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意匠法3条の2-5条

 初学者の方は勉強を始める前に、特許庁HPで公開されている初心者向け知的財産権制度説明会のテキストを見て、知的財産権制度の概要を勉強して下さい。なお、地域におけるサービスに関する項目と、様式及び参考に関する項目は、読まなくとも結構です。
 以下、太字部が条文になります。小文字部が条文以外の暗記項目です。

意匠法3条の2

 意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。

 ・みなし公知の規定である。H18年改正により先願と後願の出願人が同一の場合は、適用されない。同一の者か否かの判断は、査定の謄本又は拒絶の理由の通知書の送達時(査定時)における願書の記載に基づいて行う。なお、共同出願の場合、全ての出願人が一致することをいう。
 ・みなし公知の制度が導入されのは、@先願の意匠の一部と同一又は類似である意匠については、公開前に出願された場合であっても新しい意匠を創作したものとすることはできないので、このような意匠について意匠権を与えることは意匠制度の趣旨からみて妥当でない為、また、A完成品の意匠の先願の出願後、公開前に当該完成品を構成する部品の意匠が出願された場合に、いずれも登録されるとすると権利関係の錯綜を招来する為、である。
 ・後願の創作者が先願と同じであっても拒絶される。しかし、先願の出願日の翌日からその公報発行の日前までに同一出願人が出願した場合には、拒絶されない。デザイン開発においては、先に製品全体の外観デザインが完成し、その後個々の構成物品の詳細のデザインが決定されるという開発実体がある。また、市場において成功した商品については、需要を喚起する独自性の高い創作部分が模倣の対象となりやすい。このため、独自性の高い自己の製品デザインの保護を強化するために、先願意匠と、その一部に係る部品又は部分意匠との双方が登録を受けられるように改正したからである。
 ・先願意匠の全体に類似しなくとも、一部に類似する場合は拒絶される。
 ・取下、放棄、拒絶査定確定(協議不調によるものを除く)に係る先願は公報に掲載されないので、みなし公知の対象にならない。
 ・「一部と」とあるので、先願が部分意匠又は構成物品であり後願が全体意匠又は組物である場合の後願は拒絶されない。この場合、意26条で調整される。なお、後願の全体意匠が、先願の部分意匠の意匠に係る物品全体の形態を表したものである場合は、後願の意匠は、先願の意匠の一部とは取り扱わない。
 ・「当初」の記載はない。意匠の場合は、補正をしても同一性が維持されるからである。また、分割変更出願であっても遡及日を基準に後願を排除できる。
 ・先願意匠が登録又は登録査定となっても、即時に意3条の2の適用がある訳ではない。また、協議不調による拒絶査定に係る先願は公報に掲載される。
 ・先願意匠の中の後願部分意匠の部分に相当する一部と、後願部分意匠の部分との用途及び機能が同一又は類似であって、それぞれの形態が同一又は類似である場合、両者は類似である。
 ・秘密期間に出願された後日出願は、同一出願人であっても拒絶される。秘密意匠請求期間中に出願されたものまで許容すると、長期間にわたる後日出願が可能となり、実質的に権利期間の延長につながるからである。また、他人の出願意匠や公知意匠との間で権利関係の抵触が生じる蓋然性も高まるからである。
 ・願書の記載等に現された意匠とは、願書の「意匠に係る物品」の欄に記載された物品の区分に属する物品の形態として開示された意匠である。よって、意匠の理解を助けるために必要があるときに加える使用状態を示した図その他の参考図の中に記載されている先願に係る意匠として開示された意匠以外のものは、基礎となる資料とはしない。要旨の変更とならない範囲において補正がなされた場合に変動する可能性があり、このような不安定なものに基づいて後願を排除することは後願の意匠登録出願人に不利益となるため、又は意匠の理解を助けるためだけに説明的に加えられたものに創作の価値を認めて後願を排除することは意3条の2の規定の趣旨に反するためである。
 ・展開図、断面図、切断部端面図、拡大図、斜視図その他必要な図も、先願意匠を特定するための図となる。なお、組物の意匠の構成物品のそれぞれの一組の図面、部分意匠の「意匠登録を受けようとする部分」と「その他の部分」を含む一組の図面も開示意匠を特定するための図となる。
 ・意匠の一部とは、先願に係る意匠として開示された意匠の外観の中に含まれた一つの閉じられた領域をいい、物品の形状と模様又は色彩の結合からなる意匠の場合には、その結合した状態の意匠全体における一部を指し、意匠の構成要素である形状、模様又は色彩のみを観念的に分離したものは、意匠の一部とは取り扱わない。
 ・先願が秘密意匠の場合は、秘密請求期間の経過後で、掲載すべき事項のすべてが掲載された意匠公報の発行日後に拒絶の理由を通知をすることとし、それまでは待ち通知を発する。
 ・先願の意匠の一部とほとんどそのままのものが後願の部分意匠として出願されたときのように、後願の部分意匠が何ら新しい意匠の創作とは認められない場合にも適用される。
 ・先願意匠の中に、後願部分意匠の部分の全体の形態が開示されていること(全体の形態が開示されていなくとも、対比可能な程度に十分表されている場合を含む)が必要である。
 ・先願に係る意匠が全体意匠であるか部分意匠であるか、先願に係る物品と後願に係る物品とが同一又は類似であるか否かを問わない。先願意匠の中の後願部分意匠に相当する一部と、後願に係る物品との用途及び機能が同一又は類似であって、それぞれの形態が同一又は類似である場合、両者は類似する。
 ・先願が部分意匠の場合で、破線部分を含んだ全体の中に後願意匠に相当する部分が対比可能な程度に十分に表せれている場合には、本条適用の基礎となる。部分意匠の場合、意匠登録を受けようとしない部分(破線部等)は、具体的な形状模様等を特定しなくとも出願できるが、部分意匠登録を受けようとする部分全体について具体的な形状模様等を特定して出願することもできる。後者の場合、部分意匠を含んだ全体として現に創作された意匠の一態様を具体的に表していることから、その一部と同一又は類似の後願意匠を登録することは、新しい意匠の保護を図る意匠制度の趣旨に反するからである。つまり、意匠登録を受けようとする部分以外の「その他の部分」も、先願に係る意匠として開示された意匠を特定するための図となる。
 ・組物を構成する物品についてのそれぞれの一組の図面、構成物品に付随する物品に係る意匠についてのそれぞれの一組の図面、あるいは組み合わせた状態の一組の図面と、その他必要な図についても、先願に係る意匠として開示された意匠を特定するための図となる。
 ・のこぎりの先願全体意匠に対するのこぎりの柄の全体意匠、カップ及び皿の先願全体意匠に対するカップの全体意匠、のこぎりの柄の先願部分意匠に対するのこぎりの柄の全体意匠(先願図面にのこぎり全体の図面が開示されている場合)、ナイフ・フォーク・スプーンの一組のセットの先願組物の意匠に対するスプーンの全体意匠は、本条に該当する。
 ・意9条との相違は、@先願意匠の一部と同一類似であるかが問われること、A意匠公報に掲載された意匠が対象となること、B同日出願には適用が無いことである。

