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特許法36-40条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法36条(特許出願)

第一項

 特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

 ・代理人により出願する場合、代表者の氏名は不要である。なお、代理人によらない場合は必要である。
 ・願書作成時に確定できないので、提出日の記載は不要である。
 ・願書に発明の名称を記載する必要はない。


第一号

 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所

第二号

 発明者の氏名及び住所又は居所

第二項

 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。

 ・要約書には特許公報に掲載することが適当な図面の番号を記載しなければならない。

第三項

 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

第一号

 発明の名称

 ・願書に発明の名称は不要である。

第二号

 図面の簡単な説明

第三号

 発明の詳細な説明

 ・明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題、その解決手段、その他当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載しなければならない。また、明細書には、発明の名称、図面の簡単な説明、発明の詳細な説明(発明が解決しようとする課題、その解決手段、その他)を記載しなければならない。

第四項

 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

第一号

 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。

 ・本号違反は、拒絶・無効理由となる。

第二号

 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。

 ・出願人の有する先行技術情報を有効活用して、審査の迅速を図るためである。また、信義誠実の原則の下、出願人による積極的な情報開示を促すためである。
 ・本項違反の場合、特48条の7の通知後に拒絶理由となる。直ちに拒絶理由とすると、本号違反の出願全てに拒絶理由通知をする必要が生じ、却って審査の迅速に反するからである。なお、先行技術文献開示義務違反を理由とする無効審判が多発する恐れがあるので、また、発明自体に実態的な瑕疵がなく形式的瑕疵に過ぎないため、無効理由とはならない。


第五項

 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。

 ・出願人自らが考える発明特定事項の全てを記載する必要がある。
 ・審査官が特許発明を認定し、必要と認められる事項が記載されているか否か判断するのは適当ではないので、拒絶及び無効理由とはされていない。
 ・特許出願に係る発明の要旨は、特許請求の範囲の記載に基づいて規定されるべきであり、明細書の記載に基づいて認定することはできない。
 ・特許出願における請求の範囲の一部放棄は認められない。
 ・技術の多様性に応じて発明の多面的保護に対応した記載を可能とした。


第六項

 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

 ・拒絶、無効理由となる(4号違反は無効理由ではない)。

第一号

 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。

 ・請求の範囲が詳細な説明に記載されていないと、公開しない発明について権利請求することとなるためである。

第二号

 特許を受けようとする発明が明確であること。

 ・特許請求の範囲の記載の明確性を担保するためである。
 ・特許請求の範囲に記載された医薬発明の有効成分が機能・特性等により特定されている場合であって、出願時の技術常識を考慮しても、当該有効成分が具体的にいかなるものであるのかを想定することができない場合は、当該医薬発明の範囲が不明確となる。例えば、成分Aを有効成分として含有する制吐剤が特許請求されているが、発明の詳細な説明には、成分Aが制吐作用を有することを裏付ける薬理試験方法、薬理データ等についての記載がなく、しかも、成分Aが制吐剤として有効であることが出願時の技術常識からも推認できない場合等である。


第三号

 請求項ごとの記載が簡潔であること。

 ・権利解釈にあたっての基礎となるものであるから、第三者にとって理解しやすいよう簡潔な記載とするためである。例えば、請求項に必要以上に重複した記載があり冗長であるときは、本号違反として拒絶理由となる。

第四号

 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。

 ・発明自体に実態的な瑕疵がなく形式的瑕疵に過ぎないため、本号違反は無効理由ではない。

第七項

 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

 ・本項違反は、拒絶・無効理由ではない。
 ・特許請求の範囲の概要のみを記載するのではない。


特許法36条の2

第一項

 特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。

 ・従来、第一国出願から一年ぎりぎりで出願する場合は、短期間で翻訳文を作成しなければならず、翻訳文に誤りがあった場合でも第一国出願の記載から誤訳を訂正することができなかった。そのため、本制度が設けられた。
 ・外国語書面出願は、翻訳文提出前であっても出願審査請求ができる。
 ・実用新案法では採用されていない。


第二項

 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあつては、本文の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。

 ・パリ条約による優先権主張を伴う出願の場合には、第1国出願から我が国への第2国出願までに1年間の優先権期間が与えられているために、最大1年2月を日本語の翻訳文作成に充てることができる。一方、外国語書面出願の場合は翻訳文作成期間が2月しかなく、翻訳負担が大きかった。また、外国語書面出願に基づき国内優先権を主張して新たな外国語書面出願を行う場合、先の出願についても2月以内に翻訳文を提出しておかないと、取り下げ擬制されてしまう。そのため、2月以上経過後に国内優先権を主張して後の出願を行うことができないという問題があった。そこで、出願公開前に必要な作業期間が4月程度であることを考慮し、翻訳文を優先日から1年2月以内に提出することとした。これにより、外国語書面出願に基づいて国内優先権を主張して新たな外国語書面出願を行う場合であっても、先の出願の翻訳文を作成する必要がないので、不要な翻訳文を省略できる。
 ・分割、変更、実用新案登録に基づく特許出願の場合は、現実の出願日から2月以内であれば翻訳文を提出できる。


