不正競争防止法11-22条

 不正競争防止法の勉強を始める前に、まずは、不正競争防止法の概要(平成19年度版)(経済産業省HP)を見て、不正競争防止法の概要を勉強して下さい。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が暗記項目です。

不正競争防止法11条(秘密保持命令の取消し)

第一項

 秘密保持命令の申立てをした者又は秘密保持命令を受けた者は、訴訟記録の存する裁判所(訴訟記録の存する裁判所がない場合にあっては、秘密保持命令を発した裁判所)に対し、前条第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、秘密保持命令の取消しの申立てをすることができる。

第二項

 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判があった場合には、その決定書をその申立てをした者及び相手方に送達しなければならない。

第三項

 秘密保持命令の取消しの申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

第四項

 秘密保持命令を取り消す裁判は、確定しなければその効力を生じない。

第五項

 裁判所は、秘密保持命令を取り消す裁判をした場合において、秘密保持命令の取消しの申立てをした者又は相手方以外に当該秘密保持命令が発せられた訴訟において当該営業秘密に係る秘密保持命令を受けている者があるときは、その者に対し、直ちに、秘密保持命令を取り消す裁判をした旨を通知しなければならない。

不正競争防止法12条(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)

第一項

 秘密保持命令が発せられた訴訟(すべての秘密保持命令が取り消された訴訟を除く。)に係る訴訟記録につき、民事訴訟法 (平成八年法律第百九号)第九十二条第一項 の決定があった場合において、当事者から同項 に規定する秘密記載部分の閲覧等の請求があり、かつ、その請求の手続を行った者が当該訴訟において秘密保持命令を受けていない者であるときは、裁判所書記官は、同項 の申立てをした当事者(その請求をした者を除く。第三項において同じ。)に対し、その請求後直ちに、その請求があった旨を通知しなければならない。

 ・秘密保持命令が発せられた訴訟の訴訟記録の秘密記載部分に、秘密保持命令を受けていない者から閲覧等の請求があったときは、裁判所書記官は、秘密保持の申立てをした当事者に対し閲覧等の請求があった旨を通知する旨を規定している。
 ・全ての秘密保持命令が取消された訴訟は除かれる。
 ※民訴92条1項(裁判所は、所定の疎明があった場合に、当事者の申立てにより、決定で、訴訟記録の秘密記載部分の閲覧等の請求を当事者に限ることができる。)


第二項

 前項の場合において、裁判所書記官は、同項の請求があった日から二週間を経過する日までの間(その請求の手続を行った者に対する秘密保持命令の申立てがその日までにされた場合にあっては、その申立てについての裁判が確定するまでの間)、その請求の手続を行った者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせてはならない。

 ・閲覧請求の日から2週間、又は、請求人に対する秘密保持命令の申し立ての裁判が確定するまで秘密記載部分の閲覧等を禁止する旨を規定している。

第三項

 前二項の規定は、第一項の請求をした者に同項の秘密記載部分の閲覧等をさせることについて民事訴訟法第九十二条第一項 の申立てをした当事者のすべての同意があるときは、適用しない。

不正競争防止法13条(当事者尋問等の公開停止)

第一項

 不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴訟における当事者等が、その侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって当事者の保有する営業秘密に該当するものについて、当事者本人若しくは法定代理人又は証人として尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより当該営業秘密に基づく当事者の事業活動に著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該事項を判断の基礎とすべき不正競争による営業上の利益の侵害の有無についての適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。

 ・@侵害の有無についての判断の基礎となる事項であって、A営業秘密に該当するものについて、B証人として尋問を受ける場合において、C事業活動に著しい支障が明らかであるため、D十分な陳述ができず、E他の証拠では適正な裁判をできない場合に、F裁判官の全員一致により尋問を非公開にできる旨を規定している。

第二項

 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等の意見を聴かなければならない。

第三項

 裁判所は、前項の場合において、必要があると認めるときは、当事者等にその陳述すべき事項の要領を記載した書面の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書面の開示を求めることができない。

第四項

 裁判所は、前項後段の書面を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書面を開示することができる。

第五項

 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。

不正競争防止法14条(信用回復の措置)

 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

 ・損害賠償に代えることができる。

不正競争防止法15条(消滅時効)

