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意匠法7条-8条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

意匠法7条(一意匠一出願)

 意匠登録出願は、経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。

 ・審査手続きの煩雑化、権利範囲の不明確化を防止するためである。
 ・一物品につき一形態との意味である。意匠は物品の美的概観であるため、一物品は一つのまとまった形態を有すると考えられるからである。
 ・二以上の意匠を包含する意匠登録出願は分割するのが原則であるが、二以上の意匠のうち不要とする意匠を削除する補正をすることもできる。
 ・部分意匠の意匠に係る物品が、経済産業省令で定める物品の区分のいずれにも属さない場合には、その物品の使用の目的、使用の状態等物品の理解を助けることができるような説明が、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄に記載されていなければならない。
 ・物理的に分離した二以上の部分であっても、対称となる形態、一組となる形態等、関連性をもって創作されるものは、形態的な一体性が認められる。
 ・物品の区分によらない願書の「意匠に係る物品」の欄の記載の例:
 @商標名、何何式等固有名詞を付したもの
 A総括名称を用いたもの(例、雨戸と記載するのを建築用品と記載する場合等)
 B構造又は作用効果を付したもの(例、何何装置、何何方法)
 C省略された物品の区分(例、8ミリ)
 D外国文字を用いたもの
 E日本語化されていない外国語を用いたもの
 F用途を明確に示していないもの(例、ブロック)
 G組、セット、一揃、ユニット(歯科用ユニットを除く。)、一対、一足等の語を用いたもの
 H形状、模様及び色彩に関する名称を付したもの
 I材質名を付したもの(例、何何製)ただし、普通名称化している場合は除く。
 J物品の区分の後に「の部分」、「の部分意匠」等の語を付したもの(靴下のかかと部分、靴下のかかとの部分意匠)の記載があるもの
 ・デザイン上の一物品について、本来多物品であるが、デザイン上両者が一体となっているものは一物品とされる(例えば、全体として舞妓の形になる櫛と櫛ケース)。
 ・ダース物について、同一物品の数を単に揃えたに過ぎないものは一物品とされる(例えば、コップ1ダース)。
 ・物品の配列について、同種又は異種物品の配列に過ぎない場合は多物品である(例えば、缶詰の詰め合わせ)。
 ・包装と中身について、中身と包装はそれぞれ独立した個性を有するので多物品である(例えば、キャラメルと包装紙)。
 ・非食物が付加されている食品について、取引実情により一物品とされる場合がある(例えば、棒付キャンディ)。
 ・部品について、互換性及び取引性があれば一物品である(例えば、自転車のペダル)。
 ・多用途物品について、一体となって取引される場合は一物品となる(例えば、時計付ラジオや手提げ袋兼空気枕)。
 ・一物品の類型:
 @単一物:形態上単一な一体をなし、構成部分が個性を持たないもの(例えば、鉛筆、消しゴム)
 A合成物:各構成部分が個性を失わないが、結合して単一の形態をなしているもの(例えば、宝石つき指輪)
 B集合物:個々の物が単一の目的のために集合し、取引上一体として扱われるもの(例えば、背広の上下)
 ・集合物の類型:
 @機能的形態的一体性を有する物:各構成部分が備わって初めて物品として機能する物(例えば、鞄のバックル)、各構成部分がその機能に由来して固定的な組み合わせの態様を有し、形態においても必然的に統一的な形態を呈する物(例えば、蓋と本体とからなる鍋)、又は、各物品が形態と機能の相互連関によって、いずれを欠く場合においても物品として機能しない物(例えば、ケースがブラシの柄を構成するケースとブラシ)がある。
 A形態的一体性を有する物:構成部分それぞれが個性を失わず、形態上単一な存在となる物(例えば、棒付チョコレート)がある。
 B機能的一体性を有する物:一対で初めて物品として機能する物(例えば、靴下)、又は、それぞれが独立した形態を有し別個の機能と役割をもつが、それら全体で一の物品が完成する物(例えば、コーヒー椀と受け皿)がある。
 ・一つの部分意匠の意匠に係る物品の中に、物理的に分離した二以上の部分が含まれているものは、原則として一意匠と認められない。但し、対称となる形態、一組となる形態等、関連性をもって創作されるものは、形態的な一体性が認められる。また、全体として一つの機能を果たすことから一体的に創作される関係にあるものは、機能的な一体性が認められる。例えば、理髪用はさみのもち手部分、携帯電話操作ボタンなどである。
 ・複数の画像を含む意匠について、変化前の画像と変化後の画像が物品の同一機能のための画像であり、かつ、変化前の画像と変化後の画像とが形態的な関連性がある画像であると認められれば、これら複数の画像を含んだ状態で一つの意匠として認められる。
 ・形態的な関連性が認められる代表例
 @図形等が、それ自体はほとんど形状変化を伴わずに、画像内で、連続的に移動、拡大、縮小、回転、色彩変化するもの。
 A同一の図形等が、画像内で連続的に増減(現出、消失)するもの。
 B機器の使用状態に応じて図形等の配置の向きや縦横比を変更するもの。図形等が、それ自体はほとんど形状変化を伴わずに、画像内で配置を変更するもの。
 C遷移前の画像の一部を残しつつ新たな画像が漸次的に現れ、最終的に新たな画像に遷移するもの。変化の最初と最後では図形等の形態が異なるものの、その変化途中の画像の開示によって、当該図形等が漸次的に変化すると認められるもの。
 D画像のヘッダー部分や背景に同一の図形等からなる共通のモチーフが連続的に使用されているもの。
 E操作に連動して、画像内に新たな図形等が出現又は消失するもの。(プルダウンメニュー、サブメニュー、サブウインドウの展開、アイコン等に関連したポップアップ表示の現出又は消失等)
 ・変化の前後の画像の図形等に共通性がない(又は共通性が極めて小さい)場合等、変化の前後の画像の形態にまとまりがない場合には、形態的関連性が認められず、一意匠とは認められない。
 ・物品が有する一の機能を発揮できる状態にするために複数の連続する入力指示(選択指示)を行う必要がある場合等、操作の連続性が認められる場合には、これらの入力指示(選択指示)と対応して連続的に変化する一連の画像は、物品の同一機能のための画像と認められる。


