よろしければ、ご意見、ご質問等をこちらへお寄せ下さい
独学の弁理士講座掲示板

メールはこちら



当サイトは
 リンクフリーです。

All Rights Reserved.




特許法71-75条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法71条

第一項

 特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。

 ・審判とは異なり、判定の効力は法的拘束力を有さない。
 ・判定においても口頭又は文書で審尋できる。
 ・自己の特許発明が他人の特許発明の技術的範囲に属するか否か判定を求めることができる。
 ・利用関係の有無、先使用権の有無を請求の趣旨とする判定はできない。なお、間接侵害については判定請求可能である。
 ・商標法の場合、商標権の効力について判定を求めることができる。従って、商標権の範囲について疑義のある場合の全てに適用があり、商標権の効力が及ばない範囲、抵触関係、先使用権、中用権、後用権等についても判定請求できる。
 ・意匠法の場合は、登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲である。
 ・判定には、技術的範囲に属することを求めるもの(積極的判定)と、属しないことを求めるもの(消極的判定)とがある。
 ・消滅した特許権についても判定請求可能である。消滅後に特許権者から損害賠償等を請求されることもあるからである。
 ・均等論の適用も含めて審理される。
 ・判定請求には利害関係は不要である。
 ・虚偽表示を回避する必要があるため、自問自答の判定請求もできる。
 ・審判とは異なり、判定の判断については不服申立が出来ず、一事不再理の適用もない。
 ・判定の請求人は、法律上の利害関係人である必要はない。


第二項

 特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。

 ・本項で規定されているため、特137条1項は、不準用である。

第三項

 第百三十一条第一項、第百三十一条の二第一項本文、第百三十二条第一項及び第二項、第百三十三条、第百三十三条の二、第百三十四条第一項、第三項及び第四項、第百三十五条、第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項、第百三十八条、第百三十九条(第六号を除く。)、第百四十条から第百四十四条まで、第百四十四条の二第一項及び第三項から第五項まで、第百四十五条第二項から第五項まで、第百四十六条、第百四十七条第一項及び第二項、第百五十条第一項から第五項まで、第百五十一条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項、第百五十七条並びに第百六十九条第三項、第四項及び第六項の規定は、第一項の判定に準用する。この場合において、第百三十五条中「審決」とあるのは「決定」と、第百四十五条第二項中「前項に規定する審判以外の審判」とあるのは「判定の審理」と、同条第五項ただし書中「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるとき」とあるのは「審判長が必要があると認めるとき」と、第百五十一条中「第百四十七条」とあるのは「第百四十七条第一項及び第二項」と、第百五十五条第一項中「審決が確定するまで」とあるのは「判定の謄本が送達されるまで」と読み替えるものとする。

 ・判定の求めは答弁書提出後でも取下可能である。
 ・判定でも職権探知主義を採用しており、判定時にも答弁書提出機会が与えられ、審理の併合が可能である。
 ・判定には参加できない。また、自己の共有に係る特許権であっても共同で判定を請求する必要はない。さらに、共有者の一人について手続の中断又は中止の原因があるときでも、全員には効力を生じない。
 ・審理終結通知は出ない。また、審判官が事件について不服を申立てられた査定に審査官として関与したときでも除斥できない。
 ・判定は原則書面審理であり、審判長が必要があると認めるときは非公開の口頭審理となる。また、口頭審理は審判長が必要と認めるときは非公開で行われるのであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるときに限られない。
 ・判定の費用は全て請求人の負担となる。
 ・判定は相手方の承諾なしに取下できる。
 ・不適法な判定請求は決定をもって却下される。
 ・特168条不準用なので、審決確定、又は訴訟手続が完結するまで手続を中止されること、審決が確定するまで訴訟手続が中止されること、特許権についての審判の請求の有無を裁判所に通知すること、特許庁長官が、裁判所に対し訴訟記録の写しの送付を求めること、はない。
 ・特147条3項は不準用である。
 ・155条2項及び同3項は不準用である。
 ・特150条6項は不準用である。
 ・特156条は不準用である。

第四項

 前項において読み替えて準用する第百三十五条の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 ・不適法な判定請求であって、補正ができない場合は却下処分となり、単独で不服申し立てができない旨を規定している。

