権は、実施の事業と共にする場合、承諾を得た場合、一般承継の場合に移転できる。
 ・本条の通常実施権が発生する時点においては、専用実施権が発生している場合があるので、専用実施権についても規定されている。
 ・同一の発明と考案がそれぞれ登録されている場合であって、特許権が無効となった場合、特許権者は通常実施権を取得しうる。一方、実用新案権が無効となった場合、実用新案権者は通常実施権を取得できない。実用新案法では無審査登録主義を採用しており、無効理由を有する蓋然性の高い実用新案権に中用権を認めるのは妥当でないからである。

第一号

 同一の発明についての二以上の特許のうち、その一を無効にした場合における原特許権者

 ・特29条1項、特39条違反が看過されて二重特許された場合に、無効となった特許権者に認められる通常実施権である。

第二号

 特許を無効にして同一の発明について正当権利者に特許をした場合における原特許権者

 ・先願が審査又は審判に係属中であるにも関らず誤って後願が特許となり、後願を無効したその後に先願に特許を付与した場合に、無効となった後願の特許権者に認められる通常実施権である。

第三号

 前二号に掲げる場合において、特許無効審判の請求の登録の際現にその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権又はその特許権若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者

 ・特許権者が実施をしていない場合等、専用実施権者又は通常実施権者のみに中用権が認められる場合もある。
 ・登録の有無に関わらず無効になった特許に係る特許権について法定通常実施権が認められる。


第二項

 当該特許権者又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。




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