第三項

 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。

 ・図面に説明文が無かった場合でも、図面の翻訳文を提出しなければ図面はなかったものとみなされる(外国語特許出願の場合、図面の翻訳文(説明を除く)の提出は不要であり、図面の説明の翻訳文が未提出の場合でも説明がないものとして扱われるだけである。)。但し、図面は誤訳訂正書で追加提出可能である。
 ・外国語要約書面が無かった場合は補正命令の対象となる。


第四項

 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。

 ・特許権の範囲が外国語書面で確定されるとすると、第三者が常に外国語書面にあたることになり、監視負担が極めて大きくなるためである。また、外国語書面について審査するとすると、迅速な審査に支障をきたすためである。
 ・翻訳文が審査対象となり、翻訳文に基づき補償金請求権、特許権が発生する。


特許法37条

 二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。

 ・特定発明は一つだけである。
 ・送信機と受信機、最終生成物と最終生成物の製造にのみ使用される中間体、物質とその特別な保存方法とその特別な保存器具、新規物質とその触媒、新規物質とそれを製造する微生物は単一性を満たす。
 ・新規物質イ、ハがある場合に、両者が産業上の利用分野、主要部が同一であっても、同一又は対応する特別な技術的特徴を有していない場合は、単一性を満たさない。
 ・出願動向の変化に応じ、単一性の要件を満たす範囲を弾力的に改正させるために省令委任とした。


特許法38条(共同出願)

 特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない。

 ・共同発明であっても、特許を受ける権利を譲渡すれば共同出願しなくともよい。
 ・出願の分割も共同でなければできない。

特許法38条の2(特許出願の放棄又は取下げ)

 特許出願人は、その特許出願について仮専用実施権又は登録した仮通常実施権を有する者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許出願を放棄し、又は取り下げることができる。

 ・特許出願人は、仮専用実施権者又は登録した仮通常実施権者の承諾を得た場合に限り、その特許出願に基づく優先権主張出願、変更出願をすることができる。
 ・PCTに基づく国際願については、承諾を不要とする。受理官庁が日本以外の場合もあり、条約に付加的要件を課すことができないからである。
 ・仮専用実施権者又は仮通常実施権者も審査請求できるので、未審査請求によるみなし取下については、特段の措置が無い。

特許法39条(先願)

第一項

 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。

 ・新規事項又は原文新規事項(外国語書面出願の場合)を含む請求項は、先願の地位を有しない。
 ・後願の請求項に係る発明と、先願の請求項に係る発明との発明特定事項の一致点及び相違点を認定し、相違点がない場合は、同一と判断される。また、相違点がある場合でも、@周知慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏しない発明、A下位概念である先願の発明特定事項を上位概念で表したに過ぎない発明、B単なるカテゴリー表現上の相違しかない発明、等の場合は、実質的に同一と判断される。なお、特許請求の範囲が全部一致する場合のみならず、発明特定事項に選択肢を有する発明の一部が重複する場合にも、同一発明と判断される。


第二項

 同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。

 ・時間の先後は問わない。手続きが極めて煩雑になるためである。
 ・出願人は、抽選で他人が特許権を取得する危険性のある制度よりも、むしろいずれにも特許されないほうが良いと考えることもあるので、くじ引きを採用しなかった。
 ・二以上の同日出願において一方が既に登録されている場合は、協議不能のため訂正又は補正無く他方が登録されることはない。一方が他の拒絶理由によって拒絶された場合は、重複特許の問題が生じないので本条の対象とはならない。


第三項

 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。

 ・意匠、商標とは先後願を考慮しない。権利対象が異なるためである。

第四項

 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第四十四条第二項(第四十六条第五項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。

 ・実用新案は協議の結果によらず無効理由を備えたまま登録可能である。
 ・本項かっこ書きは、実用新案登録に基づく特許出願及び該特許出願の分割、変更出願は、放棄された元の実用新案登録に係る考案との間では先後願を判断しない旨を規定している。

第五項

 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第二項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。

 ・協議不調不能による拒絶の場合は、先願の地位を有する。
 ・従来は、出願公開前に放棄又は拒絶された場合も先願の地位を保持しており、その後の第三者の権利化を妨げることができた。しかし、開示されない出願にはいかなる権利(先願の地位)も与えるべきではないので、H10年改正により拒絶・放棄も先願の地位を取得しないものとした。
 ・無効は含まれていない。


第六項

 発明者又は考案者でない者であつて特許を受ける権利又は実用新案登録を受ける権利を承継しないものがした特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から第四項までの規定の適用については、特許出願又は実用新案登録出願でないものとみなす。

 ・冒認出願は、真の発明者とでも第三者とでも先願の地位を有しない。
 ・共同出願違反が先願の地位を有するか否かは論点であるが、通説では先願の地位を有しない。
 ・冒認出願が協議不調不能により拒絶されても先願とはならない。また、看過されて登録されても先願の地位を有しない。


第七項

 特許庁長官は、第二項又は第四項の場合は、相当の期間を指定して、第二項又は第四項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じなければならない。

 ・審査官ではない。なお、審査官が行う行為は、文献公知発明に係る情報の記載についての通知、既にされた拒絶理由と同一である旨の通知、拒絶理由通知、査定、補正却下、前置報告である。
 ・協議の結果を届ける他に、一方の出願の取下又は放棄、若しくは特許請求の範囲の補正により対応することもできる。


第八項

 特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第二項又は第四項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる。

 ・届け出が無くとも、出願の取下、放棄、冒認であった場合等は拒絶とはならない。

特許法40条(削除)





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