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特許法34条の2-34条の3

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

特許法34条の2(仮専用実施権)

第一項

 特許を受ける権利を有する者は、その特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、その特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、仮専用実施権を設定することができる。

 ・従来は特許権成立前のライセンスに関する規定がなく、特許を受ける権利が第三者に移転した場合に新権利者に対抗できなかった。そこで、H20年改正により、特許出願段階におけるライセンスに係る特許法上の権利として、新たに仮専用実施権及びその登録制度を設けた。
 ・「特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権」とあるのは、特許を受ける権利には独占排他性が無く、仮専用実施権は特許権の成立により自動的に専用実施権となる権利なので、将来成立すべき特許権を対象とするのが適当だからである。
 ・仮専用実施権の設定は、特許出願の願書に最初に添付した明細書等の範囲内ですることができる。なお、外国語書面出願にあっては、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲も含まれる。
 ・仮専用実施権を設定することができるのは、特許出願後に限られ、特許出願前は設定できない。
 ・補正により特許請求の範囲に記載された発明についても、仮専用実施権を設定できる。
 ・実用新案登録出願の設定登録までは短期間であり、補償金請求権も存在しないので、実用新案法には仮専用実施権制度が設けられていない。

第二項

 仮専用実施権に係る特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許権について、当該仮専用実施権の設定行為で定めた範囲内において、専用実施権が設定されたものとみなす。

 ・設定されたとみなされる専用実施権の範囲は、特許請求の範囲を外延とし、仮専用実施権の設定行為で定めた範囲によって画される。
 ・「設定行為で定めた範囲内において」とあるように、設定されたとみなされる専用実施権は、設定行為に基づくものである。
 ・特許権の設定登録前においては、仮専用実施権は独占排他権ではないので、設定行為で定めた範囲内で業として発明を実施できるにすぎない。つまり、独占排他性はなく、第三者の実施を排除することもできない。
 ・特許権の設定登録と同時に、専用実施権が発生し、特許庁長官が職権で専用実施権の登録をする。

第三項

 仮専用実施権は、その特許出願に係る発明の実施の事業とともにする場合、特許を受ける権利を有する者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

第四項

 仮専用実施権者は、特許を受ける権利を有する者の承諾を得た場合に限り、その仮専用実施権に基づいて取得すべき専用実施権について、他人に仮通常実施権を許諾することができる。

第五項

 仮専用実施権に係る特許出願について、第四十四条第一項の規定による特許出願の分割があつたときは、当該特許出願の分割に係る新たな特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、当該仮専用実施権の設定行為で定めた範囲内において、仮専用実施権が設定されたものとみなす。ただし、当該設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

 ・仮専用実施権の登録後、仮専用実施権に係る特許出願について補正がなされた場合でも、その設定された範囲内において仮専用実施権の効力は有効である。

第六項

 仮専用実施権は、その特許出願について特許権の設定の登録があつたとき、その特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき又はその特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、消滅する。

 ・仮専用実施権の存続期間満了、ライセンス契約の解除、混同によっても消滅する。
 ・特許出願人は、仮専用実施権者の承諾がなければ、特許出願を放棄又は取下できない。
 ・仮専用実施権が遡及的に消滅するのではなく、将来に向かって消滅する。

第七項

 仮専用実施権者は、第四項又は次条第六項本文の規定による仮通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その仮専用実施権を放棄することができる。

 ・特34条の2第4項の規定による仮通常実施権者とは、仮専用実施権暑が仮通常実施権を許諾した場合であり、特34条の2第7項本文の規定による仮通常実施権者とは、分割に係る新たな特許出願が設定登録がされたときに発生する専用実施権について、仮通常実施権が許諾されたものとみなされた場合である。

第八項

 第三十三条第二項から第四項までの規定は、仮専用実施権に準用する。

 ・他の共有者の持分価値が変動するおそれがあるからである。
 ・仮専用実施権が共有に係る場合、共有者の同意を得なければ他人に仮通常実施権を許諾することができない。


特許法34条の3(仮通常実施権)

第一項

 特許を受ける権利を有する者は、その特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、その特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、他人に仮通常実施権を許諾することができる。

 ・従来は特許権成立前のライセンスに関する規定がなく、特許を受ける権利が第三者に移転された場合に新権利者に対抗できなかった。また、特許を受ける権利を有する者が破産した場合に、破産管財人によりライセンス契約を解除されるおそれがあった。そこで、H20年改正により、特許出願段階におけるライセンスに係る特許法上の権利として、新たに仮通常実施権制度を設けた。
 ・仮通常実施権の許諾は、特許出願の願書に最初に添付した明細書等の範囲内においてすることができる。なお、外国語書面出願にあっては、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲も含まれる。
 ・仮通常実施権を許諾することができるのは、特許出願後に限られ、特許出願前は許諾できない。
 ・補正により特許請求の範囲に記載された発明についても、仮通常実施権を設定できる。

第二項

 前項の規定による仮通常実施権に係る特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、当該仮通常実施権を有する者に対し、その特許権について、当該仮通常実施権の設定行為で定めた範囲内において、通常実施権が許諾されたものとみなす。

 ・仮通常実施権を許諾した者と特許権者が異なる場合であっても、仮通常実施権者に対して通常実施権が許諾されたものとみなす。
 ・仮専用実施権とは異なり、特許権の設定の登録により通常実施権が許諾されたものとみなされる。
 ・特許権の設定登録と同時に通常実施権が発生する。
 ・仮通常実施権は、設定行為で定めた範囲内で発明を実施できる権利であり、独占排他性はない。

