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 論文の書き方は人それぞれであり、問題によっても異なります。下記内容は、必要最小限にまとめてあり、これだけを書けば合格点が付くというものではありません。ですので、あくまで論文のまとめ方の参考としてお使い下さい。
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専用実施権(特77条)と通常実施権(特78条)

 専用実施権と通常実施権とは、特許権者以外の者が特許発明を業として実施できることを内容とする点で共通する(特77条,特78条)。
 しかし、専用実施権は設定行為によってのみ発生する権利であるのに対し、通常実施権は設定許諾に限らず、公平の観念、既存設備の保護等の見地から法の規定によっても発生する権利である点で相違する。


権利の性質

 専用実施権は物権的性質を有するのに対し(特77条2項)、通常実施権は債権的性質を有する(特78条2項)。よって、専用実施権は同一範囲で重複設定できないが、通常実施権は同一範囲で重複して生じうる。


権利の発生

 専用実施権は、設定行為を前提として設定の登録により発生する(特77条1項,特98条1項2号)。登録を要するのは、権利の帰属を明確にするためである。
 @許諾通常実施権は、特許権者又は専用実施権者の許諾行為により発生する(特77条4項,特78条1項)。権利者の意思により認められる権利だからである。
 A法定通常実施権は、特許法の規定により発生する(特35条,特79条〜特82条,特176条)。公平の観念、既存設備の保護、原意匠権者等の保護のためである。
 B裁定通常実施権は、特許庁長官又は経済産業大臣による裁定を前提に裁定の謄本送達により発生する(特83条,特92条,特93条,特87条)。第三者の実施の確保、利用発明の実施確保、公益の増進のためである。
 C通常実施権は、登録が第三者対抗要件であり、効力発生要件ではない(特99条3項)。


権利の主体及び対象

 両権利共に、権利主体は、権利能力がある自然人又は法人であり、対象は、特許発明(特2条2項)である。

権利の効力

 @専用実施権は設定行為で定めた範囲内で独占排他的効力を有する(特77条2項)、対して通常実施権は独占排他的効力を有しない(特78条2項)。すなわち、専用実施権は、特許発明を業として独占的に実施でき、特許権者であっても設定範囲内で業としても実施はできない(特68条但書)。また、侵害行為に対して差止請求権(特100条)、損害賠償請求権(民709条)等の民事上の救済及び侵害罪(特196条)等の刑事責任を追及できる。一方通常実施権は、一定範囲内で特許発明を業として実施できるのみであり(特78条2項)、特許権者の実施を排除できず、侵害に対する救済もない。
 A両権利共に、その効力が制限される場合がある(特69条,特72条等)。
 B専用実施権者は、通常実施権を許諾することができるが(特77条4項)、通常実施権者にはかかる許諾が認められない。
 C両権利共に、原則として質権を設定することができる(特77条4項,特94条2項)。但し、特83条,特92条,特93条の裁定通常実施権については、強制的に通常実施権を認める裁定の趣旨から質権の設定は認められない(特94条2項)。
 D専用実施権が共有に係る場合は、各共有者は原則として他の共有者の同意なく実施できるのに対して(特77条5項で準用する特73条2項)、通常実施権が共有に係る場合は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ実施できないと解する。通常実施権については特73条2項の規定が準用されていないからである(特94条6項)。


権利の変更

 @両権利共に主体は移転により変更する。
 a.専用実施権の移転は、実施の事業と共にする等の一定の場合に限り行うことができる(特77条3項)。新たな権利者となる者の資本力等により特許権者等の利益が不測に変動することを防止するためである。なお、権利の帰属関係を明確にするために、一般承継の場合を除き、専用実施権の移転は登録が効力発生要件である(特98条1項)。
 b.通常実施権の移転は、原則として専用実施権と同様に行うことができるが(特94条1項)、裁定通常実施権の移転は所定の場合に制限される(特94条3項,4項)。なお、通常実施権の移転の登録は、第三者対抗要件である(特99条3項)。
 A両権利共に、契約の変更、訂正(特120条の4第2項,特134条2項)、訂正審決の確定(特128条)等により変更する。


権利の消滅

 @両権利共に特許権の消滅、設定期間の満了、契約の解除、放棄、混同、実施権の取消等により消滅する。
 A裁定通常実施権は、失効、取消によっても消滅する(特89条,特90条)。義務の不履行、怠慢に対する制裁のためである。
 B特79条,特80条,特176条の法定通常実施権は、事業の廃止によっても消滅する。事業設備保護の必要がなくなるからである。
 C後願特許権者等の裁定通常実施権は(特92条3項)、当該特許権等が実施の事業と分離して移転したときにも消滅する(特94条4項)。
 D両権利共に、放棄については一定の者の承諾が必要である(特97条2項,3項)。
 E専用実施権の消滅は原則として登録が効力発生要件であるのに対して(特98条1項2号)、通常実施権の消滅は登録が第三者対抗要件である(特99条3項)。




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