意匠法4条(意匠の新規性の喪失の例外)

第一項

 意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠は、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。

 ・絵画、風景写真を公開したのみでは意匠の新規性を喪失したとはいわないので、新規性の喪失の例外の適用は受けられない。
 ・形状・模様・色彩の結合した意匠が公知等になった場合、公知等になったそのままの意匠のみならず、これに内在する意匠が重畳的に公知等になったものと扱い、形状のみ、形状と模様等との結合の各意匠についても適用を受けられる。
 ・公開されたものはあくまでも意匠でなくてはならない。例えば、創作者の創作した意匠の一部として模様のみを公開した場合は公知となった「意匠」に該当しない。
 ・公開意匠Aについて例外適用を受ける旨の書面を提出した意匠Aを本意匠とする関連意匠の意匠A'は、例外適用を受けるための手続きがされていなければ公開意匠Aと類似するとして拒絶となる。なお、関連意匠の出願にあたり、公開意匠Aを証明する書面に記載し、例外適用が認められれば登録を受け得る。
 ・相互に類似する公開意匠A及びA'について、公開意匠AとA'、それぞれ同一の意匠A及びA'を例外適用を受ける手続きと共に出願し、証明する書面にはそれぞれの出願意匠と同一の公開意匠しか記載しなかった場合は、意匠Aの出願について例外適用を受けられるのは公開意匠Aのみであり、同様に、意匠A'の出願については公開意匠A'のみである。
 ・販売などにより複数回公知となった場合は、最初の公知のみについて立証すれば良い。但し、他の行為に基づいてさらに公知になった場合はこちらの立証も必要になると考える。 ・公開時における公開意匠についての意匠登録を受ける権利を有する者と出願人とが相違する場合には、公開後に、意匠登録を受ける権利が出願人に承継されている事実が明示されると共に証明される必要がある。
 ・関連意匠にのみ類似する意匠が公知となった場合、関連意匠のみに意匠の新規性の喪失の例外の適用を受けることができる。
 ・公開意匠と出願意匠とが同一、類似、非類似等、両意匠の関係がいかなるものかに関らず、要件具備により本規定の適用を受け得る。


