特許法67-67条の4
初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
以下、
太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。
特許法67条(存続期間)
第一項
特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
・パリ優先の場合は日本への出願日、国内優先の場合は後の出願日から20年である。
・分割、変更出願の場合は、親出願の日から20年である。
・規定上は、満了ではなく、「終了」である。権利の存続期間の終期を意味する。なお、「満了」は、規定期間が事故なく終わることを意味する。
第二項
特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。
・特許権が存続しても権利の専有による利益を享受できず、特許権が侵食されているという問題を解決するためである。
・一日でも延長登録される。
・薬事法の承認及び農薬取締法の登録が該当する。なお、対象となるのは医薬品、医薬部外品、農薬、動物用医薬品である。
・特許発明の実施についてとあるので、特許後の実施不能期間について延長が認められる。特許前の実施不能期間を特許後に延長可能とすると、延長制度が適用されない他の分野との公平性に欠くからである。
・1の処分に対応する特許権が複数ある場合は、延長登録は個別に認められる。また、1の特許権に対する処分が複数ある場合も、それぞれの処分につき延長登録が認められる。なお、薬事法の承認の場合、物(有効成分)、用途(効能・効果)、剤型、製法等を細かく特定して承認を受ける必要があり、物又は用途が異なれば延長登録が別個に認められる。物及び用途が同じであれば剤型、製法等が異なっても別個には認められない。
・実用新案法には延長登録制度はない。
・薬事法14条1項による製造販売の承認(後行処分)に先行して、後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくする先行医薬品について先行処分がされている場合であっても、先行医薬品が延長登録出願に係る特許発明の技術的範囲に属しないときは、延長登録を受け得る。
特許法67条の2(存続期間の延長登録)
第一項
特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
・延長登録出願は請求項毎に行うことはできず、延長登録無効審判も請求項毎に審判請求することはできない。よって、処分の対象となった請求項を記載する必要はない。
・複数の処分をまとめて受けても複数の処分に基づく1の延長登録出願は認められない(一処分一延長登録の原則)。
第一号
出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
第二号
特許番号
第三号
延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)
・実施できなかった期間より短くとも良い。
第四号
前条第二項の政令で定める処分の内容
第二項
前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない。
・資料及び願書の補正は、事件が特許庁に係属している限りできる(拒絶査定が確定するまで又は延長登録がされるまで)。なお、資料は訂正審判の対象ではないので、延長登録後の資料の補正はできない。
第三項
特許権の存続期間の延長登録の出願は、前条第二項の政令で定める処分を受けた日から政令で定める期間内にしなければならない。ただし、同条第一項に規定する特許権の存続期間の満了後は、することができない。
・政令で定める期間は、現在は3月であるが、3月を経過した後であっても、不責事由があれば6月の間は追完できる。また、不責事由がある場合は、最大9月提出期間を延長できる。
・本号違反は却下処分となる。
・存続期間満了後は延長登録出願できない。従って、延長期間内に延長登録出願をすることは出来ない。一旦消滅した特許権を復活させることは法的安定性を著しく損なうからである。なお、満了後に出願された場合は却下処分となる。
第四項
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない。
・本項違反は、延長拒絶査定の理由となり、延長無効理由となる。
第五項
特許権の存続期間の延長登録の出願があつたときは、存続期間は、延長されたものとみなす。ただし、その出願について拒絶をすべき旨の査定が確定し、又は特許権の存続期間を延長した旨の登録があつたときは、この限りでない。
第六項
特許権の存続期間の延長登録の出願があつたときは、第一項各号に掲げる事項並びにその出願の番号及び年月日を特許公報に掲載しなければならない。
・延長される可能性があることを、第三者に知らせるためである。
・延長の理由を記載した資料は掲載されない。
特許法67条の2の2