 第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争のうち、営業秘密を使用する行為に対する第三条第一項の規定による侵害の停止又は予防を請求する権利は、その行為を行う者がその行為を継続する場合において、その行為により営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある保有者がその事実及びその行為を行う者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。その行為の開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 ・2条1項4〜9号(営業秘密に関連する規定)における3条1項(差止請求) の行使は、侵害の事実等を知ったときから3年の消滅時効又は侵害行為等の開始から10年の除斥期間に係る旨を規定している。
 ・侵害者が行為を停止した場合は時効も中断するので、使用期間が3年未満であれば知ってから3年経過後に権利行使可能な場合がある。
 ・営業秘密に基づく活動が長期に及ぶと差し止めの影響が大きくなりすぎてしまい、長期に渡り権利を行使しない者は保護に値しないからである。なお、損害賠償も期間経過後の分は認められない。
 ・後段の「10年」は除斥期間であると解されている。除斥期間は、時効と異なりその期間が中断されることはないので、行為の開始の時から10年を超えて使用を継続している場合、差止請求は認められない。


不正競争防止法16条(外国の国旗等の商業上の使用禁止)

第一項

 何人も、外国の国旗若しくは国の紋章その他の記章であって経済産業省令で定めるもの(以下「外国国旗等」という。)と同一若しくは類似のもの(以下「外国国旗等類似記章」という。)を商標として使用し、又は外国国旗等類似記章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国国旗等類似記章を商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国国旗等の使用の許可(許可に類する行政処分を含む。以下同じ。)を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

 ・経済産業省令で定める外国国旗等の類似記章を商標としての使用等の禁止を規定している。但し、権限を有する外国の官庁の使用許可を受けたときは使用を認められる。
 ・外国国旗の場合は、類似の範囲を含み、誤認が生じなくとも適用される。
 ・製造のみは可。


第二項

 前項に規定するもののほか、何人も、商品の原産地を誤認させるような方法で、同項の経済産業省令で定める外国の国の紋章(以下「外国紋章」という。)を使用し、又は外国紋章を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国紋章を使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国紋章の使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

 ・商品の原産地を誤認させる方法での、経済産業省令で定める外国紋章の使用等の禁止を規定している。但し、権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは使用を認められる。
 ・外国紋章の場合は、誤認が生じなければ適用されない。
 ・製造のみは可。


第三項

 何人も、外国の政府若しくは地方公共団体の監督用若しくは証明用の印章若しくは記号であって経済産業省令で定めるもの(以下「外国政府等記号」という。)と同一若しくは類似のもの(以下「外国政府等類似記号」という。)をその外国政府等記号が用いられている商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務の商標として使用し、又は外国政府等類似記号を当該商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは外国政府等類似記号を当該商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、その外国政府等記号の使用の許可を行う権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは、この限りでない。

 ・経済産業省令で定める外国政府等の監督用若しくは証明用の印章若しくは記号と類似する記号の、その外国政府等記号が用いられている商品役務と同一若しくは類似の商品役務の商標としての使用等の禁止を規定している。但し、権限を有する外国の官庁の許可を受けたときは使用を認められる。
 ・外国政府等記号の場合は、類似の範囲を含み、誤認が生じなくとも適用される。但し、商品役務が同一又は類似の場合に適用される。


不正競争防止法17条(国際機関の標章の商業上の使用禁止)

 何人も、その国際機関(政府間の国際機関及びこれに準ずるものとして経済産業省令で定める国際機関をいう。以下この条において同じ。)と関係があると誤認させるような方法で、国際機関を表示する標章であって経済産業省令で定めるものと同一若しくは類似のもの(以下「国際機関類似標章」という。)を商標として使用し、又は国際機関類似標章を商標として使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは国際機関類似標章を商標として使用して役務を提供してはならない。ただし、この国際機関の許可を受けたときは、この限りでない。

 ・経済産業省令で定める国際機関と関係があると誤認させるような方法での、経済産業省令で定める国際機関の類似標章を商標としての使用等の禁止を規定している。但し、この国際機関の許可を受けたときは使用を認められる。
・国際機関類似標章の場合は、類似の範囲を含み、誤認が生じなければ適用されない。


不正競争防止法18条(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)

第一項

 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

 ・@国際的な商取引に関してA営業上の不正の利益を得るために、B外国公務員等に職務に関する行為をさせ若しくはさせないことを、又は地位を利用して他の外国公務員等に職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを、目的としてC金銭等の利益供与、その申込み又は約束をしてはならない旨を規定している。

