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平成16年度弁理士試験論文式筆記試験問題[国際私法]

問題

 国際私法における「方式」とその準拠法について論じなさい。

 ※管理人注:本問は旧法令時代の出題です。そのため、当時は記載必要事項がもっと少なく、これほど多くの記載は必要ありませんでした。現在の法の適用に関する通則法においては、下記程度の記載は必要になると思われますが、これを試験時間内に書き切ることは不可能であると思います。今後は、本問のような形で方式を問う問題は出題されないと思われます。以下、解答例です。

 まず、方式とは、法律行為において当事者がその意思を表示する外部的形式をいい、法律行為が成立するための形式的な要件である。以下、国際私法における方式とその準拠法について述べる。
 1.法律行為の方式
 法律行為の方式とは、法律行為において当事者がその意思を表示すべき外部的形式のことをいう。具体的には、法律行為が有効となるために、書面が必要か否かといった問題である。そして、法律行為の方式の準拠法は、当該法律行為の成立について適用すべき法によるのが原則である(通則法10条1項)。方式も法律行為の成立要件の1つであるので、準拠法を一致させるべきだからである。そのため、法律行為の方式の準拠法は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。(通則法7条)。また、当事者による準拠法の選択がない場合は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による(通則法8条)。但し、当該法律行為の後に所定の変更がされた場合(通則法9条)にあっては、その変更前の法による。
 例外として、行為地法に適合する方式に従っていれば有効とされる(通則法10条2項)。方式について厳格に効力の準拠法を要求すると、準拠法所属国以外の国で法律行為を行うことが困難であるためである。また、方式が行為地法上有効であれば、当事者はその契約が有効であると期待するので、当事者の正当な期待を保護して取引の安全を確保するためである。
 但し、この例外規定は、動産又は不動産に関する物権及びその他の登記をすべき権利を設定し又は処分する法律行為の方式については、適用されない(通則法10条5項)。このような場合に登記を経ずに権利の設定又は移転を認めることは、問題が大きいからである。
 2.異法地域者間の法律行為の方式
 異法地域者間の法律行為の方式の準拠法については、法を異にする地に在る者に対してされた意思表示について、その通知を発した地を行為地とみなす(通則法10条3項)。行為地法によるとした趣旨が当事者の便宜という点にあることから、当事者が実際に行為を行う発信地を行為地としたのである。また、法を異にする地に在る者の間で締結された契約の方式については、申込みの通知を発した地の法又は承諾の通知を発した地の法のいずれかに適合する契約の方式は、有効である(通則法10条4項)。いずれの地の法によることも認めることで、当事者の便宜を図るためである。
 3.消費者契約の方式
 消費者契約の方式の準拠法については、原則として当該法律行為の成立について適用すべき法による(通則法10条)。この点、法律行為の方式については、選択的連結を採用している。しかし、消費者契約の方式の準拠法にも選択的連結を採用すると、契約の成立に厳格な方式を要求する消費者保護の趣旨に反する場合がある。そこで、一定の場合には、消費者の常居所地法による(通則法11条)。
 4.その他の方式
 遺言の方式の準拠法については、遺言の方式の準拠法に関する法律に従って準拠法が指定される。具体的には、@行為地法、A遺言者が遺言の成立又は死亡時に国籍を有していた国の法、B遺言者が遺言の成立又は死亡時に住所を有していた地の法、C遺言者が遺言の成立又は死亡時に常居所を有していた地の法、D不動産に関する遺言についてはその不動産の所在地法、のうちの一つに適合すれば有効となる。
 また、婚姻の方式の準拠法については、婚姻挙行地法が準拠法となる(通側法24条2項)。婚姻の方式は、婚姻挙行地の公序と密接に関連するからである。また、婚姻挙行地において婚姻が始めて婚姻と社会的に公認されるので、婚姻挙行地において婚姻が公認されるためには、その地の定める方式に従う必要があるからである。さらに、婚姻挙行地が婚姻の成立時期が明確であり、婚姻の当事者に共通するからである。例外的に、当事者の一方の本国法によれば有効な方式の場合、当該方式は有効となる(通側法24条3項)。つまり、通側法では婚姻挙行地と当事者の一方の本国法との選択適用主義が採用されている。婚姻をなるべく容易に成立させるためである。
 但し、日本において日本人が外国人と婚姻を挙行する場合には、当該外国人の本国法の定める方式によることはできない(通側法24条3項但書)。婚姻当事者の一方である外国人の本国法上の方式により婚姻が成立するとなると、本人の婚姻の事実が日本の戸籍に登録されないことになるからである。
 また、夫婦財産制、離婚、認知、養子縁組等の方式は、法律行為の成立を定める法又は法律行為地法による(通側法34条)。当該法律行為の方式は、法律行為の成立と密接に関係するからである。また、方式について厳格に成立の準拠法に従わなければならないとすると、準拠法所属国以外の国で当該法律行為を行うことが困難となるからである。

以上


オリジナルレジュメ



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