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平成18年度弁理士試験論文式筆記試験問題[国際私法]

問題

 A国に本拠を有するY会社は、A国籍を有しかつA国に住所を有するXを他社からスカウトしようと考え、たまたまB国に出張中であったXと極秘に接触してその場で雇用契約を締結した(本件雇用契約)。この雇用契約の契約書には、Xを5年間はYの東京支店の副支店長とすること、その後の勤務地は協議すること、報酬を5年間は一定の額とし、その後は協議すること等がA国の言語で記載されており、準拠法についての定めはなかった。Xは東京勤務を開始してからずっと日本に居住し、その間に東京支店の業績はやや向上した。しかし、Xが東京に来てから3年後、YはXの行為に問題があることを理由としてXに解雇を通知した(本件解雇)。Xが日本で提訴し、Yが応訴したため、日本の裁判所で裁判が行われることになった。
 日本からみると、本件雇用契約締結の段階において、その契約に適用すべき準拠法は何であったと考えられるか。
 本件解雇は有効か。なお、この解雇は、A国法及びB国法上は有効であるが、日本法上は権利濫用に当たり無効であるとする。



 1.本件雇用契約締結の段階における準拠法
 原則として、法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による(通則法7条)。しかし、本件雇用契約には準拠法についての定めがない、そのため、黙示の合意があったか否かが問題となる。準拠法の明示が無くとも、契約に関する諸事情から当事者が黙示により準拠法を指定したと認められる場合には、黙示に指定された国の法律が当該雇用契約の準拠法となるからである。
 本問の場合、本件雇用契約締結の段階において、Y会社はA国に本拠を有し、XはA国籍を有しかつA国に住所を有していた。さらに、本件雇用契約の契約書は、A国の言語で記載されていた。従って、これらの諸事情から、Y会社とXとの間には本件雇用契約の準拠法としてA国法を選択するという黙示の合意があったと解される。よって、本件雇用契約締結の段階において、当該契約に適用すべき準拠法はA国法であったと解される。
 なお、B国はたまたま雇用契約を締結した地であるに過ぎず、Y会社とXとの間には本件雇用契約の準拠法としてB国法を選択するという黙示の合意がなかったと解される。
 2.本件解雇の有効性
 労働契約の成立及び効力について通則法7条の規定による選択により適用すべき法が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用される(通則法8条1項)。
 そして、当該労働契約に最も密接な関係がある地の法は、当該労働契約において労務を提供すべき地の法であると推定される(通則法8条2項)。
 本問においては、Xは東京勤務をしており、労務を提供すべき地の法は日本国法である。そして、本件解雇はA国法上は有効であるが、日本国法上は権利濫用に当たり無効である。よって、労働者であるXが、日本国法中の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者であるY会社に対し表示したときは、本件解雇は無効となると解する。

以上


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