第二項

 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。

第一号

 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者

第二号

 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者

 ・例えば、外国の政府関係機関の事務に従事する者。

第三号

 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者

 ・外国政府等により、@株式を半数以上所有された、A出資額の半分以上を所有された、B役員の半数以上を任命又は指名された、事業者であって、且つ、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者等として政令で定める者が、外国公務員等に当たる旨を規定している。
 ・例えば、外国の公的企業であって政府等から特に権益を付与されているものの事務に従事する者。


第四号

 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者

 ・国際機関には、国家、政府その他の公共機関によって形成される国際機関に限られるので、国際オリンピック委員会などの民間機関により構成されている国際機関は含まれない。

第五号

 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

不正競争防止法19条(適用除外等)

第一項

 第三条から第十五条まで、第二十一条(第二項第六号に係る部分を除く。)及び第二十二条の規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。

 ・16条(外国の国旗等の商業上の使用禁止)、17条(国際機関の標章の商業上の使用禁止)、18条1項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)の規定に違反した者、については適用除外されない。
 ※21条2項6号(不正の競争の目的で、第一号又は第三号から前号までの罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者)
 ※3条(差止請求権)、4条(損害賠償)、5条(損害の額の推定等)、6条(具体的態様の明示義務)、7条(書類の提出等)、8条(損害計算のための鑑定)、9条(相当な損害額の認定)、10条(秘密保持命令)、11条(秘密保持命令の取消し)、12条(訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)、13条(当事者尋問等の公開停止)、14条(信用回復の措置)、15条(消滅時効)、21条(罰則)、22条(両罰規定)


第一号

 第二条第一項第一号、第二号、第十三号及び第十五号に掲げる不正競争 商品若しくは営業の普通名称(ぶどうを原料又は材料とする物の原産地の名称であって、普通名称となったものを除く。)若しくは同一若しくは類似の商品若しくは営業について慣用されている商品等表示(以下「普通名称等」と総称する。)を普通に用いられる方法で使用し、若しくは表示をし、又は普通名称等を普通に用いられる方法で使用し、若しくは表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(同項第十三号及び第十五号に掲げる不正競争の場合にあっては、普通名称等を普通に用いられる方法で表示をし、又は使用して役務を提供する行為を含む。)

 ・2条1項1号(周知表示混同惹起行為)、同2号(著名表示冒用行為)、同13号(誤認惹起行為)、同15号(代理人等の商標冒用行為)について、普通名称又は慣用名称の普通に用いられる方法での使用が適用除外となる旨を規定している。
 ・ぶどうを原料又は材料とする物の原産地の名称であって、普通名称となったものとは、シャンパンやコニャックなどであり、適用除外されないので不正競争に該当する。
 ・床屋の三色灯は慣用商標。
 ・いちご大福はいちごも大福も普通名称であり、商品の性質を表現しているに過ぎないので普通名称と判断され、不正競争とはならない。
 ・正露丸は普通名称であるが、糖衣Aは普通に用いられる方法による表示ではないので、正露丸糖衣錠AAは不正競争に当たる。


第二号

 第二条第一項第一号、第二号及び第十五号に掲げる不正競争 自己の氏名を不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)でなく使用し、又は自己の氏名を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(同号に掲げる不正競争の場合にあっては、自己の氏名を不正の目的でなく使用して役務を提供する行為を含む。)

 ・2条1項1号(周知表示混同惹起行為)、同2号(著名表示冒用行為)、同15号(代理人等の商標冒用行為)について、自己の氏名の不正の目的でない使用が適用除外となる旨を規定している。
 ・自己の氏名であっても不正の目的をもった使用であれば不正競争に該当する。
 ・法人の名称は選択自由度が高いため、適用除外とならない。
 ・YAMAHAに対する山葉楽器は不正競争に該当しない。
 ・花柳流に対する、ハナヤギさんの弟子がハナヤギ流を名乗る行為は不正競争に該当しない。弟子が師匠の名を継ぐのはおかしくないからである。


第三号

 第二条第一項第一号に掲げる不正競争 他人の商品等表示が需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正の目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

 ・2条1項1号(周知表示混同惹起行為)について、周知化前の不正の目的でない先使用が適用除外となる旨を規定している。
 ・著名化前については次号で規定している。
 ・悪意であっても、不正の目的がなければ先使用に該当する。


第四号

 第二条第一項第二号に掲げる不正競争 他人の商品等表示が著名になる前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正の目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正の目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

