北朝鮮映画事件(平成21(受)602)の概説

事件の概要

 本事件は、未承認国の著作物を保護されるか否かが争われた事件です。

 本事件においては、北朝鮮で製作された映画は北朝鮮の国民の著作物であり、ベルヌ条約により我が国が保護の義務を負う著作物に当たるとして、テレビニュース番組において本映画の一部を無許諾で放送したことによる公衆送信権の侵害に対する損害賠償が請求された事件である。※詳細は判例検索システムで判決文を検索して下さい。


[前提] ベルヌ条約

 ベルヌ条約は、同盟国の国民を著作者とする著作物を保護する一方(3条(1)(a))、非同盟国の国民を著作者とする著作物については、同盟国において最初に発行されるか、非同盟国と同盟国において同時に発行された場合に保護される(同(b))。


本事件の要点

 最高裁は、多数国間条約(ベルヌ条約)に未承認国が事後に加入した場合、未承認国の加入により未承認国との間に当該条約上の権利義務関係が直ちに生ずると解することはできず、我が国は、当該未承認国との間における当該条約に基づく権利義務関係を発生させるか否かを選択することができる、と判断しました。

 そして、我が国は、北朝鮮の国民の著作物について、同条約の同盟国の国民の著作物として保護する義務を同条約により負うものではないとの見解を示しているというのであるから、我が国は、未承認国である北朝鮮の加入にかかわらず、同国との間における同条約に基づく権利義務関係は発生しないという立場を採っている、という判断を示しました。

 そして、同条約3条(1)(a)に基づき北朝鮮の国民の著作物を保護する義務を負うものではなく、本件各映画は、著作権法6条3号所定の著作物には当たらない、とされました。。その上で、著作物に該当しない著作物の利用行為は、著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り、不法行為を構成するものではない、とされました。

私見

 本判決が試験に出る可能性は少ないと思われます。よって、未承認国がベルヌ条約に加盟したとしても、日本と未承認国との間にベルヌ条約上の権利義務関係が生ずるわけではない、という結論だけ知っておけばよいと思います。

オリジナルレジュメ

 参考書・基本書  試験対策・勉強法  改正・判例解説  短答試験  過去問  論文試験  選択科目  選択科目の免除  口述試験  転職  リンク  メールはこちら




 「独学の弁理士講座」TOPへ戻る inserted by FC2 system