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平成19年度弁理士試験論文式筆記試験問題[国際私法]

問題

 日本に本拠を有する日本法人X会社は、A国に本拠を有するA国法人Y会社との間で売買 契約を締結した。この契約書には、Yの子会社Z(B国法人)がB国にある工場で製造する家庭用電気製品をいったんYが購入し、それをYからXが購入してXのブランドをつけて日本において販売すること、売買代金は日本円で支払うこと等がC国の言語で記載されていた。そして、この契約書には、準拠法を定めた条項は置かれていなかった。
 後にX・Y間において代金支払い遅延をめぐって紛争が生じたとして、これについて適用すべき準拠法は何か。



 当事者自治の趣旨により、契約に準拠法が明示されている場合は、明示された国の法律が当該契約の準拠法となる(通則法7条1項)。
 本問の場合、契約書には、準拠法を定めた条項は置かれていない。この点、準拠法の明示が無くとも、契約に関する諸事情から当事者が黙示により準拠法を指定したと認められる場合には、黙示に指定された国の法律が当該契約の準拠法となると解される。しかし、本問の売買契約は、日本法人X会社と、A国法人Y会社との間で締結されたものであり、この契約書には、売買代金は日本円で支払うことがC国の言語で記載されている。そして、これらの諸事情からは、当事者が黙示により準拠法を指定したという意思が認められない。よって、本問の売買契約においては、黙示による準拠法の指定がないと解される。
 このように明示又は黙示による準拠法の指定が存在しない場合、当該契約の準拠法は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による(通則法8条1項)。そして、法律行為において特徴的な給付を当事者の一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法を最密接関係地法と推定される(通則法8条2項)。契約関係の重心が職業的行為を引き受ける者の側にあると考えられるからである。
 この点、通常は、職業的行為は金銭の支払いを対価として行われるものであり、金銭債権の反対債権がそれにあたる。そのため、通常は、売買契約の売主側であるYの行為が「特徴的な給付」となる。
 しかし、本問においては、Yの子会社Zが製造する家庭用電気製品をいったんYが購入し、それをYからXが購入してXのブランドをつけて日本において販売する契約であり、いわゆるOEM契約である。そのため、特徴的給付を行うのは売主であるYであるが、買主であるXの常居所地法が最密接関係地法と解される。通則法8条2項では推定しているに過ぎず、他の法が最密接関係地法であるとされた場合には、推定が覆されるからである。
 よって、X・Y間において代金支払い遅延をめぐって紛争が生じた場合に適用すべき準拠法は、日本に本拠を有するXの常居所地法である日本国法であると解する。

以上


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