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 論文の書き方は人それぞれであり、問題によっても異なります。下記内容は、必要最小限にまとめてあり、これだけを書けば合格点が付くというものではありません。ですので、あくまで論文のまとめ方の参考としてお使い下さい。
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先願主義(特39条)

 先願主義とは、同一発明について二以上の出願が競合した場合、最先の出願人のみに特許権を付与する主義をいう(特39条)。 特許権(特68条)は独占排他権であるため、重複特許は認められず、これを排除する考え方としては、先願主義と先発明主義とが存在する。
 ここで、先発明主義は、最先の発明者を保護する点で、発明奨励上優れているようにも見える。しかし、発明時の立証が困難であることから、権利の安定性又は信頼性に欠けると共に、発明の秘蔵化を助長するという問題がある。
 そこで、法は先後の判断が容易で、権利の安定性又は信頼性が高く、発明の早期公開に適した先願主義を採用している(特39条)。


主体的基準

 @同一出願人の間においても先後願が判断される(特39条1項〜4項)。同一人に同一発明について重複特許を認めると、実質的に存続期間の延長となり、不当だからである。
 A発明者等でない者であって特許を受ける権利等を承継しないものがした特許出願等は、先後願の判断対象とはならない(特39条6項)。


客体的基準

 @実用新案登録出願も対象となる(特39条1項〜4項)。発明と考案とは技術的思想の創作として同質だからである。
 A国際特許出願及び国際実用新案登録出願も対象となる(特184条の3,実48条の3)。通常の出願として扱われるためである。
 B取下げられた出願は、再出願の道を与えるため、放棄、却下、拒絶査定又は審決が確定した出願は、法的地位を与えることが妥当ではないため、冒認出願は、真の発明者を保護するため、いずれも先願の対象とはならない(特39条5項,6項)。
 C協議不調により拒絶査定又は審決が確定した出願は、先願の対象となる(特39条5項但書)。他の後願に特許権を付与するのは、妥当ではないからである。
 D特許された出願は先願の対象となる。重複特許を排除するためである。
 E翻訳文提出前の外国語書面出願及び外国語特許出願は、先願の対象とはならない。翻訳文提出前は、先後願判断の対象となる特許請求の範囲が存在しない為である。
 F特許請求の範囲に記載された発明のみが対象となる。この範囲が、権利付与を求める範囲だからである(特36条5項,特70条)。なお、外国語書面出願及び外国語特許出願は、翻訳文に記載された発明が対象となる(特36条の2第4項,特184条の6第2項)。


時期的判断基準

 @先後願は、日を基準に判断する(特39条1項〜特4項)。
 時を基準としなかったのは、時刻の証明が煩雑であり、同一発明の同日出願が稀だからである。なお、郵便又は信書便による出願については発信主義がとられている(特19条)。また、出願の分割、変更、実用新案登録に基づく特許出願は原出願時(特44条2項,特46条5項,特46条の2第2項)、パリ条約又はパリ条約の例による優先権主張出願は第一国出願日(パリ4条B)、国内優先権主張出願は先の出願日(特41条)、国際特許出願は国際出願日が(特184条の3第1項)が、基準となる。
 A先願主義の趣旨により、異日出願の場合は、最先の出願人のみが特許を受けうる(特39条1項,3項)。
 B同一発明の同日出願の場合、出願人同士が協議を行い(特39条2項,4項)、協議により定めた一の出願人のみが特許を受けうる。私的自治による解決を図るのが望ましいからである。
 a.同一発明の同日出願の場合、協議命令が出され、指定期間内に協議の結果を届け出なければならない(特39条7項)。
 b.協議不成立の場合、いずれも特許を受けられない(特39条2項,4項)。くじ等によりいずれか一方に特許権を付与すると、他方は実施できなくなり、双方がそれを望まないためである。
 c.指定期間内に協議結果を届け出なかった場合、協議不成立と見なされることがある(特39条8項)。


判断基準

 後願の請求項に係る発明と、先願の請求項に係る発明との発明特定事項の一致点及び相違点を認定し、相違点がない場合は、同一と判断される。また、相違点がある場合でも、@周知慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏しない発明、A下位概念である先願の発明特定事項を上位概念で表したに過ぎない発明、B単なるカテゴリー表現上の相違しかない発明、等の場合は、実質的に同一と判断される。
 なお、特許請求の範囲が全部一致する場合のみならず、発明特定事項に選択肢を有する発明の一部が重複する場合にも、同一発明と判断される。


協議制

 @出願段階で協議命令を受けずに一方の出願が過誤登録された場合、両者が事実上の協議を行い、出願継続中の他方の出願が取下等されれば、問題が解消すると解する。しかし、協議不調の場合は、過誤登録された特許権は無効となると解する。
 A出願段階で協議命令を受けずに両方の出願が過誤登録された場合、両者が事実上の協議を行い、一方の特許権が放棄等されれば、問題が解消すると解する。協議をすることができないとして共に無効とするのは特許権者に酷だからである。
 B出願段階で協議命令を受けずに一方の出願が過誤登録され、他方の拒絶査定が確定した場合、一方の特許を無効とすべきと解する。後者の拒絶査定の確定は、他人の競合出願の特許化を阻止できる特許法上の利益を与えられることで充分であるとして、権利化を断念した結果であると推認されるからである。
 C届出があった場合でも、出願取下げ又は出願放棄の手続が行われない場合又は複数の協議指令に対する協議の結果の届出の内容が相互に矛盾する場合は協議が成立しなかったものと認め、拒絶の理由を通知する。




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