意匠法8条(組物の意匠)

 同時に使用される二以上の物品であつて経済産業省令で定めるもの(以下「組物」という。)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる。

 ・特定目的のために供される複数の物品群について全体的に統一感を持たせるようにデザインを行うシステムデザインを保護するための規定である。例えば、松竹梅の模様入り煎茶セット(観念的関連)、バラの花の模様を施したディナーセット(同一の模様で統一又は全体で一つの模様を形成)等である。
 ・経済産業省令で定める組物は限定列挙である。例えば、一組の大工道具セット等の、別表第2に記載されていない複数の物品について出願された場合は、意8条に反するとして拒絶理由が通知される。
 ・二以上の物品なので、同種複数物品(例えば、複数の椅子からなる一組の椅子セット)であってもよい。
 ・構成物品ごとの登録要件具備は不要であり、組物全体として権利行使できるのみで個々の物品毎には権利行使できない。
 ・経済産業省令で定める物であること、構成物品が適当であること、組物全体として統一があること、の要件に違反する場合は拒絶理由に該当する。但し、無効理由とはならない。
 ・意5条1号,2号を除き組物全体として登録要件が判断される。登録要件は構成物品毎に審査されるにも関らず、構成物品毎に権利行使できないとすると、登録要件と権利との不整合が生じるからである。但し、構成物品を公知にした場合は、創作容易であるとして拒絶されるおそれがあるので、新規性喪失の例外の適用を受けることが望ましい。なお、構成物品のみが意5条1号,2号に該当する場合でも組物全体として該当するものとして扱われる。
 ・先願が構成物品で、後願が組物の場合は双方が登録されるが意26条で調整される。なお、逆の場合は意3条1項又は意3条の2が適用される。
 ・各構成物品以外の物品を含むものについては、その加えられた物品が各構成物品と同時に使用されるものであり、かつ各構成物品に付随する範囲内の物品であるものの場合には、構成物品が適当なものと取り扱う。
 ・組物の各構成物品の図面だけでその組物の意匠を十分に表現することができるものは、構成物品毎にその意匠を十分表現できる一組の図面を作成すればよい。
 ・「統一」を示すために組み合わされた状態の図面が必要な組物については、同時に、全構成物品が組み合わされた状態において意匠を十分に表現することができる図面も作成する。
 ・組物の意匠が全体として関連意匠の要件を満たしている場合は、関連意匠として登録を受け得る。
 ・各構成物品を少なくとも各一品ずつ含み同時に使用される物については、構成物品が適当なものと認められる。
 ・組物として意8条の要件を満たす物は全体として一意匠であるので、分割することができない。逆に、組物が意8条の要件を満たさない場合は、分割することができる。
 ・組物の意匠については、第一国においてその構成物品が日本の組物と同様に一出願として出願されている場合にのみ、パリ条約による優先権等の主張の効果が認められる。
 ・組物の構成物品は、「構成物品」の欄内に同時に使用される物品として並記されている各構成物品を少なくとも各一品ずつ含み、各構成物品以外に加えられた物品が各構成物品と同時に使用されるものであり、かつ各構成物品に付随する範囲内の物品であるものの場合には、構成物品が適当なものと取り扱う。但し、「備考」の欄において注意書が付されている組物については、二種以上を最低限含む組み合わせによるものあるいはその組物の中の構成物品欄ごとの組み合わせによるものも、構成物品が適当なものと取り扱う。
 ・図面等に、@定められた構成物品以外の他の物品に係る意匠のみが記載されているもの、A定められた構成物品が少なくとも一品ずつ記載されていないもの、B不適切なその他の物品に係る意匠も記載されているもの、C一の意匠しか記載されていないものは、構成物品が適当であるものとは認められない。
 ・組物全体として統一があるものと認められる例:
 @構成物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合が同じような造形処理で表されている(全体の形状が一定の秩序、基調によって構成されている、それぞれに同じような特徴を持った形状が表されている)。
 A構成物品が全体として一つのまとまった形状又は模様を表されている(同じモチーフによる模様がそれぞれに同じような構成をもって表されている、同じ表現態様による模様がそれぞれに同じような構成をもって表されている、構成物品が集合して一つのまとまりある形状を構成している、又は、構成物品に表された模様が集合して一つのまとまった模様となっている)。
 B各構成物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合によって観念的に関連がある印象を与えられている(例えば、桃太郎の登場人物を模様として付した場合)。
 ・色彩それ自体の態様のみで組物全体としての統一が実現されているとは認められない。但し、形状、模様と結びつくことによって全体の統一を成り立たせることができる。
 ・組物の意匠に関する部分意匠登録出願は認められない。全体として統一のある組物を保護する趣旨から、物品の特徴ある部分の保護を目的とする部分意匠の制度とはなじまないからである。


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