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 論文の書き方は人それぞれであり、問題によっても異なります。下記内容は、必要最小限にまとめてあり、これだけを書けば合格点が付くというものではありません。ですので、あくまで論文のまとめ方の参考としてお使い下さい。
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審決取消訴訟(特178条)

 審決取消訴訟とは、特許庁が行った行政処分である審決等の取消を求めて東京高等裁判所に提起し得る行政訴訟をいう(特178条)。
 特許庁における審決等は行政処分であるから、それについての訴えは行政事件訴訟法の適用を受けるのが原則である。
 しかし、特許事件は技術的且つ専門的であり、審判手続きも準司法的手続きにより行われる。そこで、特許法においては、審決等の取消訴訟について、行政事件訴訟法の特則が設けられている(特178条〜特182条)。


当事者適格

 @原告は、当事者、参加人又は参加を申請して拒否された者でなければならない(特178条2項)。対世的効力を有する特許権に係る訴訟においては、利害関係がある第三者の範囲は著しく広汎になり、全ての者に原告適格を認めると裁判渋滞の原因となる。一方、当事者だけに原告適格を認めると、裁判を受ける権利の関係上問題となる。そこで、妥協案として上述のように規定されている。
 なお、権利が共有に係る場合、査定系審判(特121条,特126条)の審決に対しては共同で提起しなければならない。固有必要的共同訴訟と解されるからである。また、当事者系審判(特123条,特125条の2)の審決に対しては、共有者の一人が単独でもすることができると解する。保存行為であり、類似必要的共同訴訟と解されるからである。
 A被告は原則として、特許庁長官でなければならない(特179条本文)。但し、当事者系審判又は再審の審決に対しては、相手方を被告としなければならない(特179条但書)。審判が当事者対立構造を採用しているからである。
 B共同請求(特132条第1項)に係る特許無効審判について、審決の取消しを求める訴えは、無効審判の請求をした者の全員が共同して提起することを要すると解すべき理由はないから、当該無効審判請求人の一部の者は単独で審決取消訴訟を提起することができると解する(最判H12.2.18)。

提起の対象

 審決に対する訴え、審判及び再審の請求書の却下決定に対するものに限られる(特178条1項)。なお、除斥、忌避、参加拒否等の決定に対しては提起できない(特143条3項,特149条5項)。


裁判管轄

 東京高等裁判所の専属管轄とする(特178条1項)。審判手続きが準司法的手続きによって厳正に行われるため、一審級を省略したものである。


出訴期間

 @審決又は決定の謄本送達の日から30日以内でなければならない。対世的効力を有する処分を早期に確定させるためである。
 A30日の期間は不変期間であり(特178条3項)、期間の伸縮ができないが、遠隔又は交通不便の地にある者の為、審判官は職権で附加期間を定めることができる(特178条5項)。また、所定の場合には追完が認められる(民訴97条)。
 B到達主義(民訴133条)を採用し、発信主義(特19条)は適用されない。末日についても民事訴訟法の規定による。


提起の手続き

 適式な訴状を東京高等裁判所に提出する(民訴133条)。


審理手続き

 裁判官の合議体が、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を参酌し、自由な心証により事実上の主張を真実と認めるか否かを判断する(民訴247条)。
 また、審決等の実体上の判断又は手続き上の瑕疵が違法か否かが審理判断の対象となる。なお、原則として、審理範囲は審決の理由に示された事実に限定され、新たな事実の主張はできない。
 なお、当事者系審判に対する訴えの提起があったときは、裁判所は特許庁に対して出訴通知をする(特180条)。


審理の終了、効果

 @訴訟が判決をするに熟したと認めるときは、口頭弁論を終結し、裁判長の指定する期日に判決が言い渡される(民訴243条、民訴251条)。
 A請求の理由があると認めたときは、審決を取り消す旨の判決がなされ(特181条)、請求の理由がないと認めたときは、請求を棄却する旨の判決がなされる。
 B審決取消の判決が確定したときは、その判決は特許庁を拘束する(行訴33条1項)。審判官は、その判決の趣旨に従ってさらに審理を行い、審決をしなければならない(特181条2項)。
 C裁判所は、当事者系審判に対する訴訟手続が完結したとき、各審級の裁判の正本を特許庁長官に送付しなければならない(特182条)。出訴通知(特180条)に対応したものである。


関連事項

 @特許を受ける権利が共有に係る特許出願についての拒絶審決に対する取消訴訟は、固有必要的共同訴訟と解すべきであるから、共有者の一人が単独で提起した取消訴訟は不適法であり却下されると解する。当該審決を取り消すか否かは共有者全員について合一にのみ確定すべきだからである。
 A特許無効審決に対し、特許権の共有者の一人が単独で取り消し訴訟を提起することは許されると解する。特許権の消滅を防ぐ保存行為として単独で無効審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当であるからである。なお、各共有者が別個に取り消し訴訟を提起した場合には、これらの訴訟が類似必要的共同訴訟にあたり、併合して審理判断されることになるので、合一確定の要請は満たされる。
 B審判手続で審理判断されていた刊行物に記載の発明のもつ意義を明らかにするために、審判手続に現れていなかった資料に基づき出願時の技術常識を認定することは許されると解する。審判手続において審理判断されていなかった刊行物に記載の発明との対比において無効原因の存否を認定したとはいえないからである。
 C審判で審理判断されなかった公知事実との対比における無効原因を、審決取消訴訟において主張することは許されないと解する。審決取消訴訟において一審級省略しているのは、審判において十分に審理されていると考えられるからであり、専ら審判手続において現実に争われ且つ審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象とされるべきであるからである。
 D無効審決が取り消され再度無効審判に係属した場合に、先の無効審判における証拠とは異なる証拠に基づけば、同じ無効理由で再度無効である旨の審決をすることができると解する。一事不再理効は同一証拠同一理由に及ぶからである。また、先の無効審判とは異なる無効理由で再度無効である旨の審決をすることもできる。


審決取消訴訟の簡素化

 無効審決に対する審決取消訴訟を提起し、さらに訂正審判を請求した場合、訂正が確定したことをもって、判決で審決を取り消して、再度審判官合議体が審理をすることで無効審判の審理が長期化していた。
 そこで、以下のような手続きの簡素化が図られている。
 @訂正審判の請求は、訴えの提起があったときから90日の期間内に限定する(特126条2項)。
 A特許権者に訂正審判請求の意思があり、裁判所が認める場合には、実体判断をせずに(口頭弁論を経ずに)決定により事件を特許庁に差し戻す。そして、再度無効審判中で審理させる(特181条2項)。
 B差戻し後の無効審判で訂正の機会を与え、訂正審判と無効審判の一元化を図る(特134条の3)。




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