 ・2条1項2号(著名表示冒用行為)について、著名化前の周知化前の不正の目的でない先使用が適用除外となる旨を規定している。  ・悪意であっても、不正の目的がなければ先使用に該当する。

第五号

 第二条第一項第三号に掲げる不正競争 次のいずれかに掲げる行為

 ・2条1項3号(商品形態模倣行為いわゆるデッドコピー)について、@日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品、又は、A善意無重過失の転得者が適用除外となる旨を規定。

同イ

 日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

 ・外国での販売は考慮されない。
 ・最初に販売された日とは、商品の形態が確認できる状態での販売のための広告活動や、営業活動を開始した日をいう。


同ロ

 他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者(その譲り受けた時にその商品が他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

第六号

 第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争 取引によって営業秘密を取得した者(その取得した時にその営業秘密について不正開示行為であること又はその営業秘密について不正取得行為若しくは不正開示行為が介在したことを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)がその取引によって取得した権原の範囲内においてその営業秘密を使用し、又は開示する行為

 ・2条1項4号(不正取得行為、及び、不正取得行為により取得した営業秘密を使用、開示する行為)、同5号(不正取得行為の介在について意/重過失の者が営業秘密を入手、使用、開示する行為)、同6号(善意/無過失で営業秘密を入手した後、不正取得行為の介在について悪意/重過失で使用、開示する行為)、同7号(正当に営業秘密を示された者が、図利加害目的で使用、開示する行為)、同8号(不正開示行為の介在を知って使用、開示する行為)、同9号(不正開示行為の介在について悪意/重過失で営業秘密を使用、開示する行為)について、不正取得行為又は不正開示行為の介在について、善意無重過失な者の取得した権原の範囲内での使用が適用除外となる旨を規定している。

第七号

 第二条第一項第十号及び第十一号に掲げる不正競争 技術的制限手段の試験又は研究のために用いられる第二条第一項第十号及び第十一号に規定する装置若しくはこれらの号に規定するプログラムを記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該プログラムを電気通信回線を通じて提供する行為

 ・2条1項10号(技術的制限手段妨害機器提供行為)、同11号(特定者以外への視聴等を制限する技術的制限手段の妨害機器又は妨害プログラムを譲渡等する行為)について、不正競争技術的制限手段の、試験又は研究目的の譲渡等が適用除外となる旨を規定している。
 ・技術的制限手段の効果を妨げる機能のみを有する装置を第三者に譲渡している場合であっても、その装置がその技術的制限手段の試験又は研究のために用いられるものであるときには、当該譲渡に対する差止請求は認められない。


第二項

 前項第二号又は第三号に掲げる行為によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、次の各号に掲げる行為の区分に応じて当該各号に定める者に対し、自己の商品又は営業との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。

 ・19条1項2号(自己の氏名についての適用除外)、同3号(周知化前の先使用の適用除外)の場合に、混同防止表示請求できる旨を規定している。
 ・19条1項3号の場合、不正の目的は不要である。
 ・19条1項4号不適用のため、著名化前の先使用には混同防止表示請求できない。


第一号

 前項第二号に掲げる行為 自己の氏名を使用する者(自己の氏名を使用した商品を自ら譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する者を含む。)

 ・自己の氏名を使用している当人に対して混同防止表示請求できる。

第二号

 前項第三号に掲げる行為 他人の商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用する者及びその商品等表示に係る業務を承継した者(その商品等表示を使用した商品を自ら譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する者を含む。)

 ・先使用している当人に対して混同防止表示請求できる。

不正競争防止法20条(経過措置)

 この法律の規定に基づき政令又は経済産業省令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令又は経済産業省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

不正競争防止法21条(罰則)

第一項

 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 ・営業秘密侵害罪(4〜9号)には、不正競争の目的が必要なので、報道目的、愉快犯等の個人犯罪行為、内部告発目的、恐喝目的は該当しない。なお、親告罪であり、犯人を知った日から6月以内の告訴を要する(刑訴235条1項)。
 ・退職者が在職中に正当に取得した営業秘密を、退職後に使用、開示する行為は刑事罰の対象とはならない(例えば、在職中に正当に取得したノウハウを退職後に転職先で活用する行為等)。但し、在職中に正当に取得した営業秘密であっても、退職直前に自宅に持ち出して退職後に使用、開示する行為は処罰の対象となる。
 ・有用性のある仕入れリストであっても、無施錠の棚に置かれていれば営業秘密として認められず、それを使用しても不可罰である。


