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特許法36条の2

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法36条の2

第一項

 特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。

 ・従来、第一国出願から一年ぎりぎりで出願する場合は、短期間で翻訳文を作成しなければならず、翻訳文に誤りがあった場合でも第一国出願の記載から誤訳を訂正することができなかった。そのため、本制度が設けられた。
 ・外国語書面出願は、翻訳文提出前であっても出願審査請求ができる。
 ・実用新案法では採用されていない。


第二項

 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあつては、本文の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。

 ・パリ条約による優先権主張を伴う出願の場合には、第1国出願から我が国への第2国出願までに1年間の優先権期間が与えられているために、最大1年2月を日本語の翻訳文作成に充てることができる。一方、外国語書面出願の場合は翻訳文作成期間が2月しかなく、翻訳負担が大きかった。また、外国語書面出願に基づき国内優先権を主張して新たな外国語書面出願を行う場合、先の出願についても2月以内に翻訳文を提出しておかないと、取り下げ擬制されてしまう。そのため、2月以上経過後に国内優先権を主張して後の出願を行うことができないという問題があった。そこで、出願公開前に必要な作業期間が4月程度であることを考慮し、翻訳文を優先日から1年2月以内に提出することとした。これにより、外国語書面出願に基づいて国内優先権を主張して新たな外国語書面出願を行う場合であっても、先の出願の翻訳文を作成する必要がないので、不要な翻訳文を省略できる。
 ・分割、変更、実用新案登録に基づく特許出願の場合は、現実の出願日から2月以内であれば翻訳文を提出できる。


第三項

 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。

 ・図面に説明文が無かった場合でも、図面の翻訳文を提出しなければ図面はなかったものとみなされる(外国語特許出願の場合、図面の翻訳文(説明を除く)の提出は不要であり、図面の説明の翻訳文が未提出の場合でも説明がないものとして扱われるだけである。)。但し、図面は誤訳訂正書で追加提出可能である。
 ・外国語要約書面が無かった場合は補正命令の対象となる。


第四項

 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなつた日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

