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地域団体商標(商7条の2)

 地域団体商標制度とは、地域の名称及び商品又は役務の名称等からなる商標について、一定の範囲で周知となった場合に事業共同組合等が地域団体商標として登録することを認める制度をいう(商7条の2)。
 地域ブランドとしては、地域名と商標又は役務名を組み合わせた商標が用いられることが多い。しかし、このような商標を文字商標として登録しようとしても、原則として識別力がないとして登録を受ける事ができなかった(商3条1項3号,6号)。
 このため、登録を受けるためには、使用の結果として全国的な知名度を得るか(商3条2項)、識別力のある図形や文字と組み合わせた場合に限られていた。しかし、知名度を獲得するまでの第三者の使用や、同一の文字だけの使用を排除できなかった。
 そこで、地域ブランドを適切に保護することにより、競争力の強化と地域経済の活性化を支援するために、地域団体商標制度が設けられた(商7条の2)。


主体的要件

 @法人格を有し、事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合であることを要する(商7条の2第1項)。法人格が要求されるのは、権利能力を有することが財産権の主体となる前提だからである。
 また、設立準拠法において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあることを要する(同項)。可能な限り多くの地域事業者に商標の使用を認めることが適当だからである。
 なお、事業共同組合その他の特別の法律により設立された組合とは、事業協同組合、農業協同組合、漁業共同組合等である。
 Aまたは、上記に相当する外国の法人であることを要する。
 B団体商標と異なり民法34条の規定により設立された社団法人が含まれていないが、これは、社団法人の構成員たる資格を有する者の加入の自由に関する規定がないためである。


客体的要件

 @構成員に使用をさせる商標であることを要する(商7条の2第1項柱書)。地域団体商標は、団体商標と同様に、事業者を構成員に有する団体がその構成員に使用をさせる商標であるためである。
 A地域の名称及び商品又は役務の名称等からなる文字商標であることを要する(商7条の2第1項各号)。図形等と組み合わされた商標や特殊な文字により表示された商標のような元々識別力を有する商標については、そもそも商3条1項各号に該当しないためである。なお、通常の商標登録出願又は団体商標登録出願に変更することで(商11条)、登録を受け得る。
 B商標中の商品又は役務の名称はその指定商品又は指定役務と一致していることが必要である。よって、地域団体商標中の商品又は役務の名称と異なる商品又は役務を指定商品又は指定役務とすることはできない。例えば、「〇〇りんご」との商標について、「りんごジュース」や「りんごケーキ」を指定商品とすることはできず、商4条1項16号で拒絶される。
 C地域の名称が商品と密接な関連性を有していることを要する(商7条の2第2項)。地域団体商標は地域と密接な関連性を有する商品、役務について、他の地域の商品、役務との差別化を図るものであり、出願された商標が地域と関連しない商品又は役務について使用されるような場合にまで商標登録を認める必要が無いからである。
 D周知となっていることを要する(商7条の2第1項柱書)。第三者による自由な使用を制限してまでも商標を保護すべきであるといえる程度に、当該商標に信用が蓄積されていることを求めるためである。なお、商3条2項よりも緩和された要件で商標の登録を認めるものであることから、全国的な周知性までは必要とされない。例えば隣接都道府県に及ぶ程度の需要者に認識されていることで足りると考えられる。なお、日本国内において周知となっていることが要件とされる。
 E他の登録要件(商4条等)を満たすことを要する。また、商3条1項1号,2号については通常の商標登録出願と同様に適用される(商7条の2第1項柱書かっこ書)。何人も使用できるようにしておく必要性が特に高いためである。


同1号

 「普通名称」とは、取引界においてその名称が特定の業務を営む者から流出した商品又は特定の業務を営む者から提供された役務を指称するのではなく、その商品又は役務の一般的な名称であると意識されるに至っているものをいう。


同2号

 「慣用名称」とは、商品又は役務の普通名称とはいえないが、商品又は役務を表す名称として需要者、取引者の間で慣用されている名称をいう。


同3号

 「商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字」とは、「本場」、「特産」、「名産」などの文字が該当すると考えられる。いわゆる地域ブランドとして使用されている商標には、商品が特定の地域で生産されたものであることを端的に示すために、「本場」等の文字が付加された商標があるためである。なお、「本家」、「元祖」、「特選」といった文字は該当しない。よって、これらの文字が加わった商標は地域団体商標として登録を受けることはできない。


手続的要件

 出願人が主体要件を満たすことを証明する書面及び出願された商標中の地域の名称が出願人が出願前から当該商標を使用していた商品の産地等であることを証明するため必要な書類を提出しなければならない(商7条の2第4項)。


効果

 @地域団体構成員は、、地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する(商31条の2)。団体商標の構成員が有する使用権と基本的に同様の取扱いである。
 A地域団体商標に係る商標権については、専用使用権を設定することができない(商30条1項但書)。商標権の全部について専用使用権を設定した場合に、譲渡を認めたのと同じ効果を生じることとなり主体要件を設けた趣旨を没却するからである。
 B地域団体商標に係る商標権については譲渡することができない(商24条の2)。商標権の自由な譲渡を認めた場合には主体要件を定めた趣旨を失うからである。但し、一般承継の場合には移転が可能である。
 C商7条の2第4項の証明書面不提出の場合、又は、証明書面により商7条の2第1項の団体と認められなかった場合は、補正命令が出され(準特17条3項)出願却下され得る。


その他

 @地域団体商標の商標権者である団体は、構成員による商標の使用の条件を定めることができ、団体の構成員は当該条件に従って、指定商品(指定役務)について、地域団体商標にかかる登録商標の使用をする権利を有する(商31条の2第1項)。
 A地域団体商標の商標登録出願が商7条の2第1項に規定する登録要件を満たさない場合、拒絶理由(商15条)、異議理由(商43条の2)又は無効理由(商46条)となる。また、後発的に周知性を失った場合、商標権者が主体的要件を満たさなくなった場合、商7条の2第1項各号に掲げる商標に該当しなくなった場合には、無効理由となる(商46条1項6号)。
 B地域団体商標の登録要件を満たしていなかった場合は、無効審判請求を5年間の除斥期間の対象とならない(商47条1項)。地域団体商標として登録される商標は、広く使用が欲されるものであり独占に適さないものであるから、過誤により登録されてしまった場合には、商標の独占を認める理由はないためである。但し、商標登録後に地域団体商標が周知となっている場合には、5年間の除斥期間の対象となる(商47条2項)。その後の営業努力等によって事後的に周知性を獲得している場合にまで、常に無効審判請求の対象とされることは適当でないためである。
 C他人の地域団体商標と同一又は類似の商標を同一又は類似の商品又は役務について不正競争の目的でなく使用している者は、その商標が周知となっていなくても、先使用権を有する(商32条の2)。周知性を獲得していないからといって先使用権を認めないとすると、権利者と第三者の利益の衡平を失するからである。
 D地域団体商標の商標登録出願について、通常商標又は団体商標の商標登録出願へ変更できる(商11条)。地域団体商標の商標登録出願をしたが、既に全国的な知名度を獲得している場合に、通常商標又は団体商標として登録を受けることを可能にするためである。但し、国際商標登録出願については、出願変更が認められない(商68条の13)。




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