第一号

 詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。以下同じ。)により、又は管理侵害行為(営業秘密が記載され、又は記録された書面又は記録媒体(以下「営業秘密記録媒体等」という。)の窃取、営業秘密が管理されている施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律 (平成十一年法律第百二十八号)第三条 に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の保有者の管理を害する行為をいう。以下同じ。)により取得した営業秘密を、不正の競争の目的で、使用し、又は開示した者

 ・詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の競争の目的で、使用、開示した者について規定している。
 ・記録されていない営業秘密でも適用される。
 ・詐欺行為とは、刑法上の詐欺、恐喝、強盗に当たる。
 ・コンピュータサーバ管理センターのような保有者以外のものであっても、委託契約を結んで保有者の手足として営業秘密を管理している施設であれば、営業秘密を管理する施設にあたる。
 ・保有者の管理を該する行為には、盗聴、電波傍受、窃視、ダビング等が含まれる。


第二号

 前号の使用又は開示の用に供する目的で、詐欺等行為又は管理侵害行為により、営業秘密を次のいずれかに掲げる方法で取得した者

 ・不正の競争の目的で使用、開示するために、詐欺等行為又は管理侵害行為により、@営業秘密記録媒体等を取得、A営業秘密記録媒体等の複製を作成した者について規定している。

同イ

 保有者の管理に係る営業秘密記録媒体等を取得すること。

 ・営業秘密記録媒体等の取得とは、媒体自体(原本)の取得を示す。

同ロ

 保有者の管理に係る営業秘密記録媒体等の記載又は記録について、その複製を作成すること。

 ・競業他社に販売する目的で営業秘密を撮影したが、守衛によって消去されてしまった場合であっても、撮影(複製)を行っている時点で犯罪が成立し、その後画像が消去されても可罰行為となる。

第三号

 営業秘密を保有者から示された者であって、不正の競争の目的で、詐欺等行為若しくは管理侵害行為により、又は横領その他の営業秘密記録媒体等の管理に係る任務に背く行為により、次のいずれかに掲げる方法で営業秘密が記載され、又は記録された書面又は記録媒体を領得し、又は作成して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

 ・保有者から営業秘密を示された者であって、不正の競争の目的で、詐欺等行為、管理侵害行為、横領、任務に背く行為により、営業秘密が記載された記録媒体を領得又は複製を作成して、使用又は開示した者について規定している。
 ・営業秘密記録媒体に記録されていない場合は対象外となる。
 ・例えば、持ち出し禁止の営業秘密を、退職直前に直接又は複製して持ち出した者が当たる。
 ・領得するとは、窃盗、横領等を併せた行為を意味する。
 ・役員や従業者には限定されない。また、媒体等の領得や複製作成を要する。なお、保有者以外の第三者が有する書面又は記録媒体をも対象となる。
 ・不法侵入により営業秘密を記憶した場合であっても、媒体を領得せずに元に戻し、複製も行っていない場合は不可罰である。


同イ

 保有者の管理に係る営業秘密記録媒体等を領得すること。

 ・従業員が営業秘密を自宅に持ち帰り退職後に使用する行為は、任務に背いて営業秘密を領得する行為に該当するので、可罰となる。また、E-mailで自宅に送信した場合でも、複製に当たるので可罰となる。但し、在職中に記憶した営業秘密を退職後に使用、開示する行為は不可罰である。

同ロ

 保有者の管理に係る営業秘密記録媒体等の記載又は記録について、その複製を作成すること。

第四号

 営業秘密を保有者から示されたその役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。次号において同じ。)又は従業者であって、不正の競争の目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用し、又は開示した者(前号に掲げる者を除く。)

 ・営業秘密を示された役員又は従業者であって(在職中)、不正の競争の目的で任務に背き、営業秘密を使用、開示した者について規定している。
 ・営業秘密記録媒体に記録されていない場合でも対象となる。
 ・退職した従業員は含まない。
 ・役員や従業員(派遣者を含む)に限定される。また、媒体等の領得や複製作成を要しない。なお、営業費秘密の取得手段は問わず(領得等に限られない)、記憶による取得も対象となる。
 ・例えば、従業員が業務上知り得た営業秘密を公開する行為が該当する。
 ・記憶した営業秘密であっても、在職中に使用、開示した場合は可罰となる。


