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 論文の書き方は人それぞれであり、問題によっても異なります。下記内容は、必要最小限にまとめてあり、これだけを書けば合格点が付くというものではありません。ですので、あくまで論文のまとめ方の参考としてお使い下さい。
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商標権の侵害(商25条)

 商標権の侵害とは、正当な理由又は権限なき第三者が、登録商標又はそれに類似する商標を使用すること又は登録防護標章を使用すること、及び、一定の予備的行為をすることをいう(商25条,商37条,商67条)。


侵害の成立要件

 @商標権が有効に存在することが必要である。
 A正当な理由又は権限なき第三者による使用が必要である。正当な理由又は権限とは、使用権(商30条,商31条)や商標権の効力が及ばない範囲の使用(商26条)等である。
 B第三者が、登録商標の使用、すなわち専用権に対する侵害(商25条)、登録商標の類似範囲の使用、すなわち禁止権に対する侵害(商37条1号)、専用権及び禁止権に対する一定の予備的行為(商37条2号〜8号)、登録防護標章の使用及びその予備的行為(商67条)をすることを要する。


専用権の侵害

 指定商品又は指定役務についての登録商標の使用は、専用権の侵害に該当する(商25条)。
 @指定商品又は指定役務とは、商6条1項の規定により指定した商品又は役務のことをいう。また、登録商標とは、商標登録を受けている商標をいい(商2条2項)、いわゆる色違い類似商標(商70条1項)も含まれる。また、使用とは、具体的には商2条3項に規定されている行為をいう。
 A指定商品等に付された登録商標を剥奪抹消し、代わりに自己の商標を付す行為は、文理上は使用には該当しないが商標権の侵害であると解する。商標の標識としての機能を中途で抹殺するからである。
 B登録商標を使用した商品等を正当権利者から購入した者がそれを転売する行為は、文理上は使用に該当するが商標権の侵害にはならないと解する。指定商品等と商標とが結合された状態で流通する限りは、商標権者の意思に従って登録商標が使用されていると考えられるからである。


禁止権の侵害

 登録商標の類似範囲を出所混同が生じる範囲と擬制して、第三者の使用を禁止している(商37条1号)。類似する商標とは、同一又は類似商品等に使用すると出所混同を生ずるほどに近似している商標をいう。また、類似する商品又は役務とは、同一又は類似商標の使用で出所混同を生じるほど近似する商品又は役務をいい、商品と役務が類似する場合もある(商2条6項)。


間接侵害

 一定の侵害の予備的行為は商標権の侵害とされる(商37条2号〜8号)。侵害の蓋然性が高い行為を侵害と擬制し、商標権保護の万全を期すためである。


登録防護標章

 登録防護標章の指定商品等についての使用及びその予備的行為は商標権の侵害とされる(商67条)。著名登録商標においては、非類似の範囲であっても出所混同が生ずる場合があることに鑑み、商標権の禁止権的効力を拡大したものである。なお、保護が行き過ぎとなるため、防護標章の類似範囲での使用は侵害とはならない。


その他

 形式的には、侵害となるにしても、商標が自他商品等識別機能を発揮するような態様で用いられておらず、登録商標の機能を害しないことが明らかな場合、商標権の侵害とはならないと解する。


民事的救済、刑事的罰則

 @差止請求権(商36条1項)。商標権が侵害又は侵害のおそれがある場合、侵害の停止、予防行為を請求できる。故意過失が不要であり、将来効を有する点で有効な措置である。
 A損害賠償請求(民709条)。故意又は過失により損害を受けた場合に、その賠償を請求することができる。過失の推定等の特例規定が設けられている(準特103条等)。
 B不当利得返還請求(民703条、民704条)。法律上の原因なくして自己の損失において財産的利得を受けたものに対し、自己の受けた損害を限度として利得の返還を請求できる。消滅時効が10年であるので、損害賠償請求権が時効消滅した場合に特に有効な措置である。
 C信用回復措置請求権(準特106条)。侵害により業務上の信用が害された場合、その回復に必要な措置を命ずることを裁判所に請求できる。業務上の信用の保護を目的とする商標法では、特に意義が大きい。
 D故意により商標権を侵害した場合、侵害罪が適用される(商78条)。刑罰による威嚇によって、侵害を予防するためである。