第三項

 前条第二項の規定により、同条第四項の規定による仮通常実施権に係る仮専用実施権について専用実施権が設定されたものとみなされたときは、当該仮通常実施権を有する者に対し、その専用実施権について、当該仮通常実施権の設定行為で定めた範囲内において、通常実施権が許諾されたものとみなす。

 ・仮通常実施権を許諾した者と専用実施権者が異なる場合であっても、仮通常実施権者に対して通常実施権が許諾されたものとみなす。
 ・「前条2項の規定により専用実施権が設定されたものとみなされたとき」とは、仮専用実施権が設定された特許出願が設定登録され、専用実施権が設定されたものとみなされたときとの意味である。
 ・「同条4項の規定による仮通常実施権」とは、将来発生する専用実施権について仮専用実施権者が許諾した仮通常実施権との意味である。

第四項

 仮通常実施権は、その特許出願に係る発明の実施の事業とともにする場合、特許を受ける権利を有する者(仮専用実施権に基づいて取得すべき専用実施権についての仮通常実施権にあつては、特許を受ける権利を有する者及び仮専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

第五項

 第一項若しくは前条第四項又は実用新案法第四条の二第一項の規定による仮通常実施権に係る第四十一条第一項の先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(当該先の出願が第三十六条の二第二項の外国語書面出願である場合にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明に基づいて第四十一条第一項の規定による優先権の主張があつたときは、当該仮通常実施権を有する者に対し、当該優先権の主張を伴う特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、当該仮通常実施権の設定行為で定めた範囲内において、仮通常実施権が許諾されたものとみなす。ただし、当該設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

 ・仮通常実施権の許諾されている特許出願等に基づいて国内優先権主張がされたときは、先の出願についての設定行為で定めた範囲内において仮通常実施権が許諾されたものとみなされる。

第六項

 仮通常実施権に係る特許出願について、第四十四条第一項の規定による特許出願の分割があつたときは、当該仮通常実施権を有する者に対し、当該特許出願の分割に係る新たな特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、当該仮通常実施権の設定行為で定めた範囲内において、仮通常実施権が許諾されたものとみなす。ただし、当該設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

 ・仮通常実施権に係る特許出願について補正がなされた場合でも、その設定された範囲内において仮通常実施権の効力は有効である。
・仮通常実施権を許諾後も、特許出願人は、仮通常実施権者の承諾を要することなく、特許出願を分割できる。

第七項

 前条第五項本文の規定により、同項に規定する新たな特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権についての仮専用実施権(以下この項において「新たな特許出願に係る仮専用実施権」という。)が設定されたものとみなされたときは、当該新たな特許出願に係るもとの特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権についての仮専用実施権に基づいて取得すべき専用実施権についての仮通常実施権を有する者に対し、当該新たな特許出願に係る仮専用実施権に基づいて取得すべき専用実施権について、当該仮通常実施権の設定行為で定めた範囲内において、仮通常実施権が許諾されたものとみなす。ただし、当該設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

 ・仮専用実施権者がもとの特許出願について仮通常実施権を許諾した特許出願が分割された場合に、分割に係る新たな特許出願に係る仮専用実施権が設定されたものとみなされたときは、もとの特許出願について仮専用実施権者が許諾した仮通常実施権者に対しても、新たな特許出願に係る専用実施権について仮通常実施権が許諾されたものとみなす。

第八項

 実用新案法第四条の二第一項の規定による仮通常実施権に係る実用新案登録出願について、第四十六条第一項の規定による出願の変更があつたときは、当該仮通常実施権を有する者に対し、当該出願の変更に係る特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、当該仮通常実施権の設定行為で定めた範囲内において、仮通常実施権が許諾されたものとみなす。ただし、当該設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

 ・変更後の特許出願について、実用新案登録出願についての設定行為で定めた範囲内で仮通常実施権が許諾されたものとみなされる。

第九項

 意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第五条の二第一項の規定による仮通常実施権に係る意匠登録出願について、第四十六条第二項の規定による出願の変更があつたときは、当該仮通常実施権を有する者に対し、当該出願の変更に係る特許出願に係る特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権について、当該仮通常実施権の設定行為で定めた範囲内において、仮通常実施権が許諾されたものとみなす。ただし、当該設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

 ・変更後の特許出願について、意匠登録出願についての設定行為で定めた範囲内で仮通常実施権が許諾されたものとみなされる。

第十項

 仮通常実施権は、その特許出願について特許権の設定の登録があつたとき、その特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき又はその特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、消滅する。

 ・仮通常実施権が遡及的に消滅するのではなく、将来に向かって消滅する。

第十一項

 前項に定める場合のほか、前条第四項の規定又は第七項本文の規定による仮通常実施権は、その仮専用実施権が消滅したときは、消滅する。

 ・「前条4項の規定による仮通常実施権」とは、仮専用実施権者が許諾した仮通常実施権のことである。
 ・「7項本文の規定による仮通常実施権」とは、分割に係る新たな特許出願について将来発生する専用実施権について許諾がされたものとみなされる仮通常実施権のことである。


第十二項

 第三十三条第二項及び第三項の規定は、仮通常実施権に準用する。

 ・他の共有者の持分価値が変動するおそれがあるからである。




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