 ・ユーザーの利便性の向上を図り、知財の保護及び活用を促進するためである。
 ・「正当な理由」は、「その責めに帰することができない理由」に比べて緩やかな要件である。
 ・正当な理由があるときでも取下擬制されることがある。審査請求期間に関する救済規定がないためである。
 ・出願人等(代理人を含む)が手続をするために状況に応じて必要とされる相応の措置を講じていた場合に、何らかの理由により期間徒過に至ったときには正当な理由がある。なお、法令の不知や誤解釈による期間徒過は、相応の措置を講じていたとはいえない。また、期間徒過の原因となった事象の発生前及び発生後に講じた措置がいずれも相応の措置といえる場合以外は救済が認められない。出願人等が複数である場合は、原則として全員が相応の措置を講じている必要がある。理由がなくなった日とは、手続をすることができない状態から脱した日をいい、手続のための書面を特許庁に提出できる状態になった日が該当する。例えば、期限が誤りであったことを知った日、翻訳文が完成した日等である。
 ・救済手続期間内に手続をするとともに、手続をすることができなかった理由等を記載した回復理由書と、回復理由書に記載した事項を裏付ける証拠書類とを提出しなければならない。正当な理由があっても、救済手続期間後の手続は許容されない。救済が認められなかった場合には、理由を記載した却下理由通知書が送付され、弁明書提出機会(特18条の2第2項)が与えられる。不服がある場合には、特許庁長官に対して行政不服審査法に基づく異議申立てを行うことができる。
 ・救済が認められない事例
 予測できる場合、例えば、計画的な入院による代理人の不在、新社屋建設のための旧社屋の取り壊し、出願人等が法人の場合における定年退職による手続担当者の不在、計画停電によるオンライン手続不能等であるとき。
 人為的なミス(書類の紛失、システムへのデータの入力ミス、連絡ミス又は事実誤認等)であるとき。
 適切に稼働することに疑問のあるシステムを選定したようなとき。
 新たなシステムの導入までの期間が極端に短いとき。
 期間管理を行うシステムへのデータの誤入力により誤った期限が告知された場合であって、データの誤入力を回避するための実質的な確認(二重チェック等)をしていなかったとき。
 誤った宛先にファクシミリを送信してしまい、出願人から代理人に対する手続実行に係る依頼が伝わらなかった場合であって、誤送信を回避するため実質的な確認(送信記録チェック等)をしていなかったとき。
 出願人等である企業の知財部の手続担当者が突然の病気等により手続をすることができなくなった場合であって、他の知財部員がその事実を知り得、所定の期間内に手続をするための措置を講ずることが可能な状況であったにもかかわらず、何ら措置を講じていなかったとき。
 期間管理用のシステムの不具合等により誤った期限が告知された場合であって、そのことを事前に知り得、所定の期間内に手続をするための措置を講ずることが可能な状況であったにもかかわらず、何ら措置を講じていなかったとき。 天災地変による被害に遭った場合であって、その後手続をすることができる状態に回復し、所定の期間内に手続をするための措置を講ずることが可能な状況であったにもかかわらず、何ら措置を講じていなかったとき。
 オンラインによる手続をすることができない場合であって、代替手段(郵送等)によれば所定の期間内に手続をすることが可能な状況であったにもかかわらず、何ら措置を講じていなかったとき。
 翻訳文の作成を担当する者が期限の一週間前に不在になった場合であって、その後代替者がその作成作業が可能になった日から翻訳文の完成までの期間が一週間を超えていたとき。
 高度な専門知識を必要とする業務を一時的に補助者に依頼していたとき。
 補助者に十分な指導を行うことなく業務を任せていたとき。
 補助者に対し、口頭で曖昧な指示を出したために事実誤認が生じたとき。
 期間管理業務の一切を補助者に任せきりにしており、出願人等自らは一切その内容を確認していないとき。
 期限前に補助者によるミスがあったことを知り得、期間内に手続をするための措置を講ずることが可能な状況にあったにもかかわらず、何ら措置を講じていなかったとき。
 ・救済が認められる可能性のある事例
 期間徒過の原因となった事象が予測できない場合、例えば、突発的な入院による代理人の不在、出願人等が法人の場合における事故等による手続担当者の不在、地震による社屋の倒壊、雷による停電のためのオンライン手続不能、システム不具合による誤った期限の告知、システムへのデータの入力ミスによる誤った期限の告知等であるとき。
 システムの利用者である出願人等が、期間徒過の原因となったシステムの不具合又はシステムの構造を想定し得ないとき。
 期間管理を行うシステムへのデータの誤入力により誤った期限が告知された場合であって、データの誤入力を回避するための実質的な確認をしていたにもかかわらず、誤入力を回避することができない特殊な事情があったとき。
 出願人等が想定し得ないシステムの構造上の問題により、誤った期限が告知された場合であって、その事実を知った日(知るべきであった日を含む)が期間徒過後であったとき。
 天災地変による被害に遭った場合であって、その影響により、所定の期間内に手続をすることができなかったとき。
 出願人等が家族経営の小規模の会社の場合であって、家族の一員であり、かつ知財関係の業務を担当する者の突然の死亡により、葬儀の準備等の混乱期の中で、当該業務に不慣れな新担当者が、特許庁に送るべき書類を誤って異なる宛先に対して送付してしまったとき。
 出願人等が突然の病気等により手続をすることができなくなった場合であって、他に出願人等もなく、所定の期間内に代替者を手配することさえも困難であったとき。
 期間管理用のシステムの不具合等により誤った期限が告知された場合であって、その事実を知った日(知るべきであった日を含む。)には、既に当該手続の所定の期間が徒過していたとき。
 天災地変による被害に遭った場合であって、その後手続をすることができる状態に回復した日には、既に当該手続の所定の期間が徒過していたとき。
 システムへのデータ入力及びその確認業務に関し、出願人等は、適切な補助者を2名選任し、彼らに対し十分な説明を行っており、通常滞りなく業務が行われていた。ところがある日、入力業務を行っていた補助者が、一連の作業後に突然の病気で倒れたことにより、その混乱に際して、確認業務を行っていた補助者が入力ミスを見過ごしてしまったとき。
 代理人による適切な指示の下、その代理人の補助者は、複数の出願人に対し、Eメールによる期限の告知を通常滞りなく行っていた。ところがある日、補助者の錯誤により、出願人Aに対し、出願人Bの情報を送信してしまった。出願人Aは別の出願人の情報(出願人Bの情報)が書かれているとは気づかずに、自分の出願に係る情報だと思い込んでおり、送信した補助者自身も、送信記録から正しい宛先(出願人A)に情報が送信されていることから適切に期限告知を行ったものと信じ込み、代理人に対しその旨報告していたことから、送信の誤りに気づいたのは期間徒過後であったとき。


第四項

 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

第六項

 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。

 ・特許権の範囲が外国語書面で確定されるとすると、第三者が常に外国語書面にあたることになり、監視負担が極めて大きくなるためである。また、外国語書面について審査するとすると、迅速な審査に支障をきたすためである。
 ・翻訳文が審査対象となり、翻訳文に基づき補償金請求権、特許権が発生する。





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