特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、第六十七条第一項に規定する特許権の存続期間の満了前六月の前日までに同条第二項の政令で定める処分を受けることができないと見込まれるときは、次に掲げる事項を記載した書面をその日までに特許庁長官に提出しなければならない。
・H12/4/6満了の場合は、H11/10/6が期間の末日(6月前はH11/10/7)となる。つまり、満了日の暦上の6ヶ月前に手続きをすれば良い。11/9に満了する場合は、11/9が起算日であり(初日算入)、5/9が期間の末日、5/10が満了日前6月に該当する(暦上は翌日に当たるが逆に考える)。なお、この場合5/10(満了日前6月の日)は延長登録できない。
・延長期間は記載不要である。
第一号
出願をしようとする者の氏名又は名称及び住所又は居所
第二号
特許番号
第三号
第六十七条第二項の政令で定める処分
第二項
前項の規定により提出すべき書面を提出しないときは、第六十七条第一項に規定する特許権の存続期間の満了前六月以後に特許権の存続期間の延長登録の出願をすることができない。
・本項違反は、補正ができないので却下される。
第三項
第一項に規定する書面が提出されたときは、同項各号に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
・延長登録出願の公報掲載の場合は、延長登録出願の番号及び年月日も掲載される。
特許法67条の3
第一項
審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
・延長を求める期間が5年を越えている場合でも拒絶理由は通知されず、補正命令が出される。
・不服の場合は特121条の拒絶査定不服審判を請求できる。
・請求項が複数ある場合は、いずれか1の請求項でも延長登録要件に該当するものがあれば延長登録の査定を行い、拒絶の査定は全ての請求項が拒絶理由に該当する場合に限り行われる。
・拒絶理由は特125条の2第1項の無効理由と同じである。
第一号
その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。
・特許権の範囲と処分を受けることによって禁止が解除された範囲に重複している部分がない場合は、必要であったとは認められないため拒絶査定となる。
第二号
その特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは通常実施権を有する者が第六十七条第二項の政令で定める処分を受けていないとき。
・通常実施権者が薬事法上の承認等の処分を受けている場合には、それを根拠に特許権の存続期間の延長登録出願をすることができる。
第三号
その延長を求める期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を超えているとき。
・薬事法の承認待ちによる実施不能期間は、承認が到達した日の前日に満了する。
・薬事法の承認待ちによる実施不能期間は、試験開始日又は設定登録日の遅いほうが初日となる。
第四号
その出願をした者が当該特許権者でないとき。
・実施権者が処分を受けた場合であっても、延長登録出願できるのは特許権者のみである。
第五号
その出願が第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていないとき。
・共同出願違反の規定である。
第二項
審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき旨の査定をしなければならない。
第三項
特許権の存続期間の延長登録をすべき旨の査定又は審決があつたときは、特許権の存続期間を延長した旨の登録をする。
・延長登録は特許庁長官が行う。
・特許料の納付は延長登録の条件ではない。
第四項
前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
・延長登録出願の公報掲載の場合は、延長登録出願の番号及び年月日も掲載される。
第一号
特許権者の氏名又は名称及び住所又は居所
・特67条の2では、出願人の氏名又は名称及び住所又は居所、特67条の2の2では、出願をしようとする者の氏名又は名称及び住所又は居所である。
第二号
特許番号
・特67条の2、特67条の2の2でも掲載される。
第三号
特許権の存続期間の延長登録の出願の番号及び年月日
・特67条の2、特67条の2の2では掲載されない。
第四号
延長登録の年月日
・特67条の2、特67条の2の2では掲載されない。
第五号
延長の期間
・特67条の2では、延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)として掲載される。特67条の2の2では掲載されない。
第六号
第六十七条第二項の政令で定める処分の内容
・特67条の2、特67条の2の2でも掲載される。
特許法67条の4
第四十七条第一項、第四十八条、第五十条及び第五十二条の規定は、特許権の存続期間の延長登録の出願の審査について準用する。
・特48条の6は不順用である。また、拒絶理由が明確で限られているため、特54条も不準用である。
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