商標法43条の2-43条の4
初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
以下、
太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。
商標法43条の2(登録異議の申立て)
第一項
何人も、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り、特許庁長官に、商標登録が次の各号のいずれかに該当することを理由として登録異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の指定商品又は指定役務に係る商標登録については、指定商品又は指定役務ごとに登録異議の申立てをすることができる。
・異議申立による取消が僅かにも関らず、一律に異議申立期間経過後に設定登録されるのは適当でなく、また早期審査を図るために付与後異議申立制度へと移行した。
・異議申立は、商標登録に対する信頼を高めるための(公益的)制度であり、特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合はその是正を図るものである。一方、無効審判は、登録処分の是非をめぐる当事者問の争いを解決するための(私益的)制度である。
・異議申立理由を公衆の利益に限ったのは、権利の帰属に関する理由については当事者間の紛争解決手段たる無効審判により争うのが望ましいからである。
・後発的事由が除かれるのは、登録処分適否の見直しを図る制度であることから登録後の事由までも取消理由とするのは好ましくなく、登録後2月の間にこのような事由が生じることは稀であるからである。
・代理人等による不当登録を異議申立理由にしなかったのは、取消審判で取消可能だからである。
・異議申立は査定系(原則として商標権者と合議体との間で手続が進行する)であり、無効審判は当事者系(商標権者と請求人が商標登録の有効性を争う)である。
・「何人も」なので、利害関係は不要であり、法人でない杜団等も申立て可能である(商77条で準用する特6条1項2号)。ただし、商標権者、審査官、審判官は申立てできない。登録処分に対して第三者に異議を申し立てる機会を与える制度だからである。
・申立人の地位の承継は認められない。
・手続の流れは、異議申立 → 申立書副本を商標権者に送付 → 審判官合議体による審理となる。その後は以下の二つであり、決定謄本が商標権者、登録異議申立人、参加人、参加申請を拒否した者に送達される。なお、取消決定に不服の場合は東京高裁に提訴できる。一方、維持決定に不服の場合は直接不服申立できないが、別途無効審判を請求できる。
@取消理由通知及び意見書提出機会の付与後、取消決定
A取消理由なき場合又は取消理由が解消した場合は維持決定
・例えば、他人の著名な社名についての商標登録に対しては、商4条1項8号,10号,15号,19号の異議申立理由が考えられる。
第一号
その商標登録が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第一項、第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条 の規定に違反してされたこと。
・商7条は、直接は拒絶、異議、無効理由とならず、商3条1項柱書に反するとして扱われる。
・商8条1項は拒絶理由ではないが、異議、無効理由となる。
・商6条1項,2項は拒絶理由であるが、異議、無効理由とはならない。
・出願により生じた権利を承継しない者による登録は、無効理由であるが、拒絶、異議理由ではない。なお、商標は選択物であるので、冒認出願・共同出願違反は存在しない。
・後発的事項は、異議理由とはならない。
・補正要件違反、商5条の規定に反する場合でも、無効、異議、拒絶理由とはならない。
第二号
その商標登録が条約に違反してされたこと
商標法43条の3(決定)
第一項
登録異議の申立てについての審理及び決定は、三人又は五人の審判官の合議体が行う。
第二項
審判官は、登録異議の申立てに係る商標登録が前条各号の一に該当すると認めるときは、その商標登録を取り消すべき旨の決定(以下「取消決定」という。)をしなければならない。
第三項
取消決定が確定したときは、その商標権は、初めから存在しなかつたものとみなす。
・民訴338条1項8号及び刑訴435条5号の規定により、取消決定は民訴上、刑訴上の再審事由となる。
・取消し決定が確定した場合の効果:
@分割納付の場合の後半分の登録料の返還請求が可能となる。
A金銭的請求権が遡及消滅する。
B再審請求が可能となる。
C民訴法、刑訴法における再審理由となる。
・無効の場合と異なり、中用権は発生しない。
第四項
審判官は、登録異議の申立てに係る商標登録が前条各号の一に該当すると認めないときは、その商標登録を維持すべき旨の決定をしなければならない。
第五項
前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
・維持決定に対しては、不服申立できない。なお、不服申立とは、行政不服審査法による異議申立、審判請求、訴え提起等をいう。
商標法43条の4(申立ての方式等)
第一項
登録異議の申立てをする者は、次に掲げる事項を記載した登録異議申立書を特許庁長官に提出しなければならない。
・各号に掲げる事項のうち一つでも記載がない場合は、その申立書は方式違反となる。
・申立書の方式違反、手数料未納の場合は審判長により補正命令が出され、補正しないときは、申立書が決定却下される。
第一号
登録異議申立人及び代理人の氏名又は名称及び住所又は居所
第二号
登録異議の申立てに係る商標登録の表示
・商標登録の表示とは、商標登録の番号及び指定商品役務の表示をいう。
第三号
登録異議の申立ての理由及び必要な証拠の表示
第二項
前項の規定により提出した登録異議申立書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、第四十三条の二に規定する期間の経過後三十日を経過するまでに前項第三号に掲げる事項についてする補正については、この限りでない。
・異議申立理由及び証拠以外は、要旨変更補正が認められない。また、申立人の追加・削除・変更や商標の表示を変更する補正、異議申立の対象事件の変更は要旨変更である。また、指定商品を追加する補正は商標登録の表示の要旨変更となるので認められない。
・商標掲載公報発行から2月30日+本条3項の遠隔地延長期間内であれば、異議申立理由及び証拠の要旨を変更する補正が認められる。
第三項
特許庁長官は、遠隔又は交通不便の地にある者のため、請求により又は職権で、前項に規定する期間を延長することができる。
・異議申立期間が延長されるわけではなく、異議申立理由及び証拠の要旨を変更する補正の可能期間が延長される。なお、異議の申立てについての審理に係属している間は、補正をすることができる。
第四項
審判長は、登録異議申立書の副本を商標権者に送付しなければならない。
・商標権者に対して意見書提出の義務を課すものではない。
第五項
第四十六条第三項の規定は、登録異議の申立てがあつた場合に準用する。
参考書・基本書
試験対策・勉強法
改正・判例解説
短答試験
過去問
論文試験
選択科目
選択科目の免除
口述試験
転職
リンク
メールはこちら
「独学の弁理士講座」TOPへ戻る