特許法71条の2

第一項

 特許庁長官は、裁判所から特許発明の技術的範囲について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。

 ・@鑑定は3名の審判官により行われ、A合議体の合議は過半数により決し、B審判に関与することに故障がある審判官を他の審判官をもって補充すること、また、C3名の審判官のうち1名を審判長とすること、を明らかとした。
 ・特139条及び特141条は、不準用である。


第二項

 第百三十六条第一項及び第二項、第百三十七条第二項並びに第百三十八条の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。

特許法72条(他人の特許発明等との関係)

 特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。

 ・先願に係る他人の特許権等と利用又は抵触する後願特許権者が自由に実施できるとすると、先願権利者と後願特許権者との保護のバランスを失するため、専用権相互間の重複を先願優位の原則に基づいて調整したものである。
 ・例えば、合金Xを生産する機械の発明に対する当該機械によって合金Yを生産する方法、自動車タイヤの凹凸の特許権に対する自動車タイヤの凹凸の意匠権、物品の形状自体に関する発明に対する物品自体の形状を表示する立体商標等である。
 ・権利同士の関係においては抵触と表現する。なお、商標権との利用関係はない。
 ・利用とは、自己の特許発明を実施すると他人の特許発明などを全部実施するが、その逆は成立しないことをいう。抵触とは、2つの権利が重複し、どちらの権利を実施しても他方の権利内容を全部実施することになる関係をいう。
 ・ダブルパテントの場合も本規定を適用すべきと解する。利用発明にすら自由実施を認めていないからである。
 ・共有者の一人がした利用発明には本規定は適用されないと解する。共有に係る特許発明は本来自由に実施可能だからである。
 ・利用関係において侵害を問われた場合、対象となる他人の権利に対応する商品を適法に購入して利用するという措置を取りうる。


特許法73条(共有に係る特許権)

第一項

 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。

 ・特許発明の実施は有体物の使用とは異なり、一人が使用したために他人が使用できなくなるものではなく、しかも投下する資本と特許発明を実施する技術者いかんによって効果が著しく違い他の共有者の持分の経済的価値も変動をきたすからである。
 ・一般承継は本条の譲渡に含まれないので、同意を得ずに一般承継可能である。
 ・同意を得ない持分の放棄は可能である。
 ・各共有者は、自己の持分権に基づいて、単独で侵害差止又は損害賠償の訴訟を提起できる。
 ・同意は対等関係の場合に用いる。承諾は上下関係の場合に用いる。


第二項

 特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。

 ・専用実施権については特77条5項で本項を準用しているが、通常実施権については特94条6項で本条1項のみを準用しているので、共有に係る際の実施に関して同意を要する旨の「契約での別段の定め」をすることができない。

第三項

 特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。

特許法74条(特許権の移転の特例)

第一項

 特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる。

 ・冒認が生じた場合、真の権利者が新たな特許出願をしようとしても、出願公開等から6月以内という期間制限があるため、特許を受けられない場合がある。また、真の権利者が特許権の移転を望んでも、出願していなかった場合は、移転登録手続請求が認められない可能性が高い。さらに、諸外国の制度との調和が望れる。そのため、移転請求制度を導入した。
 ・真の権利者は、冒認出願等を通じて発明が公開されることにより産業の発達に寄与し、それは誰が出願したかによって変わるものではない。そのため、真の権利者が自ら出願していたか否かに関わらず、特許権の移転を請求できることとした。
 ・冒認者等が特許権を第三者に譲渡していた場合には、当該第三者に対しても移転を請求できる。
 ・移転を請求できる範囲は、真の権利者が有する特許を受ける権利の持分に応じた範囲となる。


第二項

 前項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録があつたときは、その特許権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。当該特許権に係る発明についての第六十五条第一項又は第百八十四条の十第一項の規定による請求権についても、同様とする。

 ・補償金請求権についても、特許権と同様に扱うこととした。

第三項

 共有に係る特許権について第一項の規定による請求に基づきその持分を移転する場合においては、前条第一項の規定は、適用しない。

 ・甲と乙が共同で発明した後、甲に無断で乙と丙が出願して特許権を取得した場合、甲の丙に対する特許権の持分の移転請求は、乙の同意がなくとも認められる。

特許法75条(削除)





 参考書・基本書  試験対策・勉強法  改正・判例解説  短答試験  過去問  論文試験  選択科目  選択科目の免除  口述試験  転職  リンク  メールはこちら





 「独学の弁理士講座」TOPへ戻る
inserted by FC2 system