商標法4条1項17号-3項
初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
以下、
太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。
商標法4条(商標登録を受けることができない商標)
第一項
次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
第十七号
日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの
・私益的規定であり、除斥期間の適用がある。
・TRIPS24条9においては、加盟国が原産国において保護されていない地理的表示を保護する義務を負わない旨が規定されている。
・日本国内の産地をも規定しているのは、日本の産地が外国の産地よりも不利に扱われることとなり、日本で原産地が保護されないと外国でも保護されなくなってしまうからである。
・産地指定を受けるための申請手続きなどは、商施規1条〜1条の4に規定されている。
・外国の産地については、特許庁長官が指定するものではない。
・査定時に該当しても出願時に該当しなければ良い。TRIPS協定の「善意」の要件を満たすと考えられるからである。
・本号は、産地を当該産地における文字で表示した標章のみならず、片仮名文字、その他その翻訳と認められる文字で表示した標章を有する場合も適用する。
・「ぶどう酒」には、アルコール強化ぶどう酒が含まれるものとする。また、「蒸留酒」には、例えば、泡盛、しょうちゅう、ウイスキー、ウォッカ、ブランデー、ラム、ジン、カオリャンチュー、パイカル等が含まれるが、リキュールは含まれないものとする。
・以下の二つが産地として規定されている。
@日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するもの
A世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているもの
第十八号
商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標
・公益的規定であり、除斥期間はない。なお、後発無効事由とはならない。
・商品の形状や包装の形状そのものの範囲を出ない立体商標は、自他商品識別力を有しないとして拒絶される。しかし、使用の結果識別力を備えた場合は登録されうるため、本号で拒絶することで、商品又は包装の半永久的な独占を防いでいる。
・一部に不可欠な形状のみからなる商標の登録は認められうる。不可欠な形状のみからなる商標には商標権の効力が及ばないので、形状を独占させることにはならないからである。
第十九号
他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)
・私益的規定であるが、除斥期間の適用がない。また、査定時に該当しても出願時に該当しなければ良い。
・主として外国での所有者に無断で不正の目的をもってなされる出願/商標登録を排除することを目的とする。また、出所の混同のおそれがない商標であっても、全国的な著名商標の出所表示機能を希釈化することがあり、その保護を目的とする。
・不正の目的とは、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的をいい、図利加害目的、取引上の信義則に反するような目的のことをいう。取引上の競争関係を有しない場合であっても適用される。具体的には、外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの、日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの、その他信義則に反するものは、本号の規定に該当する。
・不当登録された著名商標を使用する行為は、無効な商標権の使用であり、著名商標の存在を知っていれば公正の理念にも反するので権利濫用となる。
・本号の適用に当たっては、@一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであり、且つ、Aその周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものである場合は、不正の目的をもって使用すると推認する。
第二項
国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。
・商標登録が認められても、専用使用権又は通常使用権を設定又は許諾することはできない。
・国際原子力機関等については、自己が出願した場合であっても登録を受けられない。
第三項
第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。
・出願時において各号の規定に該当し、かつ、査定時においても該当しなければならない。
・国際商標登録出願は、国際登録の日又は事後指定の日である。
・商4条17号について規定が追加されたのは、出願時に保護されていない表示について出願した場合は善意が推定され、TRIPSの「善意」要件を満たすからである。
・本項において出願時に商4条1項8号に該当しない商標とは、出願時に同号本文に該当しない商標をいう。従って、出願時において同号かっこ書きの承諾があることにより同号に該当しないとされる商標については、本項の適用がない。つまり、商標出願時に商4条1項8号に該当する商標について登録を受けるためには、出願時のみならず査定時においても同号かっこ書きの承諾を要する。よって、出願時に承諾があったとしても、査定時に承諾を欠くときは登録を受けることができない(最高裁H15(行ヒ)265号)。
参考書・基本書について
試験対策・勉強法について
改正・判例解説
短答試験の無料講座
過去問の解説
論文試験の無料講座
選択科目について
免除制度の説明
口述試験について
転職について
メールはこちら
「独学の弁理士講座」TOPへ戻る