具体例

 @形状と屋号の組合せから成る商標において、形状のみを模倣した者及び屋号のみを模倣した者の両者を侵害とすることはできない。類似の範囲を考慮したとしても、形状に特徴がある場合は屋号のみ模倣した者は侵害とならず、屋号に特徴がある場合は形状のみ模倣した者は侵害とならず、形状及び屋号の組合せに特徴がある場合は両者とも侵害とならないからである。
 A機器の内部であっても流通過程において内部を視認される可能性がある場合は、部品の登録商標の侵害となるが、視認されない場合(識別力を有しない場合)は侵害とはならない。つまり、内部が視認される可能性があれば、自他識別機能を保持しているといえ、侵害となる。
 B著名なマンガのキャラクターを無断で商標登録をした場合は、著名性を無償で使用していると認められ権利濫用として権利行使できない。客観的に公正な競業秩序を乱すからである。
 C意匠的に使用されている標章が、自他識別機能を有する標章としても使用されている場合には、商標の使用として商標権侵害が成立しうる。意匠となり得る模様などであっても、それが自他識別機能を有する標章として使用されている限り、商標としての使用がなされているものといえる。
 D商品の販売促進用の物品(ノベルティ)は、それ自体が取引の目的とされていているものではないので、それ自体が商品ではなく、商品の広告媒体に過ぎない(楽器の販促用Tシャツに、Tシャツを指定商品とする他人の登録商標を付しても侵害とはならない)。
 E真正商品を小分けして商標を付す行為は、品質保証機能を害するため商標権を侵害する。また、商標が付された商品を改造して販売する行為は、商品の出所表示機能、品質保証機能を害するため商標権を侵害する。


関連事項

 @いわゆる真正商品を転売する行為は出所の混同が生じないため、商標権者の意思に従って登録商標が使用されているといえ、商標の諸機能が害されていないので侵害行為には当たらない。一方、商品に改変を加えた物を販売する行為は、商標権者が商品の品質を保証することができないため、商標の品質保証機能を害し商標権の侵害に当たる。但し、登録商標のそばに改変を加えたことを目立つように表示した場合は、登録商標が出所表示機能を発揮しないため、商標の諸機能が害されていないので侵害行為には当たらない。
 A中身が商標権自身の製品で且つ新品であった場合であったとしても、指定商品の包装に登録商標を付したものを販売する目的で所持する行為は、侵害に該当すると解する。当該包装が専ら運搬用又は商品保護用であっても、商品の包装にあたるからである。
 B除斥期間(商47条)は、商標登録の無効の審判が請求されることなく除斥期間が経過したときは、商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために、商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにあると解される。このような規定の趣旨からすると、本来は商標登録を受けられなかった商標は、その有効性を早期に確定させて商標権者を保護すべき強い要請があるわけではない。よって、除斥期間内に商標登録の無効の審判が請求され、審判請求書に当該商標登録が商4条1項15号の規定に違反する旨の記載がありさえすれば、その規定に該当すべき具体的な事実関係等に関する主張が記載されていることまでは要しないと解する(最高裁H15(行ヒ)353号)。


真正商品の並行輸入

 外国で適法に販売された商標が付された商品を輸入する行為は、商標の機能を侵害しないので権利侵害とはならないと解される。具体的には、形式的に商標権の侵害となる場合であっても、以下の三要件を満たす場合は真正商品の並行輸入に該当し、商標権侵害とはならない。
 a.当該商標が、外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり、
 b.当該外国における商標権者とわが国の商標権者とが同一人であるか又は法律的もしくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標がわが国の登録商標と同一の出所を表示するものであって、
 c.わが国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行う得る立場にあることから、当該商品とわが国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保障する品質において実質的に差異がない場合。




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