第二項

 意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。

 ・意匠は人の目に触れればすぐに模倣される可能性があり、発明よりも意に反して公知になる機会が多い(意匠は物品の美的外観であるので模倣容易である)。また、意匠は(流行性があるので)、販売、展示、見本の配布等により売れ行きを打診してみて初めて一般の需要に適合するか否かの判定が可能である。また、発明や考案は公開されると社会の技術水準の一部となりその上に技術活動が積み重ねられていくものであり、これに権利を付与すると技術活動を阻害することになるが、意匠はそのような弊害がない(意匠は累進的進歩が少ない)。よって、特許、実案よりも広く規定している。
 ・意匠登録を受ける権利を有する者の行為には、試験、学術発表に限らず、販売、展示などを含む。
 ・外国で出願した意匠が公報に掲載された場合は、自己の行為に起因するとはいえないから適用できないと考える。


第三項

 前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 ・近年、出願前に自ら意匠を公開するケースが増加している。このため、本項の規定の適用を受けるために、意匠が公知になったことについて第三者からの証明を取得することに要する手間と時間が負担となっている。そこで、証明書の提出期間を出願の日から30日以内とした。
 ・書面は、願書と別葉であることが原則であるが、願書に記載しても差し支えない。


意匠法5条(意匠登録を受けることができない意匠)

第一項

 次に掲げる意匠については、第三条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

 ・「その他の部分」を含む、部分意匠の意匠に係る物品全体の形態を判断の対象とする。ただし、3号の規定の適用については、部分意匠の形状のみを判断の対象とする。

第一号

 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠

 ・組物の構成物品の一つが本号に該当する場合は、組物全体が本号に該当するとして拒絶される。
 ・「公衆の衛生を害するおそれがある」意匠については規定されていない。
 ・日本若しくは外国の元首の像、国旗、菊花紋章、外国の王室の紋章(類似するものを含む。)等を表した意匠は、公の秩序を害するおそれがある。ただし、模様として表された万国旗は含まれない。また、国や国家の尊厳を害すると共に個人に独占させることが好ましくないためである。
 ・部分意匠に係る意匠登録出願の、その他の部分のみが公序良俗に反する場合であっても、本号に該当すると考える。


第二号

 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠

 ・組物の構成物品の一つが本号に該当する場合は、組物全体が本号に該当するとして拒絶される。
 ・混同とは、出所の混同を意味する。物品相互間の混同は、類似となる。
 ・他人の著名な商標(紛らわしいものを含む。)を用いた意匠は本号に該当することが多い。著名でない商標を用いた意匠は登録される。
 ・自己の著名商標を付している場合は該当しない。


第三号

 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠

 ・何人にも実施が確保されるべきであり、独占権を与えるの妥当でないためである。また、特許法又は実用新案法で保護されるべきであるので、意匠法上での保護を予定しておらず、経済活動を不当に制限するためである。また、諸外国の制度との調和を図るためである。さらに、部分意匠の導入により、このような意匠が登録される弊害が大きくなったためである(青本)。
 ・不可欠な形状のみからなる意匠とは、
 @物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状(例えば、衛星放送受信用アンテナの反射鏡)、
 A物品の互換性確保等のために標準化された規格(JIS規格、ISO規格、公的ではないが事実上の業界標準である規格)により定まる形状、をいう。
 ・ただし、形状に基づく機能の発揮が主たる使用の目的となっている物品に限ることとする。よって、例えば、事務用紙(紙の原紙寸法)、日用紙(封筒)、記録媒体(CD)は、公的な標準規格あるいは事実上の標準規格により定まる形状を有していても、本号の規定は適用しない。
 ・物品の技術的機能は専ら形状によって体現されることから、意匠の構成要素である模様、色彩の有無を問わず、形状にのみ着目して判断される。なお、商4条1項18号の場合は、形状+模様であれば登録され得る。
 ・部分意匠に対する本号の規定の適用については、「意匠登録を受けようとする部分」の形状のみを判断の対象とする。
 ・プリンターのカートリッジについて、その機能を確保できる代替的形状が存在しない場合は本号に当るが、特定のプリンターにのみ使用され、一般的な形状と異なる形状であれば登録を受け得る。また、部分意匠についても同様に代替形状について考慮される。


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