第五号

 営業秘密を保有者から示されたその役員又は従業者であった者であって、不正の競争の目的で、その在職中に、その営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし、又はその営業秘密の使用若しくは開示について請託を受けて、その営業秘密をその職を退いた後に使用し、又は開示した者(第三号に掲げる者を除く。)

 ・営業秘密を示された役員又は従業者であった者であって、不正の競争の目的で、在職中に営業秘密の開示の申込みをして、又は、使用若しくは開示の請託を受け、退職後に使用又は開示した者について規定している。
 ・不正に取得しなくとも、@不正競争の目的で、A退職前に開示の申し込み等を受けて、B退職後に使用又は開示した場合に、罰則の適用がある旨を規定している。
 ・申込み、請託の対処者と、実際に営業秘密を使用、開示した相手方とが完全一致する必要はない。また、黙示の請託でも足りる。


第六号

 不正の競争の目的で、第一号又は第三号から前号までの罪に当たる開示によって営業秘密を取得して、その営業秘密を使用し、又は開示した者

 ・他人に罪を犯させて営業秘密を取得した二次的取得者を独立正犯として処罰の対象としている。但し、不正の競争の目的は営業秘密を取得した時点から必要であり、取得後に悪意に転じた場合は含まない。

第二項

 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第一号

 不正の目的をもって第二条第一項第一号又は第十三号に掲げる不正競争を行った者

 ・2条1項1号(周知表示混同惹起行為)、同13号(誤認惹起行為)について、自己の氏名の不正の目的でない使用は適用除外となる。
 ・2条1項15号(代理人等の商標冒用行為)には不適用。また、2条1項3号(商品形態模倣行為いわゆるデッドコピー)については、3号で規定されている。


第二号

 他人の著名な商品等表示に係る信用若しくは名声を利用して不正の利益を得る目的で、又は当該信用若しくは名声を害する目的で第二条第一項第二号に掲げる不正競争を行った者

 ※2条1項2号(著名表示冒用行為)

第三号

 不正の利益を得る目的で第二条第一項第三号に掲げる不正競争を行った者

 ※2条1項3号(商品形態模倣行為いわゆるデッドコピー)

第四号

 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者(第一号に掲げる者を除く。)

 ・不正の目的は不要。

第五号

 秘密保持命令に違反した者

第六号

 第十六条、第十七条又は第十八条第一項の規定に違反した者

 ※16条(外国の国旗等の商業上の使用禁止)、17条(国際機関の標章の商業上の使用禁止)、18条1項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)

第三項

 第一項及び前項第五号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 ・営業秘密侵害(21条1項)又は秘密保持命令(21条2項5号)に対する公訴は告訴が必要。

第四項

 第一項第一号又は第三号から第六号までの罪は、詐欺等行為若しくは管理侵害行為があった時又は保有者から示された時に日本国内において管理されていた営業秘密について、日本国外においてこれらの罪を犯した者にも適用する。

 ・日本国民に限っては、日本国内で営業秘密を取得し、外国で開示した場合であっても罰則が適用される。管理侵害行為等は日本国内で行われる必要はなく、海外からの詐欺、不正アクセスなども該当する。また、管理侵害行為等があった時に既に国外に持ち出されていた営業秘密(国外で営業秘密が示された場合を含む)は対象外である。
 ・営業秘密侵害罪については、国内で管理されていた営業秘密を国外で使用、開示した場合も処罰される。


第五項

 第二項第五号の罪は、日本国外において同号の罪を犯した者にも適用する。

 ・外国で秘密保持命令に違反した者についても罰則が適用される。

第六項

 第二項第六号(第十八条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従う。

 ・外国公務員贈賄罪については、国民の国外犯も処罰される。
 ※18条1項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)


第七項

 第一項及び第二項の規定は、刑法 その他の罰則の適用を妨げない。

 ・刑法などが併せて適用されることもある。また、他罪の量刑を考慮して適正な刑罰を科すことができる。

不正競争防止法22条

第一項

 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第一項第一号、第二号若しくは第六号又は第二項に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して三億円以下の罰金刑を、その人に対して本条の罰金刑を科する。

 ・従業員などが任務に背く等をして営業秘密を取得して使用、開示した行為(20条1項3〜5号)については両罰規定がない。

第二項

 前項の場合において、当該行為者に対してした前条第一項第一号、第二号及び第六号並びに第二項第五号の罪に係る同条第三項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。

 ※21条2項5号(秘密保持命令違反)

第三項

 第一項の規定により前条第一項第一号、第二号若しくは